HCRそのものについて~(初出:2016/10/03)
というわけでまずはHCRについて。
ご存じの方はスルーで。ここでは「全く知らない」もしくは「聞いた事がある」程度の方々に向けた説明になりますので。同じホノルルで行われるスポーツイベントの中でも、ホノルルマラソンは超有名です。
どれくらい有名かというとマラソンに全く興味がない私ですらずっと昔からその存在(というか名称)を知っているくらい有名ですよね。翻ってHCRはどうか?
これはもう、全くもって無名です。
どれくらい無名かというと、生まれてから2015年の7月(私がロードレーサーを購入した月)までその名称を全く知らなかったくらい無名なんですよね。
似たような名称で、ホノルルトライアスロンというイベントもありますが、そっちはHCRよりさらに無名で、HCRより後でその存在を知った感じです。
とまあ、有名なんだけど、知る人ぞ知る有名さという感じの有名イベント、それがHCRです。
ではHCRとはなんぞや? ですが、簡潔に説明するならば「ファンライド大会」です。
「レース」でも「タイムトライアル」でも「ラリー」でもない、ただのサイクリングイベントです。
最大の特徴は「センチュリー(100マイル=160km)ライド」という、日常的には走らないような、長距離サイクリングイベントであるという点に尽きると言えるのではないでしょうか。
具体的には
1)毎年9月の最終日曜日に開催される
2)最長100マイル(160km)だが、それ以外にも75マイル、50マイル、25マイルといったコースがある。
3)基本的に全てのコースが折り返し方式である(一部違いますが、往路と復路が同じコース)
簡単に説明すると以上です。
さて、翻って今日の日本ですが、この手の「タイムを競わないファンライドイベント」は星の数ほど(は言い過ぎですが)あります。かく言う私もロードレーサーに乗り始めてからこっち、いくつかのライドイベントに参加しました。
で。
今日数多開催されているそれら日本のファンライド・イベントのルーツがHCRなんです。
HCRは私が参加した2016年でちょうど35年の節目にあたり、アニバーサリー大会と銘打たれておりました。
そうです。35年も前にはじまったバイク(自転車)によるファンライド・イベントこそが、今日の日本にたくさんの花を咲かせた張本人なのです。
イベントの運営方法、すなわちエントリーやらゼッケンやらエイドステーションの設定やら基本ルールなどをいい意味で「真似」、つまり「お手本」として始められた日本のライドイベントは、その後独自に進化・変化して、今や百花繚乱といった感じになってきています。
というわけで、次は日本のライドイベントとHCRとの違いについて私が感じた事を書きます。
私がいくつか参加した日本のライドイベントには日本独自の文化というか考え方により、お手本としたHCRとは決定的に違う部分が一つあります。
それは
「HCRは、その日、その時のコンディションでコースを自由にチョイスできる」
という点です。
これは基本的に折り返し方式で、全コース同じコースを走るからこそできる方式です。
でも日本のライドイベントではHCRのような「その時チョイス方式」のライドイベントは殆どありません(存在するのかもしれませんが、私は一つも知りません)。
いくつかの距離のコースが用意されているライドイベントだと、最初からどのコースかを決めて参加申し込みを行い、変更は基本的に難しいものが多いです。少なくとも当日になって別コースOKを公式に謳っているイベントは皆無でしょう(例外対応は別の話)。そもそも距離別に全く違うコースが用意されていたりします。
HCRは申込時にこそ一応コース選択の必要はありますが、そもそも当日変更OKと記載されていますので。あくまで目安です。
HCRに参加したいと思った一番の理由が私にとってはこの柔軟性の高さでした。
それまでいくつものライドイベントに参加して、いつも思っていた不満の一つが「一度決めたコースは変えられない」でしたから、私にとってはまさに「我が意を得たり」なシステムだったのです。
ではなぜ日本のイベントはコースを事前にがんじがらめに決めてしまうのか?
