「もう戻れない?」(初出:2017/08)
巷間よく言われるのは
1)チューブレスのセットは重い
2)タイヤを填めにくい
3)タイヤを外しにくい
4)空気を入れにくい
5)シーラントの管理がめんどくさい(あと、臭くて汚い)
6)空気漏れが多い(スローパンクチャーとも言う)
7)(タイヤの)値段が高い
などなど。
さて、順番に個人的なコメントを付けていきましょう。
これは今のところ「正しい」と思います。
まずホイールですが、同じ銘柄でチューブドのクリンチャー(以降、クリンチャー)専用ホイールとチューブレスが使えるとした2wayfitと呼ばれるホイールをラインナップに持っているカンパニョロのZONDAで比べれば一目瞭然です(どちらもC17)。
クリンチャー用: 1596g
2wayfit:1619g
理由はチューブレスタイヤに対応して密閉度を上げるためのリム形状に余分な材料を使うから。まあ、結果としてリムの強化がなされているわけですが。
次にタイヤです。
これは「選ぶタイヤによって差が出る」ので一概には言えませんが、例えば私を始めとして多くのライダーが選んでいるContinental GP4000S2という、ポピュラーなリプレイスタイヤのサイズ25cの重さは215g。パナレーサーのチューブ R’Airが76g。合計281gです。
対してポピュラーなのかどうかはちょっと不明なれど、チューブレスタイヤとしては老舗のIRCのRBCC 25cで265gです。ちなみに25cで265gは軽い方だと言っていいかもしれません。PanaracerのRACE A EVO3が330g。
バルブが25~30gくらいなので、ここでは25gとしてIRCで合計290g。これにシーラント30ccを加えると320g。RACE A EVOだと385gです。
ちなみにMAVICのYKSION Pro USTの25Cは260gとかなり軽量です。バルブを入れても285g。これでようやくクリンチャー並。
なのでシーラントを使わなければ、チューブレスタイヤでも目くじらを立てるほど重くはないわけです。
ホイールも確かに重くなりますが、ZONDAでもせいぜい23gの差。ある意味誤差レベル。
なのでここでは「厳密には多少は重くなるけど、無視してもいいレベル」と判断しましょう。
お次は
2)タイヤを填めにくい
これはMAVICの場合は最初からついてますのでユーザーが填める事はありません。
つまり私に限っては「問題なし」です。
もっとも様々な要因でタイヤを買い替える場合には体験することになるのかもしれません。
なのでここはペンディングとしておきましょう。
次。
3)タイヤを外しにくい
これもまだ外した事がないので……。
次。
4)空気を入れにくい
少なくともMAVICのUSTは「まったくそんな事はない」としかいいようがありません。
今のところ。
次です。
5)シーラントの管理がめんどくさい(あと、臭くて汚い)
ああ、確かにこれは面倒くさそうです。
そもそも注入する事自体が面倒くさかったです。
こぼしてもいいように床を養生したり、実際にこぼしたシーラントを拭いたりという手間があります。
それからシーラントは一度入れたら一生オッケーというシロモノではなく、なんでも1年も経てばカピカピになってシーラントとしての役目を果たさなくなるそうな。
つまり、そうなる前に定期的に洗浄して入れ直すか、1年毎にタイヤを買い替えるか、です。
買い替える際もホイール側にこびりついた「カピカピ」のシーラントを洗浄する必要があるので、結局面倒である事は間違いなさそうです。
クリンチャーの場合はタイヤパウダーを塗布する、というめんどくささがありますが、シーラントのめんどくささの比ではないと容易に想像がつきます。
なのでここは「絶対めんどくさい」でOKでしょう。
次。
6)空気漏れが多い(スローパンクチャーとも言う)
経験しております。洩れまくりました。
ただし、シーラントを入れてからは「まあ、こんなもん?」という感じです。
なのでここは「確かにそうかもしれない」という微妙な評価をしておこうと思います。
さて最後。
7)(タイヤの)値段が高い
ざっと調べましたが、確かに安売りモノはありませんね。
というか、クリンチャーに比べると選択肢が少ないと言った方が正しいのかもしれません。
ただ、クリンチャーはクリンチャーでも「何と比べるのか」という見方にすると評価も変わってくる可能性があります。
たとえばContinentalのGrand Prix 4000SⅡとIRC RBCCのAmazonでの価格差はというと……。
GP4000S2:5000円/1本
IRC RBCC:6200円/1本
ですが、クリンチャーにはチューブが必要です。
R’Airの25C対応ものは1400円/1本。
すなわち、
GP4000S2:5000円+1400円/1セット
IRC RBCC:6200円/1本
ということになり、「差はあまりない」が正解です。
ただし。
クリンチャーの場合は選択肢が豊富で、もっと安いタイヤを選ぼうとすればいくらでも? 安いタイヤがあります。チューブも同じです。
対してチューブレスの場合、いくらでも安いタイヤなどまず内という事を考えると「正しくもあり、正しくもなし」というのが正解なのかもしれません。
以上、チューブレスタイヤのデメリットについて科学的な検証? を行いましたが、結果としては
「シーラント」の存在をどう捉えるか、という事に尽きるような気がします。
填めやすいとか填めにくいなんていうのは人に依っては一生知る事もない場合もありますからね。
買い替えたらショップで填めて貰えば良いのです。
自分でやるのが面倒ならカネで解決するのが大人というものでしょう。
あと、パンクなんて都市伝説であって、普通は一生経験しません(たぶん)。
ということで、やっぱり問題はシーラントだけ。
でもまあ、これは「その時」になるまで棚上げにしておくべき問題のような気がします。
そう。「その時がくればその時考えればいい」んです。
ということで、問題無し?
