現実逃避といえば掃除
鉄板ですよね。
◎ある日の私
とある「めんどくさーい案件」を抱えていた私は、解決策を導き出すことにもがき苦しむことを放棄。
煮詰まっていてはまともな思考などできはしないという結論を導き出したわけです。
いつものように!
問題に向き合ってからそういう結論が出るまでにかかった時間、わずか1分。
何という無駄のなさ。
我ながら惚れ惚れするような決断力です。
さて。
ロッカーには何も入ってないし、デスクの引き出しはこの間も整理したばかりで手をいれる余地はない。
デスクの上はチリ一つない状態だし……。
さて困った。
逃避手段がない!
こうなったら倉庫にこもって不用品とそうでないものの選別作業でも……ととんでもないことに手を染めようとまで考えていた時、唐突に思い出したのがキャビネット。
数年前に異動した際に持ってきた荷物のうち、捨てるには偲びないがすぐに必要ではないものを突っ込んでおいたキャビネットがそのままの状態になっているはず。
異動先は会社全体の管理部署なので、何しろ保管する書類が膨大なんです。
なので壁一面がキャビネットで埋まってます。
ペーパーレスなどどこの異世界の話だろうって感じですよ。
◎キャビネット
私はそのキャビネットのうち、2つの中身を強制退去させて占拠。一方的に治外法権を主張して自治権を主張、現在に至る、という感じだった記憶があります。
すっかり忘れていましたが、今こそそこへ持ち込んだガラクタ……もとい重要資料群を吟味する時ではなかろうか、と思いついたわけです。
3年ぶりくらいかな、思い出したの。
で。
問題は封印を解除する呪文が使える魔道士が現存しているかどうか。
(意訳:キャビネットの鍵の所在がわからない)
デスクの引き出しの中にないのは間違いありません。いったい何回引き出しの整理をしてるかわからないほどですから、どこに何があるかなんて完璧に把握してます。
なにしろシャープペンシルの替え芯があと何本かまで自信を持って答えられますからね。
◎ピッキングに手を染める
さて困った。
現実逃避のアイディアとしてはこの上なく素晴らしいものでしたが、実行性に難あり。
でも転んでもただでは起きない子と両親や親戚筋から呆れられて育った私です。諦めて仕事に戻るなどという怠惰な選択はあり得ません。
そう、ここは発想の転換です。
キャビネットの中身で遊べない……もとい整理ができないのであれば、そのキャビネットをいかにして開けるかを考えること自体を目的にすればいいのでは?
何という天才ぶり!
ということで早速ピッキングの方法をネットで検索しつつ必要なツールを物色する私。
いやあ……。
3分ピッキングとかいう本があったり、ピッキングツールって検索するだけでおびただしい数のそれらしきものが出てくるわ出てくるわ。
しかもAmazonだけで完結しそうな勢いです。
私がいうのも何ですが、これっていいのかしら。
だがしかし。
毒を食らわば皿まで。
いや、背に腹は代えられない、ですな。
それにピッキングスキルをマスターすれば、いつかなにかの折に役に立つんじゃね? なんて自分の行動を正当化する事にいたしました。
「やるしかないんだ」
◎ルーナー(魔法使い)登場
「どうしたんですか? なんか物騒ですね」
インモラルなスキルの習得をそれでもためらう私がうーんうーん、と唸っていると、ふいに背後で同僚の声がしました。
「開かない鍵でもあるんですか?」
私の肩越しにディスプレイを覗き込みながらそういう同僚に「私の背後に立つなと何度言ったらわかるんだ?」などというお約束の返しをする私。
あるあるですね。
かくかくしかじかと事の次第を伝えると、その同僚、「なんだ、それなら」と言って、驚くべき解決策を提示してきました。
続く。
◎いや、続きません
同僚が唱えた我が聖櫃(キャビネット)の封印(鍵)を解くルーン(呪文)とは?
「管理部長が会社全体の予備キーの管理担当ですから、キャビネットの鍵も保管してるんじゃないですか? だから事情を話して予備キーを借りたらいいんじゃないですかね」
……おいおい、同僚よ、よりによって平文のルーンかよ。
グラムコール(詠唱文法)を使えないとは、こいつ、素人にも程がある。
しかも前文なし。あまつさえ認証文すらもなく、契約文のみとは。
これではルーンの体をなしていないではないか。
しかし私の懸念をあざ笑うように、その稚拙なルーンはたちまち発動したのです。
「その手があったか!」
思わず膝を打つ(アホな)私。
いや、驚いた。
やるな、同僚。
素人と見せかけて、つまり「あれは平文を装った「エイリアス(詠唱短縮用法)」であったのか。
私の人を見るスキルもまだまだ伸びしろがありそうではないですか。
まあ、ここは素直に心から反省するしかありません。
管理部長なら私が顔を上げれば視線の向こうにその胡麻塩頭が見え隠れしているわけで、つまり話は早いというわけです。
そんなわけで善は急げ。
本来ならいろんな書類作業が必要なのでしょうが、面倒くさいので管理部長を脅して予備のキーを奪った私は勇躍壁面キャビネットの群れに対峙したのであります。
◎ついにキャビネットと対峙。しかし……
私は管理部長から分捕った鍵をキャビネットの鍵穴に差し込み、軽やかに回して解錠。
逸る気持ちを抑えつつ、取っ手に手をかけて早速引き出そうとしたのですが……。
「あれ?」
開かない!