HCRを実際に走ってみてその理由がわかった気がします。
それは「日本のライドイベントはちょっとやり過ぎ」だからです。
具体的には「エイド・ステーション」の位置づけが全く違うから、です。
日本のライドイベントと言っても色々あるのですが、私が参加したのはそこそこ大きな大会ばかりです。
それらの大会に設置されているエイド・ステーションで参加者達に振る舞われるものは、地元の名産や特産、有名無名のお店の食べ物達。
つまりエイド・ステーションこそは「簡易版道の駅」みたいな位置づけになっているのです。
その土地を走るだけでなく、地元のモノを食べたり飲んだりして、その地域を理解してもらいたい、リピーターになって欲しい、ようするに「観光客として再訪し、カネを落としてくれるとうれしい」という一種のビジネスタイプとして確立しているのに対し、HCRのエイド・ステーションで参加者に振る舞われるのは基本的には「水」だけです。あとはオレンジやバナナの切り身と、プレッツェルなどと言ったシンプルなものです。
まあ、バナナはハワイだから特産かもしれませんが、もっと特産なパイナップルはありませんし、そもそも特産だからバナナを置いているのではなく、単純に補給食としてバナナやオレンジが手軽で優れているから置かれているのです。
プレッツェルなどの軽食?は、自分で補給食を用意し忘れた参加者救済のために用意されているような感じだと思えばいいでしょう。
豪華な? 日本のエイド・ステーションしか知らなかった私の目には率直に言ってHCRのそれは「ショボい」としか映りませんでした。空気を読んで言い方を変えると「質素」とでもいいましょうか。
リピーターの方の話を伺うと、それでもしばらくの間は(今と比べると)けっこう豪華な時期もあったそうですが、それは日本のJALがスポンサーであったからだそうです。
好き放題いろいろやっていたJALがそのしっぺ返しをうけて倒産しちゃってからは今のような感じに、つまり以前の状態に戻ったのだそうな。
以上二点が日本のライドイベントと本家のHCRとの大きな違いです。
具体的には
1)コースチョイスがフリーダム
2)エイドステーションでの食事が質素すぎ
です。
では次に実際にコースを走っての感想です。
ただし、私が感想したのは100マイルではなくて50マイルです。
つまり50マイルの折り返し地点より先のコースのことはいっさい不明です。
実際にはその先のコース自体は今までのハワイイ観光においてクルマで何度も通ったよく知っている道ではあるのですが、レンタカーを運転している視点とバイク(自転車)視点では見える物が全く違うので、50マイル折り返し地点より先については言及しません。
というわけで、50マイルコースを実走してのの感想です。
まずはプロフィールマップ的な感想を。
一言で言うと「坂と言えるほどの坂はない」です。
さすがに完全なフラットとは言いませんし、淀川水系の河川敷サイクリングロードと大して変わらない、とは言いませんが、HCRのコースで登り坂の事を心配する必要は無いと断言します。
勾配はありますが「え? これでおわり?」みたいなモノばかりです。坂というよりアンジュレーションです。
朝練で北摂の山あい(箕面~勝尾寺)をホームコースとしてよく走っていますが、あれを10とするとHCR50マイルコースの難易度はせいぜい3くらいです。
登り大嫌いで、貧脚ぶりには大いなる自信がある私がいうんですから間違いありません。
つまり、HCRって初心者、初級者ウェルカムなコースだという事でしょう。
私が懸案材料としてもっていたのは、実の所登り坂ではなくて、路面状態でした。
出発前に、googleで検索して、過去のHCRに参加された方のブログをいくつか拝読いたしましたが、そこではHCR(というか、ハワイイのオアフ島?)の路面状態の悪さについて言及されている記事が多かったのです。
要するに心配なのは「パンク」と車輪をとられて転倒する機会が多いのでは? というもの。
で、実際に走ってみた結果はというと……。
「はぁ?」
です。
路面状態とか、普通にいいです。
もちろん悪いところもあります。でも、それって日本の道路と一緒でしょ? と思います。
