趣味と暮らしにまつわる「モノ」に一喜一憂するブログ

★【XF16mm F1.4R WR】とその他 購入に至る(めんどくさい)ストーリー

カメラ

 X-Pro2で使う二本目、三本目のレンズをどうするか?
今回の長い文章のお題はそこです。(初出:2016/03/11)

既にタイトルにレンズ名を書いてあるので、「以下長文」は読む必要はないのかもしれませんが、暇な人はどうぞ。最初に(ほとんどの方は)ご存じないでしょうから、僭越ながら私が富士フイルムのレンズ名の意味について解説などしておこうと思います。
ええ、気まぐれです。
あ。
多少解釈が間違ってるところがあるかもしれませんが大筋で合ってますので「まるっと」信じていただいてけっこうです。RANGE ROVER EVOQUEを「イヴォーグ」などと発音する人は地獄に落ちてしかるべきだと思いますが、こと富士フイルムのXマウント対応レンズ名の意味についての私の説をバイブルとしても、人生の挫折に繋がったりはしません。
その点については(珍しく)保証しましょう。(・∀・)

さて、では取りあえずタイトルのレンズ、XF16mm F1.4R WR から。

X Xマウント用レンズである、という意味です。わかりやすいですね。

F ファンタスティック。つまり「性能重視=素晴らしい」という意味です。まあ、なんというかメーカーの矜持というかプライドを表す記号ですね。紳士たるもの、ここで笑ってはいけませんぞ。

16mm 言わずと知れた実焦点距離です。「実」焦点距離。画角とは違います。XマウントはAPS-Cというセンササイズをフォーマットとしているシステムなので、実焦点距離が16mmだと、係数1.5で、いわゆる135判換算だと24mm(レンズ)相当の「画角」になります。ここでよくわかっていないボンクラブロガーや、よくそれで金もらってんなあっていうスチャラカライターが「24mm相当の焦点距離」なんて書き方をしていますが、間違いです。正確に書くならば「135版換算の焦点距離が24mmのレンズと同じ画角」です。焦点距離は物理的なものなので135判に換算しようが変わる事はありません。キリスト教が地動説が正しいと言おうが「地球は回っている」という事実が変わらないように、です。焦点距離が一定であっても、センササイズという「フォーマット」でフィルタリングすると135判とは「画角」が変化します。これも物理的な現象です。
なのでこのレンズは16mmという焦点距離のレンズで、それ以上でも以下でもありません。

F1.4 正確に既述すると理解していただくのが色々と面倒なので、「このレンズが開放の時の絞り値」の事だと理解して間違いではありません。
ちなみに、よくわかっていないボンクラブロガーや、よくそれで金もらってんなあっていうスチャラカライターが「このレンズは開放f1.4で」なんて書いている事がありますが、それは表記間違いです。大文字のFでないと意味が変わってしまいます。小文字を使う時の表記はf/1.4となります。つまりF1.4=f/1.4であって、F1.4≠f1.4と等号否定記号で結ばれねばならないわけです。
なおこのF値が小さいほど「明るいレンズ」と言われていますが、別にF2.8のレンズをF1.4のレンズに付け替えたからといって写真自体が明るくなるわけではありませんので。念のため。
なので欧米では「明るい」などと言う曖昧で誤解を招くようないい方はせず「速いレンズ」という言い回しをします。「速い」シャッター速度を稼げるからですが、そちらの方がまだ理解しやすいでしょう。
それからF1.4のレンズであれば、いつでも同じ明るさかというとそうではありません。これもまた言葉遊び的部分があるのですが、実際の明るさはT値などで表現します。普通の人は知りませんよね?
昔のレンズや一部特殊なレンズには、F値とは別にこのT値がレンズに刻まれています。本来の「露出」はT値を元に求めるのですが、そもそも一般的なカメラはオートで全部計算してくれていますので難しく考える必要はありません。
そうです。私のこの蘊蓄なんてほとんど意味はありません。F値の正しい表記を知っておく、というのが主旨でございました。

R RINGの事。レンズ側に絞り「輪(リング)」があり、アイリス(絞り)の操作がおこなえるレンズであるという意味。デジタル時代に入り、刷新されていくコンテポラリなレンズでは不要となったいわばレガシーと言っていいものですが、富士フイルムはユーザーに面倒を掛けることを社是としているので物理的なアイリス設定リングを儲けています。個人的にはここはLegacyのLにすべきだと確信しております。

