(初出:2011/07/31)
いやー、刺激って大切ですよね。
設計の古さもなんのその。
直近はE-P3の稼働率がすっかり下がって、α900ばかりをいじっているわけですが……。
勘違いされては困るので書いておきますが、私にとってα900はあくまでも「遊びのカメラ」であって、メインにはなり得ません。
メインは(現時点では)あくまでミルクス(MILCS=Mirrorless Interchangeable Lens Camera System)のμ4/3、OLYMPUS PEN E-P3と、その仲間たちということになります。
α900をメインにしてしまうと、その大きさ重さと周りに与える威圧感などで疲れてしまうのは必定。
というか、気軽に持ち出す気になれない時点でメインじゃないわけです。
「勝負カメラ」ともちがいます。
何を持ってしてメインというのかは人それぞれでしょうが、私は最大稼働率を期待できるシステムをメインととらえていますので、通勤鞄に毎日入れておけるμ4/3あたりが「上限」だと感じています。
でも、α900はおもしろそうだし、実際に使ってみるとおもしろい。
だからE-P3と新しいレンズたちをそっちのけで最近はこればかりという感じになっています。
いってみれば浮気相手に夢中になっているようなものです。
浮気が本気になることはなくて、新鮮だから興奮しているだけなのも冷静に理解しているところがオトナになった証拠かなあ、なんて感じております。
さてそこで前回の続きなのですが……。
勝手知ったるD700ではなく、135版フルフレームのカメラとしてα900をあえて選んだのは、α900でしかなしえないことができるから、という話でした。
ええ、もちろんシステムに含まれるレンズに唯一無二の存在があるからです。
Smooth Trans Focus。
STF。
そのスリーレターこそが、α900をさらに「ユニーク」な存在に押し上げていると私は思いました。
もちろんニコンにだって「唯一無二」のレンズはいくつもあります。
私もつかっていたバリフォーカルじゃない本物のズームレンズであるズームマイクロとか、同じくしばらく楽しませてもらった14-24mmf2.8や、高くて手が出なかったものの200mm F2.0なんかは個性の極みです。
でも、ニコンには135フルフレームはD700だけではありません。D3xもD3sもD3も存在します。
翻ってαマウントにある135フルフレームはα900が唯一無二。
人類の歴史を振り返ってもオンリーワンの存在なのです。
オンリーワン&STF
それはSTF本来のイメーじサークルを生かすことができる組み合わせなのです。
STF。
それはニコンのズームマイクロだとか14-24だとか200/f2.8などとはまったく別の地平にたつ孤高の存在で、比べることさえ無意味な存在です。
だから無理もないとお思いください。
「α900でSTFを使ってみたいんだよぉぉぉぉぉ」
パッションです。
ええ、Adrenaline!! です
つか、それで決めました。
決めた割にそのときはボディだけしか買わず、STFとかは買ってないんですが。(その店には在庫がなかったので、とりあえずSD1のことで頭いっぱい、αは今度でいいや、と)
ま、そんなこんなでSTFの存在がα900の背景の一つになっているというのは間違いないところだと思います。
αマウントにはこれ以外にもユニークなレンズとして、AF 100mm F2.8 SOFTFOCUSというものがあります。
もちろん、これも所有していました。
STFとこの100ソフトが、αマウントの白眉たる双璧だと私は思っています。
Carl・ツァイス?
Gレンズ?
ええ、みんないいと思いますが、それって似たようなものが他メーカーでもあるじゃないスか?
D700でもいんです、35mm大口径とか200mm近くの大口径とかありますから。
え?
STFはそうかもしれないが、100mmソフトはほかにもあるだろうって?
いや。
あるんですが、αの100mmソフトは「解放でも口径食がない」ことが重要です。
STFもそうです。
使ってみればほれぼれします。
もっとも、そういう写真を撮るかどうかは別問題として。
でもまあ100mmのソフトレンズはもはや中古でしか手に入らない存在なので、なかったことにしてもいいでしょう。
新品で購入して持っていたレンズなんですが、すでに手放してしまいました。
買い戻そうにも個人的に中古レンズってのはちょっと……。
まあ、そんな感じで新品で購入可能なSTFです。
ええ、私はMFレンズが苦手です。
でっかいレンズも苦手です。
でも、フレクトゴンとSTFだけは「アリ」かな、と思っています。
なにせ、唯一無二ですから。
でも、以前持っていたミノルタのSTFとはデザイン変わっちゃいましたね。
どちらも新品購入したものですが、SONYブランドの個体はヘリコイドがかなり堅めで驚きました。
夏なのに!
