「フランスパン、焼いてますか?」
「いやいやいやいや」
そんな事をいきなり尋ねられても、以前の私ならそう答えていたに違いありません。
「ご飯、炊いてますか?」とか、いやむしろ
「自炊、ちゃんとしてますか?」とか、あるいは
「食事の前にはきちんと手を洗ってますか?」的なある意味習慣になりうるものと同列に尋ねられても、さすがにフランスパンはないわ〜という感じですもんね。
しかし、今の私は違います。
「フランスパン、焼いてますか?」
そう尋ねられたらこう答えちゃうに違いありません。
「もちろんですとも!」
力強く!^_^
ということで、ホームベーカリー導入後、いろいろなパンを作って、現時点での一つの回答が「私は(ホームベーカリーで作るパンの中では)フランスパンが一番好き」というもの。
なお次点は「熟成食パン(パン・ド・ミ)」です。
考えてみると「フランスパン」ってものすごくアバウトな名称ですよね。
でも「そもそもフランスパンの定義とは?」なんて考え始めると、ホームベーカリーで作るフランスパンの位置づけ問題なんかもややこしくなってきそうなので、お気楽なホームベーカリーネタとどんどん乖離しそうですし、そのへんは何も考えずに「バゲットとかバタール的な、ああいう外が固い系のやつですよ」みたいな理解(ノリ)で行こうと思いますのでツッコミ属性がある方は抑え気味で読んでいただけると幸いです。
で、フランスパン。
まあ、ホームベーカリーで焼成までやるということは、何を作っても山形食パンの形状になるわけです。
つまり「フランスパン」と言っても、見た目は「山形食パン」なので、微妙な違和感というか私の中にあるツッコミ属性が覚醒するのを自覚することになるわけですが、ホームベーカリーを日常的に使い始めた私には、すでに「パンとは見た目ではない」というイニシエーションが(ホームベーカリーメーカーによって?)施されていますので「ンなもん、フランスパンじゃねえ!」
ペチッ。
などという出来上がったパンを地面に叩きつけるような衝動は生まれようもございません。
むしろパン屋の店先でバゲットとかバタールなんかを見ると「ああ、そう言えばフランスパンってああいうイメージだよね。うんうん、そうだったそうだった」と常識の方を自分に言い聞かせるような状況になっていたりします。
だがしかし。
私はもうパン屋の店先のバゲットやバタールを見ても「美味しそう。飼って帰ろうかな」と思うことはなくなりました。なぜなら、山形食パンの形をしているけど、フランスパンは自分で作れるので。あと、自分で作ったほう断然美味しいので。
これはもはやパン屋への挑戦状、いや、ホームベーカリーにチャーム系の魔法をかけられているにちがいありませんが、本人はとっても幸せなので全く問題ありません。
というわけでホームベーカリーで焼くフランスパンのお話です。
通常の普通の食パンは基本的に「強力粉」ベースで焼きます。
でもマニュアルを読むと、材料のところにフランスパンは「フランスパン用準強力粉」というものを使うと書かれています。
「フランスパン用準強力粉」
なんてピンポイントな小麦粉なのか。
私はそう思いました。
「フランスパン作るぜ!」と意気込んで、ワクワクしながらメニューを読んだ私は、ちょっとがっかりしました。
ハードルが高い。
いや、小麦粉買うだけなんですけどね。
でもフランスパン用準強力粉なんてコンビニに売ってません。
いや、普通の強力粉もあんまり売ってないんじゃないかとは思いますが。
今春引っ越した結果として、我が家はターミナル駅から徒歩5分という文化的な? 環境に住むことになりました。
