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★83から60? いいえ、結局は35【Nikon COOLPIX A900 レビュー】プロローグ

カメラ

関西の人が夜中にどうしてもミスタードーナッツのドーナツが食べたくなることがあるように、
関東の人が夜中にどうしてもいなり寿司が食べたくなることがあるように、
私の場合は夜中にどうしても高倍率ズームレンズ搭載のコンパクトデジタルカメラが欲しくなることが(ごくたまに)あります。

いや、「欲しい」とはちょっと違います。
「ああ、なんか高倍率ズームのコンパクトカメラが必要な気がする」という天啓です。
「うむ。そういうのはあるよね。ボクの場合はスマートフォンだけど」などと膝を打っていただけるのはデジタルガジェットジャンキー仲間だと認定させていただきましょう。

因みにここで言う高倍率ズームとは、一眼レフやミルクス=MILCS(Mirrorless Interchangeable Lens Camera System) などのレンズ交換式カメラによくある、135判換算で24mm~135mmとか28mm~300mmとかのケチな倍率ではなく、最低でも20倍、できれば30倍以上の倍率のズームレンズの事です。
レンズ交換式カメラの高倍率ズームは所詮「便利ズーム」の範疇です。「高倍率ズーム」などと呼ぶのもおこがましい(言い過ぎですね、はい)。

私もこのジャンルのカメラを一台くらいは防湿庫の番人にしているのですが、ここのところその番人が不在の状態がつづいておりました。
なぜなら「滅多に使わないから」です。
そもそも私は普段、望遠系の焦点距離をほとんど必要としていないのですから、そりゃ出番なんて滅多にありません。
たまにあってもスーパームーンを撮る、とか日蝕や月食を撮るとかの天体イベント系がメイン。すなわちベランダでしか使わないカメラです。
そりゃ、ある程度経ったらリストラしたくもなりますよね。

私が直近まで所有していた「防湿庫の番人」こと高倍率ズームレンズ搭載カメラは、NikonのCOOLPIX A900でした。
このカメラは実に凄かったんです。
なにせ135判換算で24mm~2000mmをカバー。200mmのミスタイプじゃないですよ? 2000mmです、2千ミリ。
倍率83倍。
圧倒的な望遠力? をバックにシーンモードとして「月モード」とか「鳥モード」とかありましたっけね。鳥モードではカラスとスズメしか撮りませんでしたけど。

このカメラがすごいのは、望遠側が2000mmという天体望遠鏡的な望遠域に片足を踏み入れているにも関わらず、広角端が24mmという、超広角の入り口あたりまでカバーしている点でしょう。
まさに高倍率ズームカメラの決定版とも言えるモデルでした。

P900は3年ほど前に購入したカメラなので、当然ながら既にNikonのラインナップにはありませんでした。
寂しく特設ムービーへのリンク? があるのみです。
なんというか、過去の栄光を引きずっている感があってペーソスをかんじるというか、もっと言っちゃうと友人の遺影をみるような感じですかね。

で、後継モデルですが、どうやらCOOLPIX B700というモデルがP900系の唯一の生き残りというか、「その代わり」のモデルのようです。
後継機と呼ぶには劣化版、いや、もはやNikonにCOOLPIX最高峰であるPラインが存在しない今、劣化版も何もあったもんじゃありませんけど。
B700はズーム倍率60倍。
いや、60倍でももの凄いと言うべきなんですが、P900の83倍っていうのを体験しちゃうと「なんだ60倍か」なんて思っちゃうんですよね。
感覚がマヒしているとはまさにこういう事を言うのでしょうね。
B700も冷静にみればものすごいスペックです。
なにしろ135判換算で24-1440mm相当をカバーするんですから。

じゃあ、B700を買うか。

とはならないのが私のダークなところです。
自分でいうのもなんですが。

理由は「B700がすごいのは認めるけど、あからさまなP900の廉価版を買うのは業腹だから」です。
屈折してますね。
あと、無いものねだりです。
買わない言い訳ってやつですね。
でも、そうなんです。
理屈じゃなくてこういうのはハートの問題です。

B700はやめた。
じゃあ、他のメーカーで……ともならないのが私のアホなところ。
B700しかない事を理解した時点で
「面倒だな」
って思っちゃったんですよね。
「やめやめ」
って感じで。

そんな感じでNikonのサイトを閉じようとした時、何気なく目を留めたのが、A900というモデル。

高倍率ズームのコンパクトカメラと一口にいいますが、実は大まかにわけて2つのグループに分かれます。
少なくとも私は2つのグループに分類しております。
一つは前出のP900やB700のような「一眼レフっぽい形をしたしっかりとしたグリップがある比較的でっかいカメラ」のグループ。
もう一つが薄型ボディで沈胴式レンズを搭載したグループです。
でっかい系がやや「本気入ってます」的な立ち位置なのにくらべ、沈胴系は普段使いにつかえるカジュアルさ、コンパクトさが売り物で、たぶん、いや間違いなくそっちの方が主流のはずですね。
で、そのA900は沈胴系の高倍率ズームカメラです。

もちろん沈胴式のスリム型カメラなのでズーム比が83倍とか60倍とかいう「トンデモ」スペックではありません。
それでもA900は35倍を確保。レンズ交換式の「便利ズーム」とはレベルが違う存在です。

「35倍か」

今回の「高倍率ズーム選び」ですが、正直に言って特にこれという被写体、つまり目的があったわけではありません。
夜中に突然高倍率ズームが手元にないことに気付き、「これは不味いぞ。なんか一台欲しいかも」なんて気になっただけの機種選びです。

「沈同型でもいいんじゃね? 大げさでない分、普段持ち歩いたりしやすいし、P900系より出番は圧倒的に増えるかも」
なんて思った私は、その段階でA900のスペックを確認。
28mmスタートの35倍だったらやめよう。
でも24mmスタートの35倍だったらポチろう、という覚悟を持って。

そんなわけでやってきましたA900。

現行機種ですが、調べてみると発売はずいぶん昔ですね。
※2016年10月28日発売らしいです
こういう所をみてもコンパクトカメラが冬の時代を迎えているのを感じます。
Nikonにいたっては2017年に発売したコンパクトカメラってW300一機種のみというお寒い状況です。
マジで寂しい。(´д`)
毎週のようにどこかのメーカーがデジカメの新製品を発表していた時代が懐かしいです。

というわけで、次回はA900をガッツリと語りたいと思います(たぶん)。

それにつけても失ってわかるP900の存在感。
だってP900のようなぶっ飛んだカメラは、ひょっとするとしばらく、いやスマートフォンがぶっ飛んでくるともう二度と出ないのかもしれませんしね。
そう考えるとリストラなどせず、手元に残しておくべきだったかな、などと反省をしております。
※ちなみにネットをチェックしてみるといまだに流通在庫はあるようです。でも今さらなので買いませんけど。(´д`)