デメリットを考えるよりもメリットを考えましょうよ。
それが人生を楽しむ最良の方法です。
考えてみて下さい。
「なんだか楽しそう」じゃないですか、未経験者的な視点から見たチューブレスという未知のカテゴリーって。
いろいろあるけど、それでも使ってみたいと思うかどうか、なんですよ。
理屈的に安全性のメリットはあるとして、それでも「なんか嫌だな」なんて思ったら使いませんって。
「新しいもの好き」のこころの琴線に触れるんですよ、自転車用チューブレスタイヤって。
まあ、そういうわけでさっそく(ようやく?)走り出してみようじゃありませんか。
もちろん漫然とは走りません。
いくつかのポイントについて、私のセンサー能力の全てを駆使してチェックしてみたいと思います。
そのポイントとは?
1)本当にチューブレスタイヤの乗り心地はいいのか?
2)200g弱重くなる事により、今までより上りはしんどくなってしまうのか?
3)シーラントなどで外周部が重くなったが、果たしてジャイロ効果の変化は体感できるのか?
週末ライドでその回答を得ました。
1)本当にチューブレスタイヤの乗り心地はいいのか?
一言で言い表すなら「未体験ゾーン(へ)」です(初代ソアラか(・∀・))。
なのではっきり言いましょう。
乗り心地は「すっげーいい」です。
ホイールをMAVICのアクシウム/アクシオンからCampagnoloのZONDA/Continental GP4000S2に換えた時には「何が変わったのかさっぱりわからない」と感じた、いや感じなかった? 要する「ほとんどの人が標準ホイールからカンパのゾンダに換えた時に感動を覚える」とまで言われているホイールに大してまったくと言っていいほど違いを感じなかった鈍いこの私が、乗り始めてたった十数メートル走っただけで「これは!」とまさに感動するほどの違いを感じるくらいなので、そりゃあZONDAで感動する人は卒倒するくらい違いをかんじるのではないでしょうか。
それくらい違います。
クルマで例えるなら、トヨタの86(私が乗った事があるのはマイナーチェンジ前の去年のモデル)からランドローバー Discovery(新型=現行)に乗り換えたような感覚です。
言い換えるなら「二度と旧セット(Fulcrum Racing ZERO Carbon/Continental Grand Prix 4000SⅡ)なんか使いたくない」と。
それくらい乗り心地が改善しました。
ただし!
「だからチューブレスは乗り心地がいいですよ」と言い切れるかというとさに非ず。
まず、乗り心地がいいのはチューブレスにしたからなのか、Continental Grand Prix 4000SⅡがMAVIC YKSION Pro USTに比べてかなり硬い乗り心地だったのかは基本的に不明です。これはGP4000S2のチューブレスタイヤが出ないことにはなんとも言えない気がします。
そして空気圧。
GP4000では前後とも7barで運用しておりました。が、YKSION Pro USTは私の体重だと6barくらいが適正値。なのでそれで走っての感想です。
つまり1barではありますが、空気圧の違いがある程度影響している可能性があります。
今さらスプロケット取り替えて、同じ空気圧にして比べるとかめんどくさい事はできませんしね。
でも、空気圧の差だけでは説明が付かないような圧倒的なフィーリングの差がありますので、「チューブドクリンチャーとは全く違う」という表現を敢えて使いたいところです。
違いを表現するのは非常に難しいのですが、なんというか「ヌルヌル走る」感じとでもいいましょうか。
旧セットで路面の悪いところを走ると、まさに路面の悪さがそのまま「ガタガタ」と体に伝わる感じだったのですが、チューブレスセットの場合、道路に一枚絨毯を敷き、その上を走っているような感覚というとまあ明らかに言い過ぎかもしれませんが、「ガタガタ」が「ザラザラ」に近く感じるほど違うのは確か。
これも路面の荒れ具合に依りますけど、いつも走っている道の路面感覚は結局体が覚えていますので、その違いは体が一番知っているというか。
ちなみに同居人もまったく同じ感想でした。
実はホイールを換えたこと以外に特に何のインフォメーションも与えていなかったのですが、走り出して最初の停車時に食いつくように「何このタイヤ?」と言うではありませんか。
ちなみに同居人はDura AceのWH-9000-C24-CLとGP4000S2のセットからの変更でした。
曰く「にゅるにゅるした感じ」、「超乗り心地がいい」、「(路面に自転車が)ペッタリくっついているのい抵抗なく転がっているようなヘンな感じ」だそうで。
いや、まったく同様の感触です。
という事で、今のところ乗り心地に関しては手放しで褒める言葉しか浮かんできません。
次。
2)200g弱重くなる事により、今までより上りはしんどくなってしまうのか?