WR Water Resistant の略。防塵防滴のことです。もちろんWRだけだと水のみ。つまり「塵(ダスト)」については表記されていないわけですが、メーカーは塵もOKと主張していますのでつまり防塵防滴です。ちなみによくわかっていないボンクラブロガーや、よくそれで金もらってんなあっていうスチャラカライターが「防水」なんて書いてる事がありますが、間違いです。防水と防滴は違います。「防水レンズ」なんて特殊レンズです。防滴です、防滴。なお防滴だけど防塵ではない、というメーカーもありますので防塵性を要求される方はきちんと調べた方がいいと思います。

以上です。
ややこしいというか、まあどうでもいい話ばかりで恐縮ですが、個人的には日常的に目に入ってくる「名前」に意味を求める属性がある……というか性格なので、こういうのは実は大好きです。その流れもあってスポーティモデルなどに安易に「R」とか付けたがる自動車業界のセンスには辟易しております。

そう言えばVOLVOにもRというラインがありますね。
よくわかっていないボンクラブロガーや、よくそれで金もらってんなあっていうスチャラカライターが「モデル名らしくVOLVOにしてはかなりレーシーな味付け」などと書いている事が多いのですが「間違い」です。VOLVOの「R」ラインは「リファインメント(Refinement)」のRです。通常モデルとはひと味違う「アナザーリコメンド」としての存在、という意味ですね。
まあ、実際問題、ノーマルモデルに比べたらどう見たって「レーシー」なので素直に「レースカー的なエッセンスを加えました」でいいと思うんですが、メーカーが正式に発表しているのですから勝手に「レースのR」なんて書く輩はちゃんと調べもせず思い込みで適当な事を書くボンクラでスチャラカな書き手だと言わざるを得ません。

さて「特に誰も得しない富士フイルムのFUJINON Xマウントレンズの名称(記号)の意味」についてお勉強をした後は、本題に戻ることにしましょう。

「たまたま防湿庫でみつけた」一本のレンズ(XF35mm F1.4R)から始まった「出戻りユーザー」の私ですが、先にボディを複数台買ってしまい、その一本以外を除くと装着しているのはマウントアダプタ経由のオールドレンズのみ。もちろん非純正でマニュアルフォーカスレンズという未だかつて無いパターンに陥っております。
普通はレンズが増えた~ボディも増やすか 的な流れだと思いますし私も今まではそうでした。
ではなぜこういう事態になったのかというとですね。
それは
「特に欲しいレンズがない」
からです。(・∀・)
いやあ、これに尽きますね。
XマウントのFUJINONレンズの現行のラインナップに「これは使ってみたい」と思えるレンズが皆無。
そんな状況でよくXマウントユーザーやってますよね、私。
実はX-Pro2には単焦点レンズで、多少暗くてもいいので小型軽量のレンズを付けて撮影したいと思っているんですよ。
なので同じ35mmでも手持ちのXF35mm 1.4Rより新しいXF35mm F2の方がいいなって思ってたんです。ステッピングモーターでAFも速いし、これはもう買い替え上等! だったんです。
でもカタログデータを見ると「最短撮影距離」が1.4より長い。

これはおかしい。
なぜだろう? って思いますよね?
新しい方が寄れない?
あからさまな廉価版?
でもX-Pro2のプロモーション的にはデフォルトレンズになってます。
まあ推奨?標準レンズとしてF2.0を推す理由はわかります。

・X-Pro2はAF速度が自慢ですから、旧式の1.4だとレンズ側が遅すぎてボディの実力が発揮できない。
・1.4は旧式モーターで、AF時はけっこううるさいのでイメージが悪い。
・デザインバランス的に1.4のサイズだと中途半端。
・OVFが売りのカメラなので、推奨? 標準レンズは短く細くないとファインダの「ケラれ」が大きくなる(ケラれを出来るだけ小さくしたかった)。

こんな感じですよね。
で。
意地の悪い私はさらに深読みをするわけです。
例えば設計陣は最初の性能コンセプトを決めるときにこういう話をしたのではないかと。

「OVFだとパララックスがある。パララックスは近接するほど大きくなる。だったら近場は撮れなくすればいいじゃん。よし、2.0は最短撮影距離長くしとけ。それでも本物のレンジファインダー用のレンズに比べれば神がかり的に寄れるんだから文句言うなって言っとけ。どうせウチのユーザーは広角でも寄らない奴らばかりだから大丈夫だ」