何が便利って駅の周りには生活に必要な施設が整っているんですよ。
もちろんスーパーもあります。
というか、通勤経路上にコンビニだけじゃなくてスーパーマーケットがあるというのはいかに財布に優しいかというお話ですね。あとその日の夕食用の生鮮食品が毎日買えるってものすごく便利です。
今までは生鮮食品なんて週末にまとめ買いするとか、冷凍ものを使うしかない生活でしたからね。
まあ、生協さんの宅配を利用していたので、そこで生鮮品はある程度購入していたのですが、週一回ですからね。
仕事時間は夕食のメニューを考える時間です。食べたいものをじっくり考えられるって素晴らしい。
て、材料は帰りがけにスーパーマーケットに寄って買う、という、突発的なメニューに柔軟に対応可能でかつ無駄のない生活がこれほど快適だとは……。
以前は備蓄食材の範囲でメニューを考えるしかなかったのでパターンが決まってたんですよね。
あと、圧倒的に魚を食べる回数が増えました。
引っ越して良かったぜ、と思える変化でございます。
なので買いだめとはもはや無縁の生活になってしまいました。
徒歩3分程度の場所に我が家のパントリーがあるようなイメージですからね。
おっと、快適スーパーライフを語るエントリーではないことを思い出しました。
本題に戻りましょう。
そんなわけで我が家のパントリー、すなわちご近所にあるスーパーマーケットに、お目当てのものがあるのかどうかをチェックしに行きました。
ありました。^_^
というか、最近のスーパーマーケットって、パン用の材料が結構豊富に揃ってますね。地域性なのか、全国的に自宅パン職人がふえているのかまではわかりませんが。何しろ以前はスーパーマーケットにはほとんど行かなかったので。
で、さっくり買って帰ったのかというと、実はさにあらず。
近所のスーパーのパン用食材の種類などをチェックしただけで、購入には至りませんでした。
理由は「リスドォル」がなかったからです。
「準強力粉」というものは売っていましたのでそれを使えば焼けるのですが、いろいろと情報をチェックしてみて「買うならリスドォル」だと決めていたからです。
フランスパン用の準強力粉としてはスタンダードだとされているのが「リスドォル」。
なので「じゃあ、見せてもらおうか、その基準の味とやらを」と思った私を誰も責められはしないに違いありません。
ま、ミーハー気質が顔を出したという感じでしょうか。
試しにフランスパンを作ってみるという軽いノリだったので、別にリスドォルじゃなくても買って良かったんですが、小麦粉的なものって、一袋買うと数回分あるんですよね。
そこにあったのも1kgの袋でしたから、4回分です。
「これはちょっとアレだな」と思っても、後3回はその「アレ」を作らないといけません。
まずい、なんてことはないのでしょうけど、やや不安がありました。
さらに言えば、というか本当の理由は「ムリに今日かわなくても、明日だったらリスドォルが確実に買える」とわかっていたからですね、はい。
というのも、実は通勤経路上にデパートがあるんですよ、これが。自宅側じゃなあくて職場側、つまり京都なんですけど。
そのデパ地下には「富澤商店(TOMIZブランド)」という、ホームベーカリー職人?なら知らぬ人はいないのではないだろうか? などと思えるほど有名なパン材料店(なのか?)が入ってまして、リスドォルはそこで買えばいいだけの話です。
というわけで、ご近所スーパーでは「準強力粉」を買わず、手ぶらで自宅に帰った私は、早速フランスパンを焼くことにしました?
ナンノコッチャ?