はっきり言いましょう。
どんなホイールだろうが、上りはしんどい、と。
差?
まったくわかりませんな。
というかまったくかわりませんな、しんどさは。
走行フィーリングは確かに激変しましたが、坂が楽とかしんどいとかはまた別の話って感じです。
もっとも、グリップ感が終始はっきりと体感出来ているので、むしろ「踏んだだけ上っている感」があって好ましくなった気がします。
とはいえタイムトライアル的なヒルクライムとかしていない私の「上り」は、ただいつものギアでいつものように、有酸素運動の範囲に収まるように淡々と上るだけです。ですからたとえバイクを買い替えて2kg軽くなったとしても上りのタイムが変わるような事はないわけです。
結論として、上りのしんどさはホイールなんかまったく関係なく、その時の体調のみに左右されるという感想です。
次。
3)シーラントなどで外周部が重くなったが、果たしてジャイロ効果の変化は体感できるのか?
はっきり言いましょう。
私が出せるスピードでは、ジャイロ効果の違いなどまったくわからない、と。というか、意味などないと。
私の場合、「ちょっといいペースだな」というのは25km/h巡航。
無風平坦路で30km/hを数分維持するのがやっとくらいの走りですからね。そもそもそんな乗り手の意見など参考にはならないでしょう。
最後。
4)そもそもロングライドで疲労は軽減されるのか?
はっきり言いましょう。
「まだ試してないからわからない」
ただし、予想は出来ます。
明らかに疲労は軽減されるだろうと。
だって、ハンドルに伝わる路面の振動が半減以下? だと感じるほど軽減されています。
路面が悪いところに入るとサドルから腰を浮かせたりしてお尻側の対策は可能ですがハンドルを離すわけにはいきませんので手はずっと路面の悪さを吸収してしまっていたので、それが半減するとなると疲労は減りこそすれ増えるなどという事はあり得ません。
さらに今までサドルからいちいちお尻をあげていたところでも、さほど気にせず走れるとなると、その対応に関わる精神的な緊張も軽減されるわけですからロングライドになればなるほど差は開くはず。
もう一つ付け加えるならば、サドルからお尻を上げる際は立ち漕ぎもしくはコースティング(滑走)でやり過ごしていたわけですが、それが減るとなると筋肉疲労が軽減され、かつ平均速度も多少なりと上がる事が予想されます。
これはまあ、今週末に100kmくらいのロングライドを予定しているので、そこで実感してみたいと思います。
以上、ほんの40kmほどですが、実際に走ってみてのチューブレスタイヤに対する第一印象です。
この先乗り込めば、さらなる違い、あるいは違わない部分などももっと見えてくるかもしれません。
まとめると、そこそこ上りのあるいつものコース(獲得標高が1000mくらい)を走ってみても、第一印象では、ホイール(とタイヤ)を重いモノに交換した事によるネガはまったく感じなかった。それより乗り心地の良さで走るのがちょっと楽しくなったと思える程です。
一番の理由だった「下りでパンクしたら死ぬかもしれないと考えると下るのが怖い」という感覚はすっかりなくなりました。
単純ですな。
これはまあパンクしなければ問題は無いわけですからチューブドであろうがチューブレスであろうが一緒なのですが、恐怖心で萎縮する事がなくなった事はメリットだと考えたいところ。
何より同じ速度で下りのカーブを曲がっても、タイヤから伝わるグリップ感が全く違う事による安心感は今までなかったものなので、サイクリングがより楽しくなったのは間違いない「違い」だと思います。