クソっ!ヽ(*`Д´)ノ

私のようにバッテリを気にしないうちはEVFしか使わないっていうX-Pro2ユーザーだって居るんですよ?
え? そんなユーザーはT1で1.4使っとけ?
いやいやいや。
一眼レフっぽい外面が嫌だからコンニャク・豆腐型ボディのX-Pro2やX-E2を敢えて選んでいるんですって。
それに最新で最強(あくまで富士フイルム比)の性能をいち早く使いたいって思うのが人情でしょ?
なのに小型軽量だと接写性能を劣化させてるとか、「ないわー」って思いませんか?
ラインナップにある、いわゆるパンケーキというか軽量型のレンズはみんなそう。最短撮影距離が納得出来ない。

そう言えばXF23mm F2.0という、35mmの1.4に対する2.0のようにXF23mm F1.4Rに対する小型軽量ステッピングモーター付きケラれません系のコンパクトレンズが出るそうですね。
実はこれには期待しています。
本来、X-Pro2の推奨標準レンズはその23mm F2になるはずだったんじゃないかと思います。
というか、X-Pro2の為に用意されたレンズでしょう。
でもボディ発売には間に合わなかった、と。
なので仕方なく先に出た(計画はたぶん同時。でも画角的に設計が簡単で早く出来た)35mm F2を使っているのではないでしょうかね。
だいたい単焦点の標準レンズが135判換算で50mm付近とか「昭和かよ」って思います。
フィルム時代の昔は50mm近辺が一眼レフカメラの標準レンズだったのですが、個人的に50mmが標準レンズとか、そもそも「おかしい」と思います。
カメラ業界も「おかしい」と思いながら、建前で商売をしていたわけです。
なぜって、ライカ版(135判)フォーマットのドイツの某リーディングメーカーが「標準レンズ」と定めた焦点距離ですからね。恐れ多くて「それはちょっとおかしい」なんて言えません。忖度ってやつです。そんな感じで各メーカーは思考停止して50mm(近辺)を作り続けてきたわけです。一眼レフの時代になってもフォーマット(フィルムサイズ)が一緒なので、当然標準レンズの考え方もキャリーオーバーです。

各社とも商売上、カタログスペックは大事ですから、この50mmの場合、標準のF1.4とお買い得版のF1.8を用意しておりました。お買い得版でもF1.8という大口径なのが太っ腹でした。余裕のあるメーカーはお金持ち用にF1.2とかも別途作ってましたね。まあ、開放はひどい収差で、我々庶民は「金持ちはアレがいいっていうんだぜ。開放バカだよな」と実は憧れつつも口では妬みを込めてバカにしていたものです。

135判の場合45mm近辺というのが物理的に明るいレンズが作りやすい(同じ明るさだと小型化しやすい焦点距離)画角ですし、カタログ上用意しなければならないし、当然数が売れる(出る)ので多少のコストはかかってもオッケーなわけですね。
で、当然横並びテストとかされちゃいますから、各社設計にも力が入る。
要するにいいレンズになってしまわざるを得ないんですよ、50mmっていうレンズは。
まあ、入り口であり、メインでもあるわけです。
グッピーみたいなもんですね、50mm F1.4。
知ってます?熱帯魚趣味の人が「グッピーに始まりグッピーに終わる」と言ってる、あのグッピーみたいなものなんですね。

えっと、何の話でしたっけ。
グッピー?
いやいやいや、卵胎生のメダカの話はどうでも良くて、何が言いたかったかというと
「標準レンズが50mmなんていうのは常識でもなんでもなくて、メーカーの都合ででっち上げられたもの」ということです。
大人な言い方をすると「タテマエ」ってやつですね。
それが証拠に、レンズ固定式のカメラには50mmなんて望遠レンズは付けてません。
35mmとか40mmくらい。
物理的にコンパクトにできて生産性が高いという理由もありますが、実際問題一つの焦点距離で色々撮ろうとすると50mmは長すぎる(画角が狭すぎる)ということをカメラメーカーだってわかっているというお話です。
昔と違い、今では情報が溢れていて、かつ「今までの常識を疑ってかかる」という風潮から、もはや「カメラの標準レンズって、画角が135判相当で50mmが妥当」なんて言っている人はあんまりいないと思います。言っている人がいたとしたら、それは昭和の時代に自分が押しつけられた価値観にしがみつかないとアイデンティティが保てない人だと思いますので、まともに議論したりせず、そっとしておいてあげるべきかと思います。
そう。
時代はかわり、標準レンズの画角はもっと広角であるべき、ということは常識になっているわけです。
ええ、時代が更に遷移すると今度は90mmくらいの望遠レンズが標準レンズだという事になるかもしれませんが、まあ今は今の話をしましょうよ。^^;

