なんというか、「ついで」ですから。
テーブルの化粧直しのために家具の手入れ用オイルを買ったので、なんというか「ついで」に他の家具の手入れもやってしまいました。
まあ、一人殺すも二人殺すも一緒……じゃなくてこういう作業って「えいや」でいっぺんにやっちゃうほうがいいですからね。むしろいっぺんにやらないと何年もやらなさそうです。
もっとも、この手のオイルでのお手入れって、なんでも日本の場合は「梅雨前」と「冬前」の二回するのがいいのだそうな。
「梅雨前」はもちろん気候がいいのもありますが、湿気が多くなる前に保護しておく目的。
「冬前」は当然ながら乾燥する季節の前に潤いを与えておきましょうという目的です。
まあ、ほとんど何もやっていなかった私ですから、オイルを缶で買ったからっていきなり年二回も家具の手入れをするのか? というとビミョー。床とか壁の養生とか面倒だしね。
でもまあ、今回は新居効果? で気分が乗っているドサクサにまぎれてやってしまおうということに相成りました。
結局小物大物取り混ぜていくつもオイル塗りを行ったのですが、実は一番の大物はこのバンクチェストでございました。
引っ越す前から我が家のリビングででっかい顔をしているこのチェスト、写真でおわかりの通り非常にくたびれたシロモノです。
19世紀末期の、百数十年ものです。要するにいわゆるアンティーク家具ですね。
イギリスの某銀行で顧客台帳なんかを収めるために実際に使われていたもので、いわゆるバンクチェストと呼ばれています。
出会いは信州は松本。今ではかなり巨大な規模になってしまいましたが、当時は少し外れた場所に倉庫をいくつか借りて工場と一体になった、マニア向け(基本的には当時は企業やイベント向け)英国アンティーク家具屋でした。
実はその家具屋の社長というのが私の後輩でして、若いのに手広く商売をやって儲けていらっしゃいます。羨ましい、いや妬ましい。(^_^;
私がELISEで店に行くと、「おお! ELISE、初めて見た」なんて仕事放り出して飛び出してくるほどの車好きで、当時はユーノス・ロードスターでレースにも参加してましたっけ。
私のELISEは日本でも数台目というアーリーデリバリーものだったのでそりゃあ「初めて」でしょうね。
クルマ談義で盛り上がって家具の話とかそっちのけで松本の近くを一緒にドライブなどして楽しい時間を過ごしましたっけ。
そういう関係もあり、また当時はしょっちゅう信州にでかけていた事もあって、必要な家具があるとそのアンティーク家具屋さんで調達をしていたのです。
このバンクチェストもその店で同居人が「こ、これは!」と一目惚れしたものなんですよね。
完品ではなくていろいろ修理の手が入っているし、パイン材の古い家具なので収縮も大きめですから結構隙間も空いてたりしているのですが、基本骨格がしっかりしていてもちろん我々が老衰で死ぬまでくらいであれば余裕のよっちゃんで「保ちます」ので、べらぼうなプライスタグには目をつぶり、いわゆるひとつの「清水の舞台から飛び降りたつもりで」買っちゃったモノ。
そのお店は単にイギリスで二束三文のボロ家具をコンテナに山積みして日本に輸入して、そのままべらぼうなプライスタグを付けてアホな客にただ売りつける、という販売方法ではなく、船揚げした後、客に見せ、客の好みを聞きながら「修復」した後に納品するという、気のなが~い販売スタイルを取っていました(当時。大店舗を構えた今は修復したものを展示して販売していると思われます)。
なのでこのバンクチェストも購入後、数ヶ月経ってようやく我が家に配送されたのでした。
ちなみに配送も店が直接やります。配送業者に丸投げなどせず、設置まで全部込み。あと希望があればお手入れ用のステインとか蜜蝋とかも一式付けてくれて、お手入れ方法もレクチャーの上、メモもつけてくれます。当時は、ですよ。あとアンティークの一品物で、かつ仕上げもオーダーみたいなものですから、個体ごとに違う手入れ方法や注意点も手書きでございました。
当時は、ですよ。(^_^;
今はもう、巨大英国アンティーク家具店になってしまっているので、もう少し合理化されていると思われます。
何しろ川沿いのあの巨大店舗になってからは購入していないんですよね。
必要な家具がそもそももうないってのもありますけど、アンティーク家具自体が高騰していて、「これはちょっといいなあ」なんて思う家具だと、もはや私達のような庶民には手が出ない価格になってしまっていますので。
せいぜい「今回のボーナスを全部つぎ込んだらなんとかなる」というレベルじゃないとね……。
そういうわけで、各引き出しの隙間も均一じゃないし、ボロっぽいチェストなんですけど、さすがに平行垂直的な狂いなどはきちんと修復されていますし、引き出しの出し入れも全部スムーズです。
材はパイン。テーブルと同じ針葉樹なので同じオイルでOKかな、と。
もともとはオイルステイン蜜蝋仕上げ、みたいな状態でしたが長年放置プレイで蜜蝋ワックスもなし。もともとステインもほとんど色のない木の地肌保護程度のものだったこともあって、こちらは表面をきれいに清掃、乾拭きをしたあとで、テーブルと同じオイルを塗ることにしました。専用ステインや蜜蝋もあったのですが、「オイルのほうが簡単だし」といういい加減な理由でのチョイスです。
まあ、どうにかなっちゃうなんてことはないでしょう、たぶん。
もともとの蜜蝋ワックスがもう役目を終えてからはしばらくカスっとした雰囲気だったのですが、オイルを塗ってあげると、文字通りしっとりとした雰囲気になってこちらもちょっといい感じです。
まあ、例によって塗ったその日は「傷んだ天ぷら油」臭が漂うわけですが。