たぶん全く違うグリスを使っているのだと思われます。
とまあ、そんなわけでα900と私の物語は、STFという相手の財産目当ても多少手伝って始まったのです。
と言うか、そもそも135mmって使わない画角なんですが。(STFをつけてファインダを覗くたびにいつも思います)
稼働率が極端に低いであろうSTFを、でもあえて手元におく贅沢。
それを義人させてくれるα900という存在感なのだということでしょう。
そもそも3年前のカメラですから、陳腐化云々はすでに織り込み済み。
α900の後継機が出ても、これはこれでいいやと思えます。
すでに書いたとおりネガをつぶした正常進化バージョンは出ないと思っていますので長く使えるカメラのような気がします。
新型が出たら、かえってα900の人気が沸騰、という気がしないでもありません。
でも、この予想が外れて万が一まっとうな正常進化versionが出てしまったら……
それはそれで買い足せばいいだけの話ですね。
そしてあまりにもα900が遅れていて使いたくもないほど新型がよければ、α900を手放せばいいだけなので、実に気が楽です。
個人的にはα900にライブビューがついて、α900LVなんて言うのが出るだけでもあと3年くらいは戦えるような気がしますが。
とまあ、こんな感じでα900を使い始めたわけですが、ざっと感想など。
言い尽くされていることばかりかもしれませんが、私視点で重ねて書いておきましょう。
1)光学ファインダ
このできだけでも買う価値のあるDSLRだと思います。
これを覗いた後ではD700のファインダって何だったんだろう? と思います。
LVのないDSLRではマクロ等、使わざるを得ないMFでもピントの山のつかみやすさはピカイチでしょう。
2)シャッターのフィーリング
最低です。
α系のあの「パッチーンンン」というシャッター音とは少し違い、「婆ちゃん」じゃなくて「バチャン」という音ですが、音量がすさまじいし手に伝わるショックも相当なものです。
D700のあのデリカシーのない攻撃的で下品な音も相当ひどいものでしたが、あれよりさらに下品です。
K-5やSD1に慣れた耳には本当に撮るたびにビクっとしちゃう音です。
こういう大きな音が好きな人もいるでしょうが、社会性がないというか、電車で着信音を切ってないケータイみたいでもはや遺物と言っていいと思うのですが……。
3)ホールディング
これは手の形や大きさが千差万別なので定量的な感想にはなりにくいのですが、非常に持ちやすいと思います。
グリップの内側のエグレがホールド性を高めていると思われます。
相当に重いボディなのに、しっかり深く握れるおかげで撮影したりグリップを握って移動しているときにはさほど苦痛を感じません。
むしろグリップに指を引っかけて持ち歩けるため、E-P3を手で握って持つよりも持ちやすいかもしれません。
4)意味不明な上面液晶
意味不明ですよねー。
そもそも表示される情報量が少なすぎる。
ニコンのように電源OFF時に残枚数表示などが出ている情報窓ならまだしも、電源入れないと見えないとかならあえてつける必要なし。
フラグシップなら、いるよね? 的な「とりあえずつけるだけつけました」みたいな感じで、ポリシーもフィロソフィーも感じません。
これも使いにくいドライブモードレバーを廃して、ここにダイアルとして持ってきた方が絶対いいと思います。
基本的にもはやフライバイワイアな世の中? ですから、マウントのそばにドライブモードレバーを未だにくっつけている意味があるとは思えません。
5)親指AFモードが使いにくい
いわゆる親指AFモードを設定される人は多いのではないかと思います。
その場合、AF ONのボタンの位置が重要になるのですが、α900の場合、ジョイスティックというか、マルチファンクションレバーの押下がそれに当たります。
レバー自体の操作フィーリングは悪くないのですが、位置が下過ぎます。
ここではグリップから手のひらが浮く状態でAFボタンを押すことになり、ボディと手のひらのフィット感がない状態になります。そのままシャッターを押下するのは不安定なので持ち替えたりすると近接じゃAFがすぐにずれますし、リズムも悪くなります。
AF/MFボタンをAF ONに割り振れるようにして欲しいなあ、とつくづくおもいます。
でも、SD1よりは相当ましな位置にありますが。
6)カードスロット
いや、メモリースティックDUOのスロットってどうよ?
せめてSD/MSDのデュアルスロットでしょ?
って、そうか、3年前か……。
ここに年月の差を感じますね。
今なら絶対デュアルスロットになるのでしょうね。
ま、OLYMPUSがかつて採用していたXD ピクチャカードとCFのデュアルスロットよりは一億倍の100億倍マシですが。
CFをメインに使うことになるとしても、予備的に手持ちのMSDを突っ込んでおこうと思って気づいたのですが……。
「能動的に記録スロットを選ばないといけない」
というロジックはどうよ?
片方がなくなったらセカンドスロットにあるカードに記録して欲しいんですが?
RAWとJpegの振り分けとか、ミラーリングとか、そんなものすらできないんですね。
あと、メニュー探しましたが、スロット間のコピーもできないっぽいですね。
3年たって最新のファームウェアでもダメですから、こりゃもうそういう構造になってないのでしょうね。ソフトとかじゃ対処できない。
ということで、本当に本当にバックアップみたいな感じです、はい。
ないよりマシ?