ということでX-Pro2の話に戻りましょう。
つまり、本当は50mm相当の画角ではなくて、より広角。
富士フイルムとしてはX100からはじめた135判換算35mmというのがソレなのではないかと思われます。
この辺はメーカーによって考え方が違うようで、リコーなんかは28mmだというのは有名ですね。
富士フイルムとかリコーとか、そんなマイナーなメーカーの事情なんて知らねーよ。もっとグローバルな切り口はないのかよ? と思われるかもしれません。
ありますとも。
今、世界で最も多く写真が撮られているレンズ(画角)は、28mm近辺のものです。
ウソだと思うなら調べて見ればいいと思います。
そう、現時点では135判換算で28mmというのが「標準レンズ」というコンセンサスなのです。

ま、正しいとか正しくないとかじゃなくて、あくまでもマジョリティという話です。28mmが35mmに取って代わるのは一瞬かもしれませんしね。
ただ50mmになる事はないと考えます。
あとは好みの問題でしょう。
世界的視点では28mmがスタンダードというのは単純に数の話なので、その画角が好みかどうかは各人が決めればいいことなんです。
私は28mmも35mmもどっちでもいいかな、という「好み」です。
というか、私が好きな画角は24mm相当なんですよ。

理由はその画角がフィルム時代から体に染みついているから。
表現性が好みとか、そういうもっともらしい話をしようと思うともちろんできますけど、それは他の画角でも同じ事でしょう。理由になっているようで理由になってない。結局それが好みだから、という話で終わってしまうんです。
なので、本当の理由はソレです。

私が最初に使い出した自分のカメラは、CanonのNew F-1とFD50mm F1.4SSCの組み合わせです。
ボディ一台とレンズ一本でした。
これがお金持ちだと、パパは交換レンズを複数、具体的には広角レンズ一本と、望遠レンズを一本あたり買ってくれるわけですが、ウチはそこまでの余裕がある家庭ではなかったので、レンズ一本が精一杯というところでした。その代わりボディはFTでもFTbでもTLbでもなくF-1にしてもらいました。
今から思えばボディはFTbにしてレンズを2本追加してもらった方が良かったんじゃないかと思うんですが。もしくはボディはフルマニュアルのFTbやF-1じゃなくてEFにして楽をすべきじゃなかったかな、とも。

おっと、昔話はやめておきましょう。
とにかく私は父上に買っていただいた50mm F1.4一本で1年以上撮りまくりました。
F-1は露出計内蔵のフルマニュアルカメラでしたので、周りの明るさでだいたいどれくらいのEV値なのかもわかっておりました。画角もそうです。50mmばかり覗いてますからファインダーなんか覗かなくても画角はもう体が覚えてました。
レンズの距離指標でピントを合わせ、フレーミングはノーファインダー。EV値も体感でわかってますから露出計見なくても平気ですし、アイリスとシャッターの組み合わせなんて暗算? で一瞬です。
というと自慢に聞こえるかもしれませんが、マジで違います。だって私が特殊だったわけじゃなくて、あの頃のカメラ坊主(カメラ小僧という言葉はまだなかった。あれはたぶんCanon AE-1の普及が創出した新語)はみんなそうでしたっけ。