チッ。
管理部長め、相変わらず使えねーなー。間違った鍵を渡しやがって。
これはもうハリセンものだな。
などと呪詛を唱えつつ戻ろうとしたわけですが……。
(いや、ちょっと待て)
心の中で直感という名のスキルが私に呼びかけました。
(思い出せ。今、その鍵は回ったのではないのか?)
確かに!
(つまり、鍵自体は間違ってはいないということだろう?)
確かに!
つまり……なんだ……これは……ようするに。
沈着冷静かつ聡明な私は、ここですべてを理解しました。
自慢じゃなありませんが、もはやさすがというしかないでしょう。
天才か。\(^o^)/
深呼吸を一つすると、私はおもむろにキーを差し込み再び回しました。
コトン、という手応えを感じた私はそのまま取っ手をぐいっと引いたのです。
やはり。
思ったとおりです。
そう、私の推理どおり、キャビネットはすんなり開いたのです。
めでたしめでたし。
というお話でした。
◎いや、そうじゃなくて
あぶないあぶない。
この記事にの当初のテーマをすっかり忘れていました。
なので話を続けましょう。
私はキャビネットの中から、まずはそのキャビネットの鍵を見つけることに成功しました。
鍵がかかっていなかったキャビネットの中から、そのキャビネットの鍵を見つけたのです。
「まだ何か入れるかもしれないから、鍵をかけるのはその時でいいだろう」
そう思ってから、もう3年も経っていたんですね。
時の流れというのは早いものです。
そう言うわけでミッションを軽くクリアした私は、いそいそと当初の目的である「キャビネットの整理」に取り掛かったのでした。
めでたしめでたし。
ではなく。
キャビネットの中のガラクタに目を輝かせる私。
まあ、ガラクタと言ってもガラクタではないわけですけどね。
トラックボールの巨大な玉とか、「何かに使えるのでは?」と思ってとっておいた自分を褒めてあげたいところです。
何に使えるのかは未だに謎ですが、それはまだ科学がそこまで発達していないということなのでしょう。今後に期待して元に戻すことにしました。
色んな人から頂いたネックストラップの束。
商品名とかイベント名とかメーカー名とかが印刷されたテープの先にフックがあって色々とぶら下げられる、あのネックストラップです。
「なにかに使えるのでは?」などと考えて捨てきれなかったものですが、これはこの先科学が発達してもたいした使い途もなさそうだと判断し、ゴミ箱に放り込みました。
とまあ、そんな感じでキャビネットの整理をしていたところ、あるものを見つけた私の手が止まりました。
「こ、これは」
それこそが自動車型卓上消しゴムのかす、いわゆる「消しカス」の収集機、ミドリ クリーナーミニ でございました。
「うわ、懐かしいな。まだあったんだ」
きちんと元のパッケージにしまってありました。
このあたり几帳面な持ち主の性癖……正確がしのばれますね。
面白そうだと思って買った直後は何度か使ったものの、実のところ「鉛筆」とか「シャープペンシル」を使う事務作業などほとんど無い私。
書類系はほぼボールペンですからね。
消しカスなど出ないんですよ。
つまりクリーナーミニは無用の長物。
購入した翌週には元のパッケージに戻って引き出しの奥に追いやられていたのでした。
だがしかし。
そのクリーナーミニを見つけた私は直感しました。。
「これは使える」と。
ええ、もちろん今でも消しカスが出るような作業はいてしません。
私が考えたのは、デスクまわりとは別のステージです。
◎食卓のパンくず取りに最適
そういうわけで、消しカス収集マシンとして生まれたミドリのクリーナーミニですが、実はテーブルの上のパンくず集めに大活躍しています、というわずか二行程度で済むお話を長く長く引き伸ばしてみました、という記事でした。
お疲れ様です。
でも本当に便利なんですよ、テーブルのパンくず集めに。騙されたと思って試してくださいな。
みなさんもコイツを机の奥とかに追いやってませんか?
けっこうすぐれものなので、パンを食べる時には思い出してあげてはいかがでしょうか?
新型も出ているようです。