慣れというのは恐ろしいもので、135判換算で24-600mm相当の画角を誇るSONY Cyber-shot R10M4なんていう「飛び道具」を使っていると、あれほど忌み嫌っていた「高倍率ズーム」に対するアレルギーが快方に向かっている自分に気付くわけです
高倍率ズーム。
その何が「嫌い」だったのか。
改めてそう自分に問いかけて見ました。
もちろん、答えは明白。
・でかい
・重い
・(画質が)悪い
・あと、暗い
という三重苦+1のせいです。
※なぜ四重苦としなかったのかというと「暗い」というのは高倍率ズームに限らず標準ズームにも当てはまるから。むしろ標準ズームに準じる明るさを誇っているとも言えますしね。とはいえ暗いのは確か。なので+1ってことで。
翻ってメリット。
もちろんnちゃんと理解はしておりますよ。
「レンズ交換をせずに、様々な画角をカバーできる便利さ」
これです。
というか、これしかない。(・∀・)
これらのメリットとデメリットは今でもちゃんと? 存在しています。
ではなぜアレルギーが緩和されてきたのか?
それはもちろん、私が人間として円熟味を増して……いるわけはなく。
なのでそれは、レンズが(というかメーカーが)頑張っているから。
要するにデメリットとメリットが交差するポイント、つまり「このくらいなら許せる」という閾値が高い位置に移動してきたからです。
いや……。
ちょっとニュアンスが違いますね。
言い換えましょう。
「今までまったくスルーしていた高倍率ズームは、改めてきちんと向き合ってみるとけっこうイケている事に気付いた」
ってな感じかと。
RX10M4は高倍率ズームレンズの括りに入れるのは個人的にチト抵抗がありますが、高倍率ズームに対する見方を変える引き金になったのは確か。
それもこれも換算で24-600mmをカバーしていて、写りがいいという事実。
フィルム時代の28-200mmとか28-300mmというズームレンズを使って「ガッカリだぜ」と思っていた私(と同じ思い込みを持っている人)にとって、RX10M4の性能は「オーパーツ」と言ってもいいくらいです。
だって
・小さい(換算24-600をカバーしているにしては、ですぞ? 念の為)
・軽い(同上)
・画質がいい
・あまつさえ「明るい」
もちろんRX10M4はセンサーフォーマットが1型ですし、評価基準として手放しで褒め称えるわけにはいきませんが、それでもちょっとした脅威なのは確か。
そんな感じで翻ってレンズ交換式カメラにおける常識的な? 範囲での高倍率ズームの今はどうなっているのかな? と興味を持った次第です。
相変わらず前振りが長いわけですが、そんなわけで今回は久しぶりに買った高倍率ズームの交換レンズについて。
というか、Panasonic LUMIX DMC-GX8、通称GX8のキットレンズとしてついてきたのが、
Panasonic LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S. H-FS14140で、これが14-140mmという、135版換算28-280mm相当の画角をカバーする立派な高倍率ズームでございました(以下、長いのでG14-140)。
これ、実物をちゃんと見るまでは「あのレンズ」と同じものなんだろうなと思っておりました。
「あのレンズ」とは、Panasonic LUMIX G VARIO HD 14-140mm/F4.0-5.8 ASPH./MEGA O.I.S. H-VS014140という同じく超長い名称のアレです。
名称的にはほとんど間違い探しみたいですが、「HD」という文字が余分に? 入っている点と、「MEGA」が「POWER」に変わりました。あと、F値が違います(微妙に暗くてF4.0-5.8)。
古くから(というか最初から)のμ4/3ユーザーである私は、当然のようにこの便利ズームを所有しておりました。
その旧型に対するイメージをそのままキャリーオーバーしていたのですが、GX8のキットレンズ、すなわち新型のG14-140はけっこう違っていたのです。
新しいG14-140が出たときのことは覚えておりますが、そもそも高倍率ズームレンズに興味がなかった私ですから詳細など一切チェックもせず「どうせ中味(光学系や駆動系)は同じでガワだけ変えただろ?」と勝手に思い込んでおりました。
F値が微妙に明るくなったのは、本来従来品も同じ明るさのレンズだったのに、開放画質を稼ぐ為に開放でもほんの少しだけ絞りを施してあったものを、コーティングや画像処理技術などの向上があったので新型では文字通り開放した、と考えていました。
で、恥ずかしながら今回初めて両者のスペックをチェックして「実はもはや別物だった」ということを理解しました。
まあ、まずは両者のサイズを比較してみましょう。
・サイズ
旧型 70×84mm
新型 67×75mm
・フィルター径
旧型 62mm
新型 58mm
・重さ
旧型 460g
新型 265g
・最短撮影距離
旧型 50cm
新型 30cm
・最大撮影倍率
旧型 0.20倍
新型 0.25倍
・そもそものレンズ構成
旧型 13群17枚(非球面レンズ:4枚、EDレンズ:2枚)
新型 12群14枚(非球面レンズ:3枚、EDレンズ:2枚)
ね?