でも、そのうちにだんだん不満が募ってくるわけです。
「50mmだけじゃヤダ」
というアレです。
1年以上50mmでさんざん撮りまくってますから、自分が次に欲しいレンズは自ずとわかってきます。
実はその時の私の写真仲間のほとんどは二本目に望遠レンズを選んでいました。
彼らが買うのはだいたい135mm。ちょっと奮発出来るヤツは200mmを買う、という感じです。
でも、私は断然広角レンズが欲しかったんです。もしくはマクロレンズ。
もちろん好みの被写体によって欲しいレンズが決まってきますので、つまり私と彼らでは被写体の好みが違っていたということです。
「鉄」系は望遠でした。広角レンズを使う「鉄」はまだ少なく、というか50mmで充分だったみたいです。私の周りの撮り鉄たる彼らは芸術系の写真というよりも「記録系」の写真を良しとする価値観を持っていました(そういう時代でした)ので。
「車」系も望遠でした。彼らは鉄系よりもさらに「記録」に偏っていますから、ボディが歪む広角なんて考えられないわけですね。ただし望遠と言っても彼らの望遠は中望遠。85mmとか、長くても135mm止まり。
当時は少数派でしたが、ポートレート系もいました。
ポートレート系といっても、今の時代だとはっきり言って「盗撮」です。
当時はゆるい時代で、そもそも「盗撮」という単語が存在していませんでしたので、気になる女の子、可愛い女の子を「そっと」撮る為に、200mmの望遠レンズは必須だったのです。
そんな「そっと撮る」事が犯罪なんて言われた事のない、いい時代でした。
むしろ「撮られてる」事が(女の子にとって)ステイタスですらあった時代です(いや、ホンマ)。
まさに日本の写真史に於けるベル・エポックだったと言っていいでしょう。

そんな中、広角を使っているのは若いのに山に登って風景写真を撮る連中です。
これがまた、当時は旭光学のPENTAX SP使いばかりで。(・∀・)
というか、SPがマジョリティだっただけなのでどのジャンルにもいるわけです。

さて、じゃあ私も風景なのかというと、違います。
私の主な被写体というか、撮影シーンは普通の生活です。これ、当時としては異端扱いされてました。「ンなもん撮ってどうするんだ?」的な目で見られておりました。
私にしたらスナップ写真なんですけど。
もちろん人物も多いです。普通に友達と遊んだりダベったりふざけているような、何でもない日常を記録して、写真にして眺めて
「ああ、この時はどうだった、こうだった」とニヤニヤしたり、
「へえ、この子ってこんな表情をするんだな」なんて女友達の密かな魅力を発見したり、
「コイツ、写ってる写真、どれもレンズ目線でピースサインじゃねえか!」と椅子を蹴って立ち上がったり。
「ああ、学食のチャーハンって具が少ないよな~。比べてこいつの弁当は豪華でうらやましい」なんて、食べ物は必須。
当然家族も、そして飼い猫なんかも写してました。
もちろん中にはポートレートっぽい写真になる事もあり、遊びに行った先だと風景を撮ることもあり、ですけど、中心はやっぱり日常スナップ。
そう。
私はだんだんと50mmF1.4のレンズに窮屈さを感じていたのです。

そしてある日。
「50mmはもうオッケー。免許皆伝」
勝手にそう決めつけた私は、小遣いを握り締めてカメラ屋に行きました。
買うレンズはもう決めています。
CanonのFDレンズのカタログを穴が開くほど何度も何度も読み返し、作例を見つめ続け、悩んだというより迷いに迷い込んで? 選んだレンズでした。
その頃の私達が単純に「広角レンズ」というとそれは35mmを指す「普通」名詞でした。
28mmは超広角です。24mmだと「特殊レンズ」。
今から考えると笑っちゃいますよね。(・∀・)
で、私が選んだのはFD24mm F2.8SSCというレンズです。
ちょうどCanonはカラー写真対応に注力し、NewF-1の発売に合わせてFDレンズ群のS.S.C.化(スーパー・スペクトラ・コーティング)を終えた頃でして、この24mm F2.8もS.S.C.のものでした。

