趣味と暮らしにまつわる「モノ」に一喜一憂するブログ

★GRANBEAT×高音質イヤホン 実地編

オーディオ系

今回はGRANBEATのアンバランス接続とバランス接続は、果たして音がかわるのか?(初出:2017/04)

というか、そんなに騒ぐほどバランス接続っていいのかよ? 的な流れを書いていこうと思います。
もちろん? 長文です。

さて、雨の中で桜の満開は過ぎ、学校も新学期を迎え、なんとなく日常が始まる季節となりました。
長く引きずっている新しいイヤホンの選定作業? も大詰めを迎えております。
決して2500円のイヤホンが決定版になったわけではないので。
いえ、2500円のイヤホン、悪くないんですよ。いい音だと思います。
でも「実際に日常使用するには及第点をあげられない」んです。
理由は「音漏れと遮音性と装着感」という「実地」に欠かせない重要な要素が不足しているからです。
2500円のイヤホンって、基本的に私の耳(の穴)にジャストフィットしているわけではなく、言うなれば「先っぽがなんとか引っかかっている」という状況です。ONKYOのE900MBよりはナンボかマシ、という感じです。
という事で、実際にGRANBEATに取り付けて通勤に使ってみたところ……。
あ、ここで言い訳を。
GRANBEATの為のイヤホン選定作業なんですが、実は音の聴き比べなどはNT-503で行っていました。
音源もプレイヤーもPCのモノです。
理由は単純で「外部の騒音がない状態でイヤホン本来の音の違いを聞き分けたいから」です。
実際に通勤での使用となると劣悪な環境下での聴き比べになります。そこではイヤホン本来の音よりもむしろ遮音性の差の方が音質には影響が大きくなるんです。おわかりかと思いますが……。
で、家の中で聴き比べて、かつ同居人に音漏れなどをチェックしてもらって居たわけですが……。
そう言う意味ではONKYOのE900MBも、PanasonicのRP-HDE10-Sも使い物になりません。外部からの侵入音が大きくて、ちゃんと音楽が聴けるほどボリュームを上げると、今度は音漏れがしてしまうんです。
一番マシなのが2500円の怪しいイヤホンだったのですが、音漏れと音楽を楽しめるボリュームとのバランスが微妙。
具体的には出勤時はOK。でも帰宅時には×という感じです。
その日の耳の疲労具合にもよりますが、帰宅時は同じボリュームでは音が小さくてダメなんです。ボリュームを上げる事になってしまいます。するとギリで音漏れがするかしないかの状態に。
音が洩れているんじゃないかと思うと音楽を楽しむという気分になりませんし、音を小さくして聞こえにくくするくらいならハナからイヤホンなんて付けない方がよほどいいですからね。

そんなわけで実はイヤホン探しは振り出しに戻ってしまったというオチでございました。
でも、ムダな行動では無かったと思っています。
アホな私ですが、今回で「私にとってのイヤホン選びの重要項目」がプライオリティつきでわかったので。
いや、10年ほど前に一度わかっていた事を思い出したという方が正しいですね。
ええ、忘れてたんです。アホですから。
まとめるとこうです。
1)耳にフィットするか
2)その上で、遮音性と音漏れは(実用的な音を出した時に)大丈夫か
3)音質に対するプライオリティは3番目
ということに。
そして改めてずっと使っているWestone 4RをGRANBEATに挿して使って見ると……。
「今回試したイヤホンの中に、こと通勤で使う場面に限れば、全てW4Rの足元にすら及ばない」
という結論に達しました。
イヤホンを買う場合、大事なのは何と言っても「用途」ということですね。
自宅で家族の邪魔をしないように自室でどっぷり音楽に浸りたいのか、騒音だらけの路線バスや満員電車の中で音楽を楽しみたいのかで、チョイスするイヤホンは変わってくるように思います。
自宅だと多少音が洩れようが外の音が聞こえようがナンの問題も無いでしょう。
いわゆるSHURE掛けといわれる上方フック方式にこだわる必要も無いでしょう。
家で聴く専用なら、私の場合は頭に載せて耳を塞ぐいわゆるヘッドフォンタイプを選びます。
でも髪の毛が凹むからとか、圧迫感がどうのとか重いとかであのタイプを嫌う人もおおいのは確か。手軽なイヤホン型で選びたいという人もいるでしょう。
むしろイヤホンタイプでもイヤーチップがフォームタイプのようなのが嫌いで、半開放気分のシリコンの方がいいと言う人が居てもおかしくないでしょうね。
でも、公共交通機関を使っての通勤で使う場合はなかなか条件がシビアになるんだと思います。
ある程度以上の社会性を備えたいい大人は「音質第一」だけではなかなか選べないのが実情かと。

