題して
「PORTABOOKは簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシンなのか?」
です。(初出:2016/11/29)
まあ、平たく言えば総論ですね。
なお、非常に長いので、3行以上は読めない人はやめておいた方がいいと思います。もっとも既に3行を越えていますが。
話を戻しましょう。
使用しているソフトウェアの感想は基本的にPORTABOOKの手柄ではないし、PORTABOOKが負うべき責任もないので基本的に割愛して、ここではPORTABOOKが持つ個性についての話だけということにしておきます。まあ、当たり前ですね。もっともPORTABOOKの個性に起因するアプリケーションソフトやOSの問題点などはPORTABOOKが持つ個性に入ると判断します。まあ、当たり前ですね。
それからこれは個人的にわかりやすいので、pomera DM200との比較も交えた話が多くなるかもしれませんが、ご容赦ください。
まずは「執筆マシン」としての再評価です。
物理キーボードの存在と執筆用の最強アプリケーションソフトが選べる時点で、「執筆マシン」としては合格です。
もっとも、それだけの条件であれば、ほぼ全てのラップトップ(ノート)PCとデスクトップPCも同じ評価となります。
なのでPORTABOOKの個性を際立たせる為には、条件を付加していく必要があります。
その要素の一つはもちろん「可搬性」です。
では「可搬性が高い執筆マシン」としての評価はどうか?
分離型ではない固定式の物理キーボードとフル機能のWindows10の組み合わせを持つモバイルPCとして、PORTABOOKは間違いなく最良の「可搬性が高い執筆マシン」の一つであると言えます。
何しろフットプリントは8インチのiPad miniとさほど変わらないサイズです。
もちろん厚みは4cm近くありますのでiPad miniとは取り回しが同じわけではないのですが、可搬性という点で考えた場合、つまり運搬用の鞄の選択肢はデバイスの厚みよりもフットプリントが小さい事の方が多くなります。
もちろん、フットプリントが小さく、かつ薄い方が可搬性は上がるに決まっています。
であれば、それこそ8インチサイズのWindowsタブレットに、Bluetooth接続できる小型のモバイルキーボードを組み合わせればいい。ワザワザ分厚いデバイスより小さくて軽いのでは? そう考えるのは無理もありません。
現に私もこの組み合わせは何度も試しているからです。
なお、androidタブレットでもそれこそiPad miniでもなくワザワザ「Windowsタブレット」と記載したのは、主にというか、ほぼ執筆ソフトウェアの問題です。なぜならWZ エディタに代わる機能を持つ執筆ソフトウェアは残念ながらまだ存在していないからです。なお、それなりに使えるソフトウェアはありますが、私の要求を満たすものはまだない為、これは個人的な問題と言って差し支えありません。もっともandroidやiOS端末にあるソフトでOKなのであれば、pomera DM200でもOKなのでは?とも思いますが、まあ好みや要求は人それぞれなので断言は控えたいと思います。
しかし、このWindowsタブレット案は、結局いつも挫折しています。原因はいつも同じです。ではなぜ何度も試しているのか? それは私がアホだからです。
なので、条件をもう一つ付け加えましょう。
それは「簡単でストレスなく使える事」です。
すなわち「簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシン」である事が求められるわけですが、セパレート型の多くはこれがちょっと苦手です。
まずは完全な単体のタブレットと、折り畳み式や薄型など独立したデバイスとしてのキーボードを組み合わせる場合ですが、これはキーボードと本体を個別に設置するという「手間」が生じます。
電源もキーボードと本体の両方をONにする必要がありますし、タブレットを立てかける為のスタンド(多くはカバーがそれの役目を負うのでしょうけど)を組み立てる必要も生じます。
これ、簡単なようですが、実はめんどくさいんです。
そもそもバッグから取り出すブツが物理的に2つある時点でめんどくさい。
さらに、この方式の場合、ちゃんとした固定台、つまりテーブルなどがないとまともに機能しません。文字通りラップトップ(膝の上)では使えない事が多いでしょう。
つまり「シチュエーションの得手不得手がある」時点でストレスになります。つまり却下です。
次に分離型でも純正のキーボードと一体化しているもの。具体的にはクリップ型のヒンジなどで、クラムシェルタイプの普通のノートPCのように使えるタブレットです。
私も「これこそ決定版じゃね?」といくつかつまみ食いをしたわけですが、どれもダメでした。
全てのこのタイプを試したわけではないので全部が全部ダメだとは言いませんが、全てを試す気にはなりません。
ダメな理由は次の2点。
・キーボードはBluetoothで接続されるが、接続状態が不安定になる事がけっこうある
・そもそもキーボードの出来が悪い