なぜ24mmにしたのか?
この理由ははっきり覚えています。
実は一つじゃないんですが、
1)「ファインダーを覗いた瞬間、広角だ!」と感じられる画角の格差は、28mmより大きかった(アタリマエだっちゅーの)
2)28mmを持っている仲間はいたけど、24mmは当時は誰も持っていなかった
3)なぜか私は「焦点距離は倍々で揃えるのが美しい」という妙な美学を持っていた
とまあ、こんな感じ。
望遠はそのうち85mm、135mm、200mmじゃなくて、100m、200mmと揃える予定でしたし、だったら広角側は50mmの半分の24mmで行くべし」的な思いは最初からありました。
問題は「特殊すぎないか」という危惧です。
28mmでも超広角なんて言われている時代ですから24mmなんて「初心者は使いこなせない」って言われてました。少なくとも最初の広角レンズとしては推奨できないという風潮でした。
「広角初心者は35mmからはじめて28mmへステップアップ」みたいな価値観があった時代です。
なんだよ、ステップアップって。(・∀・)
まあ、昔からへそ曲がりでしたので、そんな事を言われると「だったら意地でも35mmは買わないぞ」って決心しちゃいましたけど。
なので選択肢は28mmか24mmかです。
色々と画角を想定して、作例とか色々見て、自分には28mmが正解だと頭では理解していたのですが、「どうせなら(50mmとは)それこそ全く違う異世界を見たい」というパッションに負けた格好です。
もちろん、レンズカタログにはより広角のFD17mm F4 SSCとかありましたけど、さすがに「普段使いのレンズ」として使いこなす自信が無いのと、F1.4に慣れている体にはF2.8でも「ずいぶん暗いなあ」なんて思っているわけで、F4にはちょっと抵抗がありました。
何より経済的な側面も無視出来ません。
たしか定価ベースだと2倍はしなかったものの、17mmは値引きが少なく、実売価格では2倍近く差があったような記憶があります。レンズ自体の値段もそうですが、実は24mmまでだと50mmレンズに使っていたNDやPLフィルターが使い回せたのです。この辺は各メーカーともコスト面もあってある程度の共通化をしてくれていた為、結果としてユーザーもその恩恵を受けていた格好ですが、17mmになるとフィルターを別途買いそろえないといけませんし、何よりもそのフィルターの値段がいきなり跳ね上がるんですよね。単純計算でも55mmと72mmじゃ面積が1.7倍くらい違いますのでそりゃ値段も高くなります。そもそも売れる数が桁違いです。高くなる理由しか思いつきません。

そんなこんなで「広すぎるかもしれないけど、チャレンジしたい。いや、使いこなしてみせる」なんて青くも熱いパッションとお小遣いを握り締めて買った24mm。
んでもって「はまった」んですよね、24mmに。(・∀・)
その後、私のNew F-1ボディにFD50mmが付くことはありませんでした。
まあ、それは言い過ぎですけど(200mmとか50マクロとかつけたし)それくらい気に入ったレンズでした。
ちょっと迷ったけど、私の好みにドンピシャの画角だったんですよ。
それまで「引き」で写真を撮っていたんですが、それだと「輪」の中に自分がいない時間が多くなってたんです。
それが24mmだと輪の中にいるままでどんどん撮れてしまう。むしろカメラを持っているからより近づいたりする事ができて自分でも新鮮な気持ちになりましたっけ。
当初は友人の28mmを借りて比べて見たりしていたのですが、24mmならではの歪みの大きさを利用して遊ぶ事が面白いと思っていたので28mmでは今ひとつ乗れない感じがしたものです。
そう言えばいまだにF-1はあるんですけど、そこに付いてるのはそのFD24mm F2.8SSCです。

さて、過去に飛んだ意識を西暦2016年3月に引き戻しましょう。
そんなこんなで、特にこれというレンズもなく、使ってみたいと思えるレンズもない、つまり食指が動かないXマウントレンズ群からムリヤリ選ぶとしたら24mm相当がいいのかな? と思っているという話でした。
Xマウントの24mm相当のレンズというと、XF16mm F1.4R WRというレンズがあります。
いやあ……。
なんでF1.4?
そんな大口径のレンズ要らないんですけど。
FD24mm F2.8 SSCのような庶民的なレンズが欲しいんですけど。
XF16mm F2.8くらいでいいんですよ。RもWRもどうでもいいんです。
あ、Rはともかく、WRは付いてる方がいいに決まってますけど。
それよりも小型軽量である事の方がありがたいんです。

X-Pro1のようなスナップカメラは大口径レンズとセットである事よりも、機動性重視で小型軽量レンズが似合うと考えている私にとっては、ですが。
きっと富士フイルムの技術者は技術力を誇示したかったのでしょうね。
もしくは「XマウントはF1.4シリーズを揃えてます。グルメな爺さんよっといで」でしょうか。
まあ狙いは「ボケる広角! F1.4。我ながらすげえ!」って事なのでしょうが。

ちなみにXF35mm F1.4Rと比較すると、重さは二倍以上。
体積はざっと1.8倍以上。
値段はヨドバシ価格で約2.5倍。

オマケに大口径レンズが徒になり、旧式のモーターででっかい玉を動かすことになりますのでAFも遅いでしょうし、イマイチ食指が動きません。
なんというか、まあ、アレです。大艦巨砲主義の権化、みたいな?