その上で「あなたの耳と私の耳は違う」という耳の形の問題、さらに「あなたが聴いている音は私が聴いている音と全く同じであるとは限らない」という聴力差、加えて好みの音、音楽のジャンル、音楽ソースのクオリティ等々、「いい音」を構成する要素が人に依って違いすぎる気がしますね。

という事をツラツラと考えながら、私はとっても吹っ切れた気分でヨドバシドットコムのサイトを開き、SHUREのSE215を検索しました。
そう、吹っ切れたんですよ。
「自分の耳に合うのがわかっていて、かつ音にも一定以上の信頼が於けるイヤホン」を選ぼう、と。
そしてそれは10万円ではなくて1万円クラスで充分だと。
なので、SE215に決め打ちでした。
イヤホン沼に入るきっかけになったSHUREのE2c。その後継機にしようと決めていたからです。
それがSE215。
後継機の所以は、SE215がSHUREのダイナミック型ドライバー採用モデルのイヤホンでは最高峰だからです。
今回、色々と聞いてきて、ダイナミック型イヤホンも悪くないなと思うようになりました。BA型だと私にはW4Rがあります。
ダイナミック型だと1万円クラスでもハイエンドもしくはハイエンドに近いイヤホンが多い事も当然理由になります。SHUREだとSE215がちょうど1万円クラス。
SHUREはE5cを長く使っていて、私の耳でもきちんとフィットするし、何より遮音性が高いのはよくわかってます。
問題は……
SE215には「素」のSE215とSpecial Edition(以下SE)なる2モデルが存在することでした。
けっこう悩んだんですよね、どっちにしようかって。
両方買っていい方を残すという選択肢もあったんですが、これ以上売り払うイヤホンを増やしたくなかったので一つに絞る事にしました。
素のSE215とSE215/SEの違いはSEの方が低音がチョッピリ増強されている程度(あと、専用色)。
BA型とダイナミック型の違いでわかりやすい差がこの低音部分で、今回私がダイナミック型ってそれはそれでいいよねえ、と思ったのも、ダイナミック型イヤホンが鳴らすベースギターの力強いフレーズに感銘を受けたからです。バスドラの音じゃありません。
ならば低音よりでいこうじゃない。ってことでSEをチョイス。
50時間程エージングをして聞き始めたわけですが……。
「ああ、こんな感じだったっけ、E2c」という懐かしい気分に。
たぶん聴き比べたら全然違う音のような気もするけど、「いつか聞いた音」感が漂うのは思い込みなのでしょうね。
はっきり言ってしまうと、音としては、PanasonicやONKYOの最新型には及びません。敢えて言えばSE215はベールがかかったように聞こえます。この辺りはさらにエージングが進むと高音が伸びてある程度改善されるのは経験として知っていますが、それでも差は歴然とある感じです。
加えて解像感も1ランク落ちる感じです。ベースの量感も同じ価格帯のPanasonicには及びません。
だがしかし。
NT-503に繋いで家の中で聴けば確かにその通りなんですが、GRANBEATに繋いで通勤の路線バスで聴くと逆転します。
だって、抜群の遮音性と何の問題も無くフィットする形状により、ウチとソトで音の劣化があまりないんですから。E900MBがBAとダイナミック型のドライバーを使ったハイブリッド方式で、いくらいい高音と中音と低音を鳴らそうが、侵入する騒音で殺されて私の耳には届きません。
GRANBEATに繋いでソトに持ち出した時点で、1万円のSE215/SEは3万円のE900MBを大きく上回る音を鳴らし出すんです。