二つ目は執筆マシンとしてそもそもダメなポイントです。でもこれがまともな製品は本当に少ない気がします。
つまり分離型というのはそういう感じで、結局「簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシン」にはなり得ませんでした。
そこで、PORTABOOK。
あまりに高価だと感じた貯め、全くもって試そうとも重なかった端末です。
でも、冷静に考えれば、価格はあの「簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシン」に近かったVAIO Pの価格と比較すると、異様に高いわけではないのです。
問題は、VAIO Pにはモノとしてできの良さというか「所有する満足感」があるデザインや色、質感などが詰まったデバイスであったのに比較して、PORTABOOKはおよそ「ぱっと見ただけで安っぽい」という、見た目の売りが全く(いや、ほとんど?)無かった事でしょう。
とはいえもはやVAIO Pは存在しません(存在はしてますが、中古でしか手に入らない過去の遺物ですから)。なのでここではVAIO Pと比較するのは止めておきましょう。
PORTABOOKは「モノとしての良さ」ではなく、その愚直な機能のみで評価すべきでしょうから。
まあ、いつものように前振りが長くなりましたが、「簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシン」というのは、ほとんど見当たりません。
強いて言えばMacbookやMacbook Airに代表される10~13インチくらいまでの薄型のノートPCがそれにあたります。ではそれを買えばいいじゃないか、という話なのですが、MacbookにしろWindowsノートにしろ、ノートPCというだけで、気分的に「重い」んです。
クラムシェル型のノートPCなら、取り出してディスプレイを開くだけで使えるようになりますから、「簡単」です。
昔と違ってパワーも充分ですし、あまり安価な機種でなければ、キーボードのできのよいものもたくさんありますから、「ストレスなく使え」るとも言えます。
可搬性は薄型なので、フットプリントが合致するバッグを選べばOKでしょう。
好みのアプリケーションが使えるWindowsですから「執筆マシン」としては文句在りません。
ですがpomeraのDM200を使ってしまうとつくづく感じるんです。ノートPCは重いな、と。
物理的な重量ではなく、既に書いたように気分の問題です。
なんというか、PC然としている佇まいそのものが「重い」というか、そんな感じです。
その点でPORTABOOKはビミョウですが「PC感がない」デバイスに思えるんです。これは私の勝手な思い込みなのでしょうが、そう感じる物は仕方ありません。
また、既に書いた通り、私は多少厚みがあっても、フットプリントが小さい方がバッグを選ばず、可搬性としては高いと感じているので、PORTABOOKの8インチタブレット並の小ささは大歓迎なのです。厚みがあるといっても10cmもあるわけではないので4cm程度なら許容範囲なのです。
つまり言い換えるならば、フットプリントがあまり気にならず、PCである事に気分的なストレスを感じない人ならば、それはもう、いわゆるUltrabookを代表とするモバイルノートを使えば幸せになれると思います。
ではなぜ、そんな素晴らしいモバイルノートがたくさんあるのにもかかわらず、pomera DM200のような相当に低機能なデバイスが一部で支持され、それなりに売れているのか?
これはやはり「気軽」「重さ」という気分的なハードルが、執筆マシンを使用する側にとっては意外に重要な要素だからではないでしょうか。
少なくとも私はそう思います。DM200を一月ほど使用した後でPORTABOOKを使いはじめて、改めてその2つのキーワードに気付き、かなり重要な要素なのだなと感じます。
さて、PORTABOOKですが、これは「簡単にストレスなく使え、可搬性が高い執筆マシン」としての選択肢の一つであるのは間違いないと思います。
ただし、それなりの妥協をしなければならないと書かざるを得ません。
検証しましょう。
◆PORTABOOKは「簡単」か?
簡単ですが、妥協が必要です。
PORTABOOKはノートPCと違って取り出してディスプレイを開いただけでは使えません。折り畳まれたキーボードを展開するという手間が必要です。自動開閉ならばPCと全く同じ使い勝手になるのですが、これがけっこう「重い」気分にさせてくれます。手動であっても流れるようにスムーズにかつ軽やかに開閉できればいいのでしょうが、PORTABOOKのそれは操作にエレガントさがありません。開閉機構などはよく練られていて素晴らしいと賞賛する事に対してやぶさかではありませんが、「開閉するのが快感」になるほどのチューニングなどはなされておらず、けっこう「えいや」な作業を強いられます。かなり慣れてきた今でも気分的に毎回構えてしまうので、これは「簡単」とは言い難いものだと思います。
◆PORTABOOKはストレスなくつかえるか?
