本当に久しぶりにスピーカーの聞き比べで毎日楽しんでおります。
結果として
「○○の方が△△よりいい音」
なんて結果を出す、いや「出る」わけですが、この判断と言うヤツが実に曖昧ですね。
官能評価でもオーディオ系の評価は極めてパーソナルなもので、それこそ画像の「あなたが見ている色と私が見ている色が違う」なんて「なんて些細な事」って思うくらい、違うモノだと感じます。
だいたい、音楽ファイルやCDなんてのは当然として、パソコンやCDプレイヤーからDAC、アンプ、スピーカーに至るまで、何から何まで全く同じ機材を使ったとしても、私と私以外の人の感想は全く違うモノになる可能性があるんです。
なので、
「○○の方が△△よりいい音」
と私が書いていても、「そうなんだ」と信じてはいけません。
特に今回、DACだけ、あるいはスピーカーユニットだけについて「○○の方が△△よりいい音」なんて書いてるわけですから、同じスピーカーユニットやDACを他の人が買って試すと「△△の方が○○より断然いいじゃん。アイツ(私の事ね)何言ってんだ」って事になる可能性は多々あります。
だって全く同じってムリでしょ?
音楽評論家が仕事で機材借りて聴き比べなんて場合ならメーカーから一式借りて単品に限って変更して聴き比べなんていうのは可能でしょうけど、まあそれでも最終的に聴く耳が人それぞれちがうから……って言うと終わっちゃうんですけどね。
今回、何が言いたいのかと言うと、聴く環境、それも最大の「音響設備」と思われる部屋の違いで音が全く変わるでしょう、というお話です。
オーディオマニア曰く。
「東京より大阪の方が音がいい」
言い切りますね。
これは大昔から議論のネタとして上がっているオカルト系の話題なんですが、根拠としては
「東と西に於ける周波数の違い」
すなわち西日本はメリケン式の60Hz、東日本はドイツ式の50Hz。より周波数が高い西日本の方がオーディオ的には音がいい、というもの。そもそもオーディオの本場はメリケンだ、という説。
いや、鵜呑みにしないでくださいな。
そうかもしれないけど、そうではないというのが一般的な定説ですから。
だって、その手のオーディオマニアでも電流派と呼ばれる人は
「電気は西日本。それも福井県が一番。(原発に近いから)電気が新鮮だから、出る音が生き生きしている」とか
「やっぱり富山でしょ。バッハは水力発電に限るからね。火力発電も悪くないけど、石炭じゃないとね。重油とかLNGとかだと音に雑味が入るからね。ああいうのは打ち込み系を聴く時はいいのかもね」とか宣いますからね。
で、マニアの中のマニアと呼ばれている人は60Hz地域の福井県と富山県と島根県(浜田市に大きな石炭発電所がある)に別荘を持っていて、それぞれにリスニングルームを作っているのだとか。
真剣に聴いているとファンタジーの世界とのさかいがわからなくなってきますのでこの手の人に出会ったらご注意を。くれぐれも
「富山県って黒部ダムの電力使ってましたっけ?」
なんてツッコまないように(黒部ダムは関西電力のダムです)。
まあ、そこまでヘヴィなマニアでなくともライトな「電流派」はけっこう多くて、
「昇圧トランスは必須だ」とか
「屋内配線はPanasonicじゃなくて松下電器のケーブルに限る」とか
「何がなくともまずはアースだよ、アース」なんていうのがそう言う人達です。
まあ、こちらも話を聞いているとオカルトの世界と現実世界との境界線があやふやになってきますので
「たこ足配線は音にもわるいのだろうな」程度に大雑把に噛み砕いて理解する方がいいでしょう。
で、部屋。
これはまあ大阪電灯から脈々と受け継ぐ60Hzの地域にあるとか、原発に近いとか、水力発電だとか、原料が石炭だけの火力発電モノとか、そういう話ではなく、文字通り「今、そこにある部屋」の事。
要するに同じ機材でも設置する部屋によって全然違う音がするということです。
マニアは設置方法にはこだわりますからね。スピーカーの設置位置はもちろんのこと、左右方向のみならず、上下方向の角度なんかも分度器を使って(いや……使うのか?)厳密に? 計測してベストポイントを叩き出すのを至上の喜びとしているくらいです。
でも、見ているとわかりますが、そう言う人達っていつまでも微調整し続けています。なので彼らからはゴールのないマラソンをしている苦行僧のような悲壮さが漂っています。
そういうマニアの中でも、家族が居ない一人暮らしの場合はもう、カオスです。いえ、実に数学的な美意識に基づいた構造になっているのでしょうが、私のような一般人から見るといくつあるのかわからないアンプとスピーカーのピラミッドに愕然とし、床を這うケーブルを見て「なんてこった。この人はこれら全てを把握しているというのか!」と、その深淵振りに目眩を覚えるわけです。
まあ、自由に置き換えてベストな位置を探れる人はまあ、幸せですね。
亭主関白で家族には一切意見など言わせない人もこっちですな。
しかし。
私をはじめ普通の人はいい音で聞きたいけど、家族との折り合いはもっと大事と考えるわけです。
つまり、
「スピーカーの位置など、自ずと決まっている」んです。
位置はほぼ固定。従ってスピーカーのサイズも制限されます。換えられるのはせいぜい上下左右の角度くらいでしょうか。
で、我が家の試聴環境ですが、現在はいわゆる「デッド」な環境で聞き比べをしています。
デッドorアライブじゃなくて、日本のオーディオ用語では「デッド」or「ライブ」この場合、リスナーの生死はあまり関係ありません。
具体的には、我が家のリビングに設置されるスピーカーは、
1)背面から壁までけっこうな距離がある
2)リスナー(私ですな)の背後から壁までも、けっこうな距離がある
とまあ、極めて乱暴に言うと、スピーカーとリスナーのすぐ後ろには、音を反射する壁がないという環境です。
実際問題、部屋ですから壁がない訳がない(なければそれは屋外ですな)のですがこの場合は「距離が遠い」と置き換えて下さい。では遠いとは何メートル? 何センチ? という話になりますが、要するにこれも相対的なものです。絶対的な閾値が決まっているわけではありません。
要するにざっくりした私のメイン、すなわちリビングの試聴環境は前後とも「デッド」という事をご理解いただければ幸いです。
方や書斎の方は、スピーカー側はかなりライブ。リスナーは同様にデッドなので、言ってみればかなり環境が違います。
加えてスピーカーは机の上、それもリスナーから見て奥にに置かれています。これはどういう状態かというと、リビングで例えるなら床に置かれているのと同じ状態だという事です。スピーカーの下に長い擬似的な音道があるようなものですから。
リビングで聞いていたスピーカーを、書斎のデスクに設置して聞くと、全く音が違って聞こえるんです。
それはもう、全く別物です。
何が言いたいのかと言うと、
「なので、他人のオーディオ系のインプレなんてマジで当てにならないからね」
という事でございました。
因みにUD-501はどちらで聞いても納得の美音でございましたので、個人的には大満足のDACであります。
まあ、出す音がでかすぎて、本気を出せないのが辛いところですが。