というわけで、なんだかんだではじまった新しいイヤホンはSHUREのSE215という、なんというか鉄板中の鉄板イヤホンに落ち着いてしまいました。
ハイレゾでもなく。
最新でもなく。
高級感皆無で。
イイモノ感とは無縁で。
オマケにガキっぽいオモチャのような色で。
今のレベルでは決して「すげえ!高音質!」とまでは感動できないにもかかわらず。

というか「だったら今まで使っていたW4Rでいいじゃん!」 という内なる声が聞こえるわけですが、まったくもってその通り。
だってSE215/SEと比較すると、同じく遮音性抜群で音漏れ無しのW4Rですから、単純にどこで使おうと音質の差は縮まりません。5万円クラスのBAドライバー4基のW4Rに1万円クラスのダイナミック型ドライバー1基が敵うはずがないんです。
この両者を比較すると、そこには「音は好みだから」というようなレベルでは語れない差が存在するわけで。
それでもW4RからSE215/SEに「世代交代」した理由があるわけです。
それはリケーブルの問題です。いや、GRANBEATというDAPの存在と言い換えてもいいでしょう。
そうです。
今回は「ハイレゾ」もどうですが、そもそも「GRANBEAT」用イヤホンを選ぶという目的があるわけで。
さらに言い換えると、それは「バランス接続」です。
つまり「GRANBEATの売りはバランス接続なのに、アンバランス接続で聴くのはなんとなくソンした気分になるじゃなーい?」という好奇心というか。
もちろんW4Rもリケーブル対応イヤホンです。
ただし、独自? の2ピン方式。対するSE215/SEはMMCXという、シェアが大きな汎用接続方式を採用しているんです。
これはそのまま「バランス接続用リケーブル」の選択肢の差に直結します。
ハッキリいっちゃうと「W4Rをバランス化するのはお大尽」に対し「MMCX対応だとよりどりみどり」という経済的な問題が大きいんです。
今回、W4Rの2ピン対応リケーブルを入手して試しました……が、W4Rには微妙に対応していなかったというオチがありまして「もういいや」と。
「新しい革袋(GRANBEAT)には新しい酒(バランス接続)を入れるべし」「古い船(私の固定観念)を今動かせるのは 古い水夫(アンバランス接続)じゃないだろう」ということで、MMCX対応の新しいイヤホンをGRANBEAT用に用意する事になったわけです。
以前書いたように、私が出したバランス接続ケーブルに対する条件は、
1)5000円以下
2)L型プラグ
でした。
実は2つほど購入しました。
ケーブルに依る音の差を楽しもうという思惑ですね。
でも、残念ながら2つのウチ1つは不良品で音を楽しむ以前の問題でした。
たまたま私が買った個体が不良品であっただけなので、敢えてそのメーカーをここで糾弾しようなどと考えておりませんので、ダメだったケーブルについては書きません。
ダメじゃなかったのが、写真のSS(Solid Sound)というブランドの2.5mm4極L型プラグ対応バランスケーブル。

じゃあ、さっそく付け替えてみましょう。
というか、ようやくここまで辿り着いたって感じですね。
そもそも「GRANBEATのバランス接続ってどうよ? 聴いてみたいよね」「せっかくだからハイレゾ対応イヤホンで、ハイレゾ音源をバランス接続で聴くって感じで」というノリ? ではじまったイヤホン選び。
結局ハイレゾとかあんまり(少なくとも私にはまだ)関係ないって事がわかったのと、値段より装着性が大事ってことを改めて認識して、用意したのはSE215/SEだったというオチです。

まあ、それはそれとしていよいよGRANBEATのバランス接続初体験です。
純正のSHUREのケーブルでアンバランスケーブルの音をしばらく堪能した後、SSのバランスケーブルに付け替えて、GRANBEATのプレイヤーを再生してみると……。


