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★貧脚サイクリストが綴る【TREK MADONE SLR】あれやこれや(操作フィーリング)

自転車

MADONE SLRは「エアロ・ロード」ではない。「エアロ・ディスク・ロード」である

私のMADONE SLRは油圧ディスクブレーキを採用している。
ディスクブレーキはフレームに大きな負担がかかる。
つまりフレーム(正確には主にチェーンステーとフロントフォーク)を頑丈にする必要がある。
ゆえにディスクブレーキ車はリムブレーキ車より重くなる。

事実として、最新のディスク・ロードであるTREK MADONE SLRは今まで乗っていた5年前のリムブレーキのエントリー・カーボンロードのORBEA AVANT OMPより実測で850gも重かった。

以上、これまでのあらすじ。(^^)

◎なのに乗車フィーリングは「軽い」

と書くと、またぞろMADONE最強説を書き連ねるように思われるかもしれませんが、私はMADONEが「最強」だとは思ってません。ORBEA AVANT OMPと比較して場合「二台の中では最強」と言っていいと思いますけど、すべてのバイクを所有して乗ったわけじゃないですから「最強」とか言えませんよね。言える人がいたら無責任甚だしいです。
それに、この手のプロダクトにおける「最強」なんてそれこそ一瞬の夢のようなものですからね。新しいモデルがどんどん塗り替えていくものなのです。

そんなわけで(どんなわけ?)今回はその「軽く感じる」系の操縦フィーリングについて少し書いてみます。

もう何回も書いてますけど、フィーリングは本当にかなり違います。
「自転車なんてみんな同じでしょ、言うほどの違いなんて本当にあるの?」
なんて疑り深い気持ちをお持ちのあなたにお答えしましょう。
「ぜんぜん違う」と。

まあ「ぜんぜん」っていう程度がどの程度なのか……それはもう「その人の感覚による」としか言いようがありません。
したがって例によってこれはあくまでも「個人の感想です」レベルの作文です。
その辺、ご理解いただきたいと思います。(_ _)
というわけで始めましょう。

文字通りです。
ORBEAより物理的には重いMADONE SLRの方が走っていて軽く感じます。
私が感じるくらいですから、多くの人が同じように感じるに違いありません。
ただひとつ、出足・漕ぎ出しだけはORBEAの方が少し軽いですが……。

MADONE SLRの場合、まずいわゆる取り回しが軽いんです。
MADONEは自転車自体をコントロールするのがとても楽なのです。

納車時に「(ポジションの)微調整をするからちょっと乗ってみて」といわれてまずやったことは8の字走行です。
「MADONEはハンドルがキレない」という情報を得ていたのでバイクコントロールが下手な私としては狭い場所でのUターンなどの取り回しが気になっていたんです。
なので普通のUターンや8の字をぐるぐると何度か行いました。最初は大きくまわり、その後半径をだんだん小さくして試したところ、
これが本当に楽、というかスムーズにできたのです。自分のバイクコントロールが突然うまくなったような錯覚を覚えました。

ORBEAの場合、8の字走行での切り返しの際に「切り返すぞ」と「構える」段階が入るのですが、MADONE SLRだとその段階が存在しないというか……そんな感じです。

ハンドルはここまで切れます

というわけで、低速での8の字走行は楽に、むしろ楽しく遊べました。

ではカーブでは?
こういうのは「コーナリング」と言ったほうがわかりやすいかもしれませんね。
レースをする人だと集団内での位置取りとかブレーキを使ったりする別の「動かし方」というのがいろいろあるのでしょうが、一般道をサイクリングするレベルだと、せいぜいUターンといわゆるコーナリングくらいしか「動かす」場面はないですからね。

で、そのコーナリングなんですが、なんというかものすごくスムーズなんです。
語彙が少なくてすみませんが、私レベルの感想ではそうとしかかけない。^^;

とはいえ、今までは同じ道をORBEAで走っていても全く文句がなかったのです。
そりゃそうです。私は怖がりですから、下りで大した速度は出しません。
そこそこスピードを出すとしたら、交差する道がない見通しのいい一直線で、かつ前後に全くクルマが見えないような状況くらいですね。
ええ、ほとんどありません。

つまり低速ですからバイクなんてどうとでもなります。狙ったラインにもっていけますし、つまりは普通に曲がっているわけです。
と、思っていました。
MADONE SLRで同じ道を走るまでは。
そしてMADONE SLRがニュートラルだとすると、実はORBEAってややアンダーステアっぽかったのだと言うことを理解するに至りました。

MADONEの場合、何しろ入力に対する反応が速いのです。
左カーブだと左にバイクを傾けようとしてそのためのアクションを起こすわけですが、ORBEAの感覚でいると思っているよりも速くコーナリングを開始しょうとするのです。
それはもう、本当にコンマ何秒なんていう時間よりももっと短い時間の話なのですが、直進状態からコーナリング状態へ変化するタイムラグが明らかに少ないと感じます。

この手の感覚的なものに対する人間のキャリブレーション能力はすごいので、下りのカーブを3回ほどこなす頃には、体はもうMADONEの反応に完全に順応していました。
言い換えると「反応が早い」とか「すごい素直」と思わなくなっていたのです。
「アタリマエ」の基準が上書きされた瞬間です。

おそらく今、ORBEAに乗ると「え、反応鈍っ」って思うに違いありません。
一瞬だけビクっとする可能性がありますね。

そして少ししたらまた上書きされてしまうことでしょう。
つまりは低速でチンタラ走っているレベルではその程度の差しかないのですが、下りなんて100km/hはアタリマエ、なトップレーサーたちにとってはものすごく大きな違いになるのでしょうね。