むしろムダな(ムダじゃないけど)マンホールや白線やグレーチングが圧倒的に少ないHCRのコースの方が走りやすいと断言しましょう。
というか、普段私達が走っているコースの方がよほど走りにくくてパンクしそうなひどい道路だと認識しました。
あの路面状態を「ひどい」という人って、普段「どんだけ~」いい路面を走っているのだろうと思っちゃいます。
なので敢えて言いましょう。
HCRコースの路面状態は普通ですよ、と(ただし50マイル折り返し地点まで)。
もちろん今回も私達に関しては「パンクなんて都市伝説」でございました。
・大した登り坂もないフラットなコース。
・路面状態もけっこういい
と、いい事ずくめのようなHCRコースですが、実は暗黒面も存在します。
それは「風」と「雨」です。
ハワイイにある程度滞在された方、ホノルルだけじゃなくてけっこう色々回った方はご存じかもしれませんが、オアフ島に限らずハワイイ諸島は基本的に「晴れていたって雨も降る」みたいな気候です。
ハワイイ州は別名レインボー・ステイト(虹の州)と呼ばれているのがその証拠でしょう。ナンバープレートにも虹が描かれているくらい、その気候が特徴的です。
要するに「晴れていたって雨にも降られる可能性が高い」です。
日本だと一日中晴れ、とかアタリマエですけど、ハワイイで一日中晴れとかはむしろ珍しいはず。
何が言いたいのかと言うと、HCRは雨中走行の可能性が極めて高いイベントなのだという事でしょうか。
幸か不幸か私達は今回、雨に降られることなくゴールする事ができましたが、それはかなりラッキーだったと思っています。
参加する場合は、雨の覚悟だけは必要でしょう。
とまあ雨を脅したのは、雨中走行になれていない初級者は多いと思いますので、敢えて言ってみたまで。
雨の時はブレーキが効きにくいとか、視界確保が必要だとか、雨で流れ出したり路肩から掘り起こされたり? した異物で都市伝説のはずのパンクが現実のものになる可能性が高いとか、そういう注意喚起でございます。
それよりも真の敵? は「風」です。
これもハワイイに旅行されたことがある人ならご存じの通り、ハワイは風の島と言っていいほど、素敵な風が吹いています。ほぼ一日中。
しかも午後にはたいがい強くなります。
そうです。風の影響が大きいんです。というか風の影響前提で考えないといけません。
特に海岸線など開けたところではその影響は計り知れません。
で、私達は幸いにも大して風の影響がないうち、つまり午前中にゴールしてホテルまで帰っちゃいましたあので、鼻歌交じりではございましたが、それでも時折吹く強い横風でけっこう振られましたし、GARMIN EDGE1000的に勾配0%と表示されていてもそこそこ踏まないと進まないような向かい風にも遭いました。もちろん、逆にたいして踏んでないのに余裕で25km/h巡航しちゃっているぜ、みたいな追い風の恩恵も受けるわけですがね(説明しよう。私にとって25km/hで巡航するというのは、けっこうハードルが高い行為なのである。普段は20km/h~22km/h巡航なのである。エッヘン(・∀・))。
さて最後に総合的な「走りやすさ」について。
HCRはハワイイでも重要なスポーツイベントの一つとして認知されているのはまちがいなく、その証拠にコースの一部では道路閉鎖をおこない、参加者が走りやすいようになっているんです。
日本の場合はごく短距離のタイムトライアルとかヒルクライムでは一般参加でもクローズドコースというのがありますが、センチュリーライドのようなロングライド・イベントでそこそこの距離の道路を閉鎖するなんて夢のまた夢といった感じ。
警察のアタマが硬いというか、主催者側が地域住民の協力を得る事についてあまり積極的でないというか、そんな感じしかしない大会が多いです。
もちろん、高速道路を閉鎖して行われる「サイクリングしまなみ」みたいな例外もあります(今月末のこれも走りに行きます)が、びわ湖一周センチュリーライドみたいな大規模イベントですら道路閉鎖がなく、スタート直後は信号待ちで大渋滞。オレ達何やってんの? ってなお寒い状況です。
それに比べたら本当にHCRは楽ちんです。