とはいえ、以前使っていたNikonのNIKON AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G EDなんていうシロモノに比べると、そこはフォーマットがAPS-C、重さは60%強、体積は65%ほど、価格は45%程度となり、とても軽量コンパクト……とムリヤリ考えていいのかも……しれません??
比較対象物を何にするのかによって見え方は変わってくるものですからね。

うーん。
二本目を買うなら「あの頃」と同じパターンで、50mmの次は24mmにしたい、というノスタルジーに駆られる私ですが、「あの頃」買ったのは「梅」レンズ。しかしXF1614Rはいわゆる「松」のグレードのレンズ。しかも大きくて重い。X-Pro2につけるとさぞやフロントヘヴィになる事でしょう。

そこで私はいったん考える事を放棄しました。
「ちょっとでっかいX100T」を使っているつもりだと考えて、二本目はXF23mm F1.4Rにするか? なんてチラっと考えたんですが、23mmはステッピングモーター搭載の小型軽量になると噂の新型が出てから考えるべき、と思い直しました。

で、先に三本目を。
三本目はじつはもうほとんど決めてました。
単焦点レンズではなくて、ズーム。それも標準ズームです。
「X-Pro2にズームレンズなんて、バカなの?」とか言われそうですが、そうしたら「レンズ交換出来るカメラなのに交換するレンズを自分で制限するとか、バカなの?」と言い返すつもりです。
いえ、X-PRO2に「似合う」レンズは私も単焦点レンズだと思います。それも「断然」です。
でも別に「あるべき」的な人間ではありません。「たまには便利ズームを使ってもいいじゃないの」というフリーダムな人間なのです。
腰を据えてXマウントシステムを使う気になったら、そのうち望遠系ズームも考えますが、圧倒的に出動率が低いのですよね。
メインシステムのμ4/3だって望遠系は本当にやることなくて防湿庫で惰眠を貪っているだけですからね。
望遠レンズなんて私には今のところSTYLUS 1sで充分なんです。
いいですよぉ、STYLUS 1s。超強力な光学式手振れ補正付きの300mm F2.8、しかもオリンパス自慢のZEROコーティングがされてます(ZERO=Zuiko Extra-low Reflection Optical)。
今のところ望遠系はこれでもう本当に充分。

じゃあ、広角系はというと、XF10-24mm F4R OISというレンズがありますが、実はこれ、発売前に予約購入して使った事があるんですよね。
※OIS Optical Image Stabilizer=手振れ補正内蔵レンズ。ツウぶったジジィは「おいっす」と略す事が多い

なので買い戻す感があって癪なのと、広角系ズームは6月に出るNikonのDL18-50でいいやって思ってるんですよ。画角の広さは15mm相当からスタートする10-24mmに譲りますが、価格はだいたいおなじ。それでいてカバーするズーム比率やハンドリング等々を考えると便利差は相当に上ですしね。

それよりも「いざと言う時の」為の標準ズームかな、と。
「今日は標準ズーム一本でとことん行くか」なんて気分の日があるんですよ、私。なのでμ4/3なんて標準ズームだけでもムダに6本くらいもってます。いえ、使うのは一本か二本だけですけど……。

実はXマウントの標準ズームもけっこうな本数があるんですね。
そもそもキットレンズとしても必要ですから、各メーカーとも世代交代したりしてこの辺のズームレンズは種類が多い。
んでもって、買う時にどれがいいのか混乱するわけです。
が、Xマウントは歴史の浅さが功を奏し、理解するのにさほど頭を悩ませずに済みました。かろうじて。

選んだのは、XC16-50mm OIS Ⅱです。
※C Compactの意味。Fラインは性能重視だが、Cラインは小型にする事を優先した、要するに廉価版。なので本来ならXE つまりE=Economyとするはずだったが、販売店などの店頭表記やポップ、ネットショップで目が悪い奴がXFとXEだと違いがわからず書き間違う、見間違うなどいろいろ面倒な場面が想定されたので、Cにした経緯がある……に違いない。
※Ⅱ それ以前の名称がまったく同じレンズがある場合に使われる。要するに無印より新しいという意味。他メーカーだとこのパターンはだいたい外装を変える(コストダウン)程度のモディファイが多いが、富士のこのレンズの場合、全く違うものとなっている。なので今さら無印などいくら安かろうがカネを出して買ってはいけない。くれるというなら貰ってもいいがⅡを持っているなら使わないのでゴミになるから貰わない方がいいかもしれない。