第一印象。
というか、第一声。
「お前は誰だ?」
お前というのはSE215/SEの事です。
そう。思わずそんなセリフを吐いてしまうほど、違う音でした。
どういう音かというと……

音の違い、音質について感想を書く前に一応。
「リケーブル対応のイヤホンは、ケーブルを換えると音が(かなり)変わる」
という大前提があるということをお断りしておく必要があるかと思います。
つまり今回、一般的な「3.5mmのステレオミニプラグというアンバランス接続」を「2.5mm4極のマニアックなバランス接続」にしたから音が変わった、わけではない「かもしれない」という事実です。
実は少し前に、ONKYOのE900MB附属の、あのタイガースカラーのケーブルを2500円のケーブルに換えるとどうなるんだろうと思って試して見たんですよ。
結果は……「なんじゃこりゃ?」的なひどい音になりました。
そりゃあもう、2500円の耳しか持たない私ですら一聴してわかる程の大きな差です。
じゃあ、2500円のイヤホンにE900MBのタイガースケーブルを装着すると素晴らしい音になるのかというと、実はこっちも劣化しました。
要するにケーブルの値段というよりもむしろイヤホンとの「相性」が問題なんじゃないかと考えてます。
まあ、この辺は追求し出すとものすごい沼にはまりそうなので堪えましたとも。
だって、1000円くらいから10万円超えまで、ケーブルはそりゃあ恐ろしい沼なんですから。

という事で「それはケーブルの差かもしれない」というオプション込みで私の感想をお読みいただけると幸いです。

まず、一聴して音場が広がりました。左右だけでなく、上下にも。
ヴォーカルの定位なんかはもともといいSE215ですが、バランスだとよりビシっとしています。
続いて、それぞれの音が引き締まってシャープに感じます。
SSのバランスケーブルを先に聴いて、モトの純正アンバランスケーブルに戻すと、SE214/SEの低音がブーミーだと感じるほどです。ベールも一枚どころか3枚ほど増える感じ。
解像度もあからさまに上がっていて、ちょっと霞がかかって聞こえてきた高音部分の見通しが綺麗にクリアになってます。
これはもはやSE215/SEの面影がないというか、要するにもうこれは違うイヤホンですな。
というか「もはや二度と純正のアンバランスケーブルを装着する気になれない」です。
はっきり言いましょう。
SE215/SE+バランス接続の音は、E900MBなどハナで笑えるほど「いい音」に聞こえるんです(個人の感想です)。
その「いい音」という言葉が重要です。解像感とか周波数特性とかその辺をチクチクほじくるとE900MBの方がいいということになるかもしれませんが、耳に入ってくる音が気持ちいいのは断然SE215/SEの方。
SE215/SEにたった5000円投資するだけでアッパークラス、それも2クラス以上も上の音が楽しめるなんて、はっきり言って思っても見ませんでした。
というか、誰かがそんな事を言っても、以前の私だったら「バカじゃないの?」と思っていた事でしょう。
そんな事を書いているブログとかを読んでも「はいはい、思い込み思い込み」と鼻をほじくりながらバックボタンを押していたことでしょう。
とまあ、そこまで違う、と。
こうなるとマジでGRANBEATを楽しむには、バランス接続が必須なんて事を書きたくなってしまいますね。
3.5mmのステレオミニジャックとかに挿しているGRANBEATユーザーを見ると「わかってないなあ、コイツ」なんて思う「ヤな感じのヤツ」になってしまいました。(・∀・)

因みにGRANBEATにはイヤホンが附属しません。それはつまりそういう事なんです。「好みのイヤホンでお聞き下さい(わかってるでしょうけど、バランス接続でね)」なんて感じで試されているというか。
GRANBEAT、確かにいい音のDAPだと思っていました。とはいえ、「webの記事なんかで書かれているほど騒がれるような音でもないんじゃね?」とも。
でも、バランス接続で聴いた音は「ああ、これは確かにiPodとはレベルが違うDAPだな」ということを実感した次第。

次回はそのGRANBEAT(というかONKYOのX1シリーズ)の特徴である「二種類のバランス接続」の音の違いについて。