出発からしばらくは完全クローズドですし、ハイウェイはHCRの為に一車線が閉鎖されていました。
郊外の田舎道を除き、道路には自転車ゾーンというものが描かれています。
そもそもドライバー達のマインドが日本とは全く違います。
ある程度の広さがある道路では、追い越される際に危険を感じたことは一度もありませんでした。
自転車を追い越す際は速度を落とし、かなりの間隔をあけて追い抜いてくれます。
道が狭くて対向車がある場合は、安全な間隔が開けられないので絶対に追い抜くことはありません。自転車に威圧を与えない車間距離を保ったままで、対向車が通り過ぎるのをじっくり待ってくれます。
一見して日本で言ういわゆる「ヤンキー」なクルマのドライバーであっても例外ではありません。
私など「ここはパラダイスか?」と、感激のあまり涙で前が見えなくなって危うくコースアウトしそうになったくらいです。
とは言え、ごくたま~に近くをそれなりのスピードで追い越していくクルマがあると思ったら、それはことごとくマスタング・コンバーチブルのレンタカーで、乗っているのは日本人ドライバーだったりして、実にガッカリしましたっけ。
※注:ホノルルあたりでマスタングのコンバーチブルを運転しているのはほぼ100%日本人もしくは中国人観光客で、相対的にマナーが悪いです。
最後にHCRの運営について。
HCRは日本人参加率が非常に高いイベントです。
さすがに過半数とは言いませんが、30%以上は日本人と言われています。
なので、受付~開会式~完走証受け取りまで、全部日本語です(もちろん英語と両方という意味)。
開会イベントなんて日本語が主で英語が従、みたいな感じでした。
そういう意味でも日本人にはハードルが低いというか、実に参加しやすいイベントだと断言しておきましょう。
開会式といえば、国歌(これはさすがに「星条旗」のみ)斉唱の際、多くのアメリカ人達はきちんと直立して傾聴もしくは斉唱に加わっていた(中にはヘルメットも脱いでいた)のに対し、仲間内でガヤガヤキャアキャアはしゃいでいる日本人は同胞として恥ずかしくなりました。
以上。なんだかんだ言って長くなりました。
まあ、そういうわけでHCRについてまとめると
・長距離ライド・イベントの草分け的存在で、35年もの歴史を誇るClassic Eventである
・その時の体長……じゃなくて体調や気分で、走る距離を変更自由な気楽さが売り
・でもエイドステーションでの食事は期待しちゃダメ
・コースには坂と呼べるような坂はなくて、ほぼフラット
・路面は所々悪いところもあるけど、むしろ日本よりいいかもしれない
・ドライバーのマナー的には申し分なく、日本人ドライバーのレンタカーさえいなければ世界一安全かもしれない?
・国歌斉唱の際は敬意を払おうぜ
という感じです。
我が家はとても楽しかったので、来年も参加する事を決心しました。
同居人的には「今年は50マイルだったので、来年は75マイルをがんばる」という事でした。
コースがフラットなのに加え、100マイル走ってきた参加者と話してみると「75マイルの折り返し地点から先が一番楽」という情報を得て「100マイル、行けるかなあ」などとスケベ心をもたげておりますが、さてどうなることか。
そうそう。
ごく私的な意見を二つだけ付記しておきます。
・ゴールまであと少し、という地点に設けられていた、ノンオフィシャル(ボランティア)のエイドステーションで地元のおばあちゃんにいただいたドーナツがとってもありがたく、なんかものすごくおいしかった。「たくさんあるからいくらでもお食べ(英語)」と言ってくれたおばあちゃんの笑顔が忘れられません(ウソ。もう顔は忘れちゃった……ゴメン)。エイドステーションという案内看板などはあったけど、公式マップにはないし、とりあえずここまで来たらゴールに急ぎたいという気持もあってか、道ばたに設けられたちっぽけなテントはガラガラでした。でも、みんなもっと利用したらいいのになあ、と思いました。公式エイドよりはいい物が食べられちゃうぜ?
・50マイルコースは1.6×50=80kmだとおもっていたら、90km以上あった。
以上、HCRそのものについての感想でございました。
※トビラの写真はHCR日本公式サイトより