別物でしょ?
特に約200gも違う重さ。
それだけで相当軽やかに感じます。
G1に旧型を付けていたイメージからすると、GX8に新型をつけると、ホールド性の違いからその体感の重量差は200gどころか、500gほどに感じます(イヤホンマ)。
フィルター枠ベースで直径が4mmも小さくなっている事も軽やかさに拍車を掛けます。
そうなんです。GX8にG14-140を取り付けてみると、サイズバランスといい「旅行はこの組み合わせでほぼオッケーなんじゃね?」と思える程です。
そういうわけでG14-140の第一印象は「○」でございました。
あとはアレです、「写り」です。
旧型も「写り」つまり画質についてはたいした不満はありませんでした。
フィルム時代のタムロンやシグマの28-200mmの性能を知っている身としては、旧型の14-140mmを使った時に、「これはヤバいレンズが現れたな」なんて度肝を抜かれたものです。
いつもの場所でさっそくチェックしました。
歪曲チェック
望遠端の解像感チェック
いやもう、頭が下がりますね。
広角端から標準ズームと同等以上の性能があると言っても過言ではないと思われます。
広角端は補正しきれないので多少は気になるかな、と思っていましたがこのレベルなら全然オッケーです。標準~望遠域の歪曲は無視、というか私には検出不能なくらいです。
いや、いいッスよ、G14-140。今さらこんなこと言っているの私だけでしょうけど。
でも、それもこれもGX8というグリップ付きのボディが会っての話なのは確か。
確かに小型軽量になったとはいえ、それでもフード込みだと「でっかいレンズ」に分類されてしまいます。なのでGX7MK2にこれをつけて運用しようという気にはなれません。
そこはそれ、棲み分けすべきなのでしょうね、うんうん。
それから旧レンズの名称にあった「HD」。これはPanasonic的には「HD動画撮影に適した画質を有するレンズ」に与えている称号のようなものです。
新型にはこのHDがないのですが、実は本体には印刷されてます。
シルバーのみ。
なぜ?(´д`)
ブラック担当の人が入れ忘れたか。
と思ったら、ブラックはうらっかわにひっそりと印字されていました。
そうそう、このレンズは日本製です。
これも人気の一因かもしれませんね。
まあ、ブラックボディの人(私)もご心配なく。
webサイトにはちゃんとこんなマークが掲げられてましたから。
イマドキのレンズですからね。HD非対応とかいう方がむしろ珍しい。
この手の表記はアレです。
昭和の日本車、特に高級車に誇らしげに貼られていた「エアコン」「パワーウインドウ」「パワーステアリング」「たーぼ」みたいなステッカー類と似たようなものですね。
それから上の機能を表すマークの最初のヤツ。
GX8にこのレンズを装着するにあたり、これが極めて重要なんです。
このG14-140mmという便利ズームを敢えてGXラインのフラグシップ機であるGX8のキットレンズにしたのかという意味。
それがこのDUAL I.S.(2)という飛び道具。
「レンズ内手振れ補正機能」+「ボディ内手ぶれ補正機能」=Dual I.S. すなわちこの組み合わせだと、両方の機能を有効に使って、単体よりも手振れ補正が効いちゃうよ? というもの。
しかも(2)ですから、「さらに効くぜ」的な?
手振れ補正効果がわかりやすい望遠レンズをキットレンズに加えて「どうよ」とばかりに自慢したかったのでしょうが、
「だったら高倍率ズームの方がいいんじゃね?」
「だよな。イマドキ標準ズームと望遠ズームをイチイチ取り替えるとかダサいっしょ」
という感じでこのレンズに白羽の矢が立ったということかもしれません。
レンズの手振れ補正機能ボタンをON/OFFするという、極めて適当でお手軽な方法で検証してみた感触ですが、そりゃもう、明らかに、というか全然違います。ケタ違いというと褒めすぎかもしれませんが、ボディ内手ぶれ補正機能ではどうしてもブレるシャッター速度でもピタリと止まり、さらに2段階下げられることもあります。
ざっと1.5段階ほど向上すると言う感じでしょうかね。
ま、そんな感じで意味もなく全能感を持ってしまってガンガン望遠端で撮影したくなってしまう感じです。
というか、高倍率感を味わう感じ?
だいたい広角側で一枚撮って、
望遠端でもう一枚撮って、比較してニンマリするというか。
とまあ、G14-140、GX8につけっぱなしで楽しんでおります。
けっこう寄れるのも○。
そうそう、こんな賞も取っていたようです。
使ってみて、さもありなんと思いました(ジャンルが微妙に狭いけど)。