ですよねー。
でも私は混乱しているわけではございません。
実はメニューにはこう書かれていたのですよ。
「準強力粉250gの代わりに、強力粉220g、薄力粉30gでも作れます」
と。
「作れるんかい!」(^_^;
これだと手持ちの材料で、かつ一回こっきり的に作れますからね。
もちろんこれ、知っていたのですが、最初からリスドォルがあればそっちのほうが確実じゃないですか。
それにしても意外に単純な配合変更で作れるとは……。
しかも薄力粉は30gでいいんですからね。薄力粉成分、たった12%ですよ。
そういうわけで、とりあえず「リスドォル」は明日買うことにして、今日のところは「代替ミックス粉」で作ってみよう、という事にしたのです。
レシピどおりの配合で作ってみました。細かい正確なのでデジタルスケールを0.1g単位にして、0.1までピッタリ合わせて配合しました。強力粉220.0g、薄力粉30.0gに。
焼きました。
そして焼けました。
蓋を開けました。
「ほほう、これが噂の? フランスパンか……」
ケースに入っているのはどう見ても普通の山形食パン……。
ケースから取り出しても普通の山形食パン(の形)。
ただし、普通の食パンとは明らかに感触が違いました。
まず、ケースから取り出しにくい。
普通のパンは二、三回揺するとスルッと出てきてくれるんですが、フランスパンは同じように揺すってもスルっというわけには行きません。
どうやらコネ用のハネの引っ掛かりがきつい模様。
出てきたパンはあからさまに表面が堅い感じ。
ナイフを入れると更に表面の皮の部分、いわゆる食パンの耳に当たる部分(クラスト)の硬さが半端じゃない。
これはまさにバタールとかバゲットにナイフを入れる時のあの感触です。
「これは! 形が違うだけでマジでバタール的なものなのでは?」
いや、それを焼いたんですがね。(^_^;
で、食べてみました。
「これは!(こればっかりや)」
そう、「うま!」でございます。馬ではありませんぞ。
ええ、焼き立てフランスパン、美味しゅうございました。
耳(クラスト)がまたとっても美味い。
名称とかもはやどうでもいい、私はこのパン、気に入ったぜ!
とまあ、そういう感じで、フランスパン専用準強力粉であるところの「リスドォル」ではなく、強力粉と薄力粉のミックス粉で作ったフランスパンが、それはそれは気に入りました。
同居人も私と同意見。
葉が丈夫なウチは、我が家の基本のパンは、このフランスパンでいいんじゃね? ということにあいなった、というわけです。
なお、その後迷わず購入したリスドォルですが、もちろん美味しいフランスパンが焼けました。
でも、一つ問題があるのです。
その問題とは……。
強力粉と薄力粉のミックスで作ったフランスパンと、味の違いがあんまりわからない……という……。
ええ、私側の問題ですけどね。
フランスパン、味も気に入りましたが、それ以外にもとっても「良い点」があるんです。
それは、準備が異様に簡単だ、ということ。
どれくらい簡単かと言うと、「専用ミックス粉」に準じた楽ちんさです。
なぜなら、フランスパンレシピって、4つしか行程がないんです。
1)水190cc
2)リスドォル 250g
3)塩 4g
4)ドライイースト 1.5g
これだけです。
これが「専用ミックス粉」だと
1)水 190g
2)専用ミックス粉 一袋
3)ドライイースト 3g(または1.5g)
の3行程
リスドォルを250g計量する手間と、塩を4g計量する手間が加わるくらいです。
でもこれくらいだと手間でもなんでもないんですよね。
普通の食パンだと、これにバターと砂糖の計量とスキムミルクの投入が加わります。
スキムミルクはともかく、実はバターの計量がチトめんどくさい。
まあ、どちらにしろご飯を炊くよりフランスパンを焼く方が断然簡単です。
加えて、フランスパンは実は材料費が安い。
過去のエントリーに書いたとおり、私が作っている普通の食パンの場合、一斤あたりのコストは210円プラスアルファです(タイガー ホームベーカリー専用 食パンミックス KBC-MX10だと一斤あたりは240円)
これが、フランスパンだと一斤あたり約110円なんですよ。正確には107.08円。
もちろんそれぞれ粉の仕入れ値に大きく左右されるので一概には言えませんが、材料費にスキムミルクとバターが要らない時点でフランスパンレシピの方がローコストなのは自明の理。
もともと日清製粉のリスドォルというフランスパン専用準強力粉が庶民的な価格だったということもありますね。言い換えるとパン用のちょっといい強力粉は(リスドォルと比べると相対的に)高い、ということでもあります。
安い、速い(簡単)、美味いと三拍子そろったホームベーカリーで作るフランスパン、「もうやめられまへんなあ。(*´ω`*)」でございます。