前述したキーボード展開もストレスの一つになりますから、これもダウトです。
またあくまでもWindows PCなので、シャットダウンした状態から電源を入れて即座に使えるわけではありません。PORTABOOKの起動時間、すなわち電源を入れて、デスクトップが表示されるまでの時間は、概ね33秒平均です。
スリープからの復帰のばあいは大幅に短縮されますが、こちらはバッテリをけっこう消費するようで、バッテリ問題がストレスになります。モバイルバッテリがあるので実際問題としては私の使い方では大丈夫ですが、そうなるとモバイルバッテリをバッグから取り出してusbケーブルで接続するというめんどくささがストレスになります。それだったらシャットダウン→起動で多少待たされる方がいいかな、というのが現時点での私のPORTABOOK運用法です。
◆PORTABOOKは可搬性が高いか?
これについては○でいいでしょう。
◆PORTABOOKは執筆マシンか?
これも問題はありません。
つまりPORTABOOKは「惜しい」存在なのです。
するとDM200の「軽やかさ」が懐かしくなるんです。
横長のデバイスはディスプレイを広げても威圧感がなく、ここで心理的な「重さ」を感じることはありません。
DM200の場合、前機種のDM100よりも起動時間が長くなってしまったとは言え5秒以内には文章を書き始めることができますから、PCであるPORTABOOKとは次元が違います。
この手の「とっかかり」のストレスが無いと言うことは重要な性能の一つですから、DM200はその点で良いデバイスだと痛感します。
例えば、DM200を使っていた時は、電車の中でもちょっと取り出して、忘れないうちに思い浮かんだ事を書き込んでおこうと思えましたが、PORTABOOKだと「キーボード広げたりするとその行為が目立つし、起動にも時間がかかるし、まあいいか」と考えて一度も鞄から取り出したことがありません。取り出す気にならないという方が正しいでしょう。つまり私の中ではPORTABOOKは精神的にはpomeraというよりはモバイルノートPCに近い位置づけになっているんです。
これはゆゆしき問題です。
なぜって、「こんな面倒なギミック(キーボード展開ギミック)でストレス感じるんだったら、もうMacbookで良くない? Macbookで仮想化PC環境使えばWZ Editor(正確にはWZ Writing Editor)走らせられるし、そっちのほうが面倒なくない? そう言えばMacbookって最近リニュアルしたよね。どれどれ」という感じでさっきAppleのサイト見に行っちゃったもんね(てへ)。
で、結局Macbook買って、最初は新品効果? で持ち歩くんだけど、結局上記の理由(気分的に「重い」)が発症して持ち出さなくなり、もっと手軽な端末ないかなあ、なんてWindowsタブレットとかを物色する図が目に見えますね。我ながら「アホが陥る底のない負のスパイラル症候群」でございます。
そういうわけで「無いものねだり」を承知で敢えてKING JIMさんに要望すると
「DM200の筐体にWindows10を乗せて、XMC200という名称で出せ」という感じです。
起動時間は頑張ってもらってシャットダウン状態から20秒くらいに短縮できると超嬉しいですが、現行のXMCより長くならないなら可とします。
メモリやストレージはXMC10と同じでオッケーです。
出張マシンXMC10と違い、XMC200(仮称)は「執筆マシン」なので、IO関連は当然省略可能です。
できればUSB端子とHDMI端子があればもはやイマドキの出張マシンとしても及第点だと思います。
スペース(というか筐体の厚み?)的に厳しいのであれば、フルサイズUSBが二個でもオッケーです。プロジェクタなどへの出力はUSBアダプタで補ってもらいましょう。
もちろんファイル連携に必須なWiFiとBluetoothは必須。むろん有線のLANポート、RJ45などいりません。
ディスプレイはWindows10の要求する最低解像度でけっこうです。
むしろXMC10のようなTN液晶じゃなくて、IPS液晶を奢ってください。もちろんノングレアで。
テキスト専用機だからこそ、液晶の見やすさは負担の軽減になるんです。TN液晶も上下と左右の視野角が入れ替えられるならむしろプライバシーフィルターいらずになって、そっちでもいいんですがね。
あ、どうせ出すならDM200の欠点もつぶす方向で。具体的にはディスプレイ開度の狭さも改善して欲しいですね。せめてあと20度開くようになればTN液晶のネガの件、あまり騒がないようにします。
さて、存在や立ち位置について、つまり「そもそもPORTABOOKは執筆マシンとしてどうよ?」という命題については
「そこそこ」
「現状ではベストに近いベターな選択」
「惜しいところがあるものの、積極的に評価することに対してやぶさかではない」
「値段(2016年11月現在の実売価格)を考えると、文句があっても飲み込める」
「pomeraに機能的なストレスを抱えている人は、PCである事を踏まえてでも、一度PORTABOOKを使ってみるべき」
という回答になります。
要するに気に入ってるんですよ?
気に入っているからこそ、気になるところを改善して欲しいな、と。
次期モデルで改善されるといいな、と。
つまり「期待しちゃうデバイス」という事になりますね。
さて、総論についてはいい加減くどくなってきたので以上という事で。