低速域でのいわゆるハンドリングの違いは小さいかもしれませんが、コーナリング時の安定感などは大きく違います。これはもう別物と言っていいくらいです。
接地感の高さのレベルが違うというか、違う次元にいるというか……MADONEに乗って「接地感」というものをはじめて理解したというか……。

なので普段は怖くて絶対にやらない事、コーナリング時にあえて荒れた路面を通ってみたりしたのです。
すると多少の荒れでも物ともせず、車体を傾けてもなおビタっと(荒れた)路面をグリップしている感覚がお尻でわかります。
しかもそんな不整路通過中であっても一切の不安感がありません。

もうアレです。
コレを知ってしまうと、本当に「もうモトは取ったな」などと思ってしまうのですよ。
モト、取りまくりですね。^^;

◎ハンドリングが軽い

こう書くと、ひらひらと落ち着かないようなイメージがあるかもしれませんが、MADONE SLRの場合はまったく当てはまりません。
なぜなら、直進している時は「先生、なんか突っ張ってはりますか?」っていうくらいビシっとまっすぐに走っているのですよ、これが。
走り出した直後は一瞬だけですが「うわ、これってまともに曲がるの?」なんて思ったくらいの直進性のおばけみたいなイメージだったのです。
乗る前、つまりディメンションを見て夢想している段階では「およそ直進性に特化などしていない」バイクであることはことは一目瞭然だと思ってました。
ですからちょっと落ち着きのないひらひらしたバイクだろうな、なんて思っていたのです。
それが、実際に乗ってみると、「クルマに例えるなら、高速道路ではハンドルに指を一本添えているだけでいい、鬼のような直進安定性」みたいなフィーリングです。
なのでイメージと実際とのギャップを修正するのに時間がかかったくらいです。

でも、これはたぶん「鬼のような直進性」ではないのでしょう。
直進時にはビシッと安定している、というべきなのかもしれません。
だって曲がろうとすると手足の延長のような感覚で何の違和感もなくその直進モードを解いてくれるのですから。
もしくはこれこそが「高いフレームの精密性」なんていうものなのかもしれません。
そしてもう一つ。「スルーアクスル」によるハブ軸の高い剛性によってもたらされる特徴の一つでもあるのでしょう。

そう、スルーアクスル。


エアロじゃなくて「ディスク・ロード」側の特性です。
何しろディスクブレーキ用のホイールは、太いボルトで締め込んで止めてますからね。こういうやつを。


直径12mmです。

一見クイックレバーっぽい形をしていますが、これはボルトを回しやすいようについているレバーのようなものです

リムブレーキだとあの細っこいレバーで留める、いわゆるクイックレバー方式ですから、その固定力は天と地ほども違います。
あまつさえ、そのクイックレバーの固定力を「強くハブの回転性が落ちる」という謎理論を掲げてけっこうユルユルにしている人がいたりしますからね。
そんな人がスルーアクスルのディスクロードに乗ったら「フロントは岩のようだった」みたいに思うかもしれませんね。
いや、そんな人はそもそもスルーアクスルという方式自体受け入れられないのかもしれませんが……でも危ないのでクイックレバーはきっちりカッチリ締めましょうね。

というわけで、スルーアクスルを味わっちゃうと頼りないクイックレバー方式には戻れない気がしております。
戻る気もありませんが……。

他には……

◎ディスクロードの重心

コーナリングの安定感に感心しながら下りきったところにある信号で止まった私は視線を下に向けました。
そしてふと気づきました。
「そうか、これも要因かもしれない」と。

私の視線の先にあったのはディスクブレーキ。
ホイールに固定されたローターと、フロントフォークに固定されたキャリパー。
ドシっと安定しているのに、運動性も高く、変な癖など感じない極めて素直なMADONEの秘密の一つ、それはディスクブレーキ化により低重心になっているから……ではないかと。
そう考えると、MADONE SLRのパーツのうち、ある程度の重さの物はほとんど前後の車軸周りに集中しています。
遠くにあるのはサドルとハンドルバー周りだけ。

リムブレーキはブレーキ本体が重心部から離れた上の方にありますが、ディスクブレーキはまさに車軸にくっついていて、しかも回っています。
直進性がいい、と感じたのはひょっとしてブレーキのディスクローターによるジャイロ効果が多少なりとも関係していたのかもしれません(この理論でいくと160mmローターの方が140mmローターより直進性に優れる?)。

それでも運動性が高いのはそのブレーキローターやキャリパーなどの重量物が車軸部分に集中しているから、そこに対して入力すれば、反応はリニアになるはず……。
ハンドルをこじってカーブを曲がろうとする人にとってはジャイロ効果は「曲がらない」原因になりますが、回転の中心をちょっと動かそうとする動き……普通の人はこちらです……に対しては素直な反応になるはずです。

などという私の妄想が正しいかどうかは別にして、MADONEは直進時には安定しているし、コーナリングは素直で安定、しかもコーナリングの途中でラインを変えるなんていうのも不安なくできる運動性の高さをもっている、という感想が変わりるわけではありません。

そういえば……。
ここまで書いていて思い出しました。
下りのことばかり書いてましたが、上りの時も「これは違うかな」と思ったことがあったのです。
いつもの上りの時は私の速度が遅いこともあって、時々ハンドルがフラフラっと不安定な状態になることがあるのですが、MADONEで登っている時にはそのフラつきが少ない気がしました。
普段よりほんのちょっとだけ速度が速かったせいかもしれませんが、ハンドルがフラっとして「おっと」なんて思ったことは一度もなかったのです。
MADONEに乗り換えることにより、多少なりとも上りの時の安全性も高まったといえるかもしれません。

「これでもうモトは取ったな」

そう思ってニヤリとしてしまう今日このごろです。
モト、取りまくりですね。