このレンズ、名称からわかるとおり廉価版です。たぶんプラマウントの安物キットズームです。
X-A2のレンズキットの抱き合わせズーム、といえばわかりやすいかもしれませんね。
X-T10を買う時に、実はズームレンズ付きのキットにするかどうかでちょっと迷ったんですよ。
どうせ標準ズームを買うつもりだったので、丁度いいと思ってたんですが、その時私のサイドエフェクトが囁いたんですよ「ちゃんと調べろ」ってね。
でまあ、その時FUJIFILMのXマウント標準ズームレンズについてスペックチェックを行った、結果、私が買うべきは上記のレンズであって、断じてX-T10のキットレンズであるXF 18-55mm F2.8-4 R LM OISなどではないと理解したわけです。

いやあ、あり得ないでしょ?
広角端で30cm、望遠端でようやく40cmですって。
最短撮影距離。
でかくて重い寄れないズーム。
因みにXマウント標準ズームのフラグシップ? であるF2.8通しズーム、XF16-55mmF2.8 R LM WRも同じ。
つか、確かX-T1はレンズキットを買ったので、その時についてたのはそのXF 18-55mm F2.8-4 R LM OISだったハズ。すぐに防湿庫に捨てた記憶が蘇ります。
X-T10で同じ事を繰り返すところでした。

まあ、基本的に寄れないレンズが好きなFUJIFILMですから寄れないのは仕方がないのかもしれませんが、あきらめるのは早かった。
あるじゃん! (・∀・)
XC16-50mmF3.5-5.6 OIS Ⅱ。
無印はダメです。Ⅱじゃないと。
無印は他の凡百な富士の標準ズームと同じ30cmと40cmですからね。
名前も見かけのスペックも同じでⅡがあるかないかで大違いなんです。
だってⅡは広角端で15cmまで寄れるんですよ?
これはもう、レンズフードがぶつかるほど近くまで寄れるって事です。
μ4/3の標準ズームかよ! みたいなノリですね。もはや富士フイルムのレンズとは思えません。
さすがに望遠端では35cmにスペックダウンしますが、それでも他のレンズが40cmのところ、5cmも短縮してます。そして最大撮影倍率は0.2倍をなんとか確保しているので、ここはもう及第点でしょう。

お気軽に使う標準ズームですからF2.8通しのばかでかくて重い「高額レンズ」なんて必要ありません。
このレンズ、寄れるし、換算24mmスタートだし、軽い(195g)し、コンパクトだしで、私の要求にドンピシャです。
プラマウントとかそんなの関係ありません。標準ズームなんてこの気楽さが性能でしょう。

XCはレンズ側に絞り輪がないエントリー向けの普及ボディ用キットレンズですのでX-Pro2に装着するとアイリスはダイヤル操作になりますが、なんというかそれは私としては願ったり叶ったりです。そもそもフィルム時代から面倒だなって思っていたレンズの絞り輪を動かす作業から物理的に解放されるわけですからね。使いたくても使えないって最高ですな。

写り?
普及機用の標準ズームですから、それなりである事は承知の上です。
ズームなんてそれでいいんですって。(・∀・)
もちろん、同じ重さ、大きさが確保できるのであれば、そりゃあレンズが明るいに越したことはありませんよ? でもそんなのオーパーツですよね?
なので私は旅行なんかの時に気軽に「一応(バッグに)入れとくか」的に持って行ける気楽さこそが標準ズームの正儀だと思います。
まあ、単焦点レンズを主に使っている人間の視点なので、ズーム主体の人とは価値観が違うのは確かでしょうけれど。

と、三番目のレンズを決めた時点で吹っ切れました。
初志貫徹。
24mm(相当)でいきましょう、と。
F1.4?
大人になったので贅沢させて貰いましょう、と。
そして、XF16mm F1.4R WRって、例外的に「寄れる」しね。
因みに最短撮影距離は15cm。
F-1とFD24mm時代にはあり得なかった「寄れる24mm」。
そう思えば多少大きくて重くてもOK。
だって、Nikonの24mm F1.4に比べたら天国ですもん。(・∀・)

そういうわけで、最初に考えて、そのあとグルグルして、回り回って元に戻った、というお話でした。
せいぜい撮り倒してモトはとるぞ、と。(・∀・)

以上、購入編でございました。