いえいえ、なまじあるだけにイラっと来ますよ。
7)ファイル名を変更できない。
できろよ!(日本語?)
だから、何度も言ってるだろ? この手のクラスのカメラ買うやつってさ、二台併用するやつも多いんだよ? ファイル番号ダブるだろ? フォルダ管理とか一括リネームとか、ユーザーに手間かけさせるんじゃねえよ!
つか、たぶんSONYの社員ってチャラい奴らばかりだから、こんなダサいカメラ二台も併用しねーよ、みたいなのが多いんだね?
チャラいカメラしか最近つくってないOLYMPUSなんかの方がある意味写真についてはまじめなのでPENであってもファイル名を変更できるんですよ?
しかも、Pは当然として、廉価版のPL系でも!
同じく最近ぶっ飛んでる気がするペンタックスのK-5もちゃんとできる。
光学ファインダにこだわったって言ってるなら、こういうところもちゃんとしようよ。
な?
8)ON/OFFレバー
オーケイ。
シャッターボタンの同軸上にあるレバーでON/OFFさせるニコン系が大嫌いな私にとって、全く別の位置にあるのは大歓迎。
しかも当然ながらPEN系みたいなボタンじゃなくて、ちゃんとレバー。
こうでなくちゃ。
ペンタックスはボタンやレバー系のレイアウトはだいたいニコンのマネをしているので、K-5もそこが気にくわないんだけど、どうやらSONYもニコン系の軍門に降ったようで、そういう意味でもα900は私にとって貴重なカメラになるんじゃないかと思われます。
9)メニュー
使いにくい。
毎回毎回スタート位置をリセットするな!
せめてニコンのように「よく使う項目」を登録させるなり、直前の5つくらいを呼び出す場所を初っぱなにもってくるなりして、アクセスのストレスをなくすべき。
10)つくり
ボディはマグネシウム合金カバーですが、いまいち手に持っていても、いわゆる剛性感が感じられません。
D700などのほうが手から伝わるしっかり感は数倍上だと思います。
なんとなく「緩い」感じなんですよね。
OLYMPUSのE-1のような岩のような塊感を見習えとまでは言いませんが、D700程度の感触は持たせるべきだったんじゃないかと思われます。
フラグシップなのに中級機的なフィーリングはここから来ているのでしょうね。
もちろん数値的な剛性は確保されていると思いますが、K-5並か、あるいはそれ以下みたいな感覚です。ぎゅっと詰まった感じがするK-5とちがってα900は大きいから余計にそう感じるのでしょうが……。
11)ハンドリング
α900の操作性の白眉は、ジョイスティック(マルチセレクター)です。
AFのONにもつかいますが、いろんなパラメータをいじったりするのにすこぶる付きで使いやすいです。
十字キーやダイアルより断然、です。
α900に慣れた後でほかのカメラをいじると「なんでジョイスティックないのだ」と思うくらいです。
リコーのCXが使いやすいのもこの手のレバーがついているからだと思われますし、各社はマネして欲しいところ。
もっとも「防塵防滴性」や「強度」なんかにこだわる人が眉根を寄せる可能性があるインタフェイスではありますが、そんな人は無視してどんどん採用して欲しいと願わずにはいられません。
たくさんあるボタンの感触などもそろっていて違和感がありませんし、この辺はちゃんとしたつくりだと思わせます。
前後のダイアルも確かなクリック感といい意味での重みがあるし、全体的に高級感があると言っていいと思います。
ただ、露出補正とドライブモードの選択ボタンはなんとかなるとして、WBとISOのボタンの位置はどうかな、と。
12)画質
満足です。
基本感度のISO200でも等倍チェックするとすでにノイジーな感じの絵ですが、K-7のような汚さはありません。
むしろ意外に高ISOが許せる(私は、です)レベルです。
ユーザー設定で通常モードとしてISO AUTO800に、暗いところ用のユーザー設定にはISO3200まで入れました。
もう少し使ってみて、通常は1600までで、非常用として6400までにしようかな、と思っています。(3つあるユーザー設定の一つはISO200固定)
正直に言ってSD1の絵をしばらく眺めていた目には、ピクセル等倍で見るとベイヤー機の2400万画素でもイマイチに感じてしまいますが、4/3フォーマットの後で見るとライブ感が違う絵だなというのは感じます。
ピクセル等倍でアドレナリンやドーパミンが出てくる画質ではないにせよ、これはこれできれいな絵だなと思えますし、SD1と違ってそもそもPhotoshopやCapture ONE 6でちゃんとRAW現像できるのですこぶる月に楽で、なにより噛みすぎて味がなくなったスルメのような絵しか撮れないSD1と違って、実に色がいい。
Pentax K-5の色の方が好みではありますが、α900もしっかりした色が出ていて好みの範疇に収まってくれる割合が高いのです。
つまり画質については「予想以上に悪くない」 つまり「十分満足」している、とだけ言っておきます。
とまあ、二回目はこの辺で。