趣味と暮らしにまつわる「モノ」に一喜一憂するブログ

★富士フイルム FINEPIX F600EXR ショートレビュー

カメラ

(初出:2011/11/13)

なぜ私が今頃、
しかも
「GRD IV、どうすっかなー。まだ高いけど、行っちゃう?」
とか
「S100が十二月九日かあ。高いけどよやくしちゃう?」
とか思っている最中に、突然
「F600EXR、ポチっちゃった」
のか?


それにはわけがある。(まあ、アタリマエですが)
突然興味が湧いたンですよ。
いや、正直に言って富士フイルムのこの手のコンパクトカメラにはずーっとガッカリさせられ続けてきた私なので、300EXRあたりからはもう、眼中にすらありませんでした。F600EXRなんていう型番の機種がこの世に存在している事すら、ポチる十分前まで知らなかったくらいです。
ではなぜ突然興味が湧き、あまつさえ機種の存在を知ってわずか十分後に「ポチ」に至ったのか?

皆さんはニッケイとってますか?
ニッケイといっても肉系ではありませんよ?
肉桂でもありません。
あ、私は肉桂(ニッキ)は好きですけど。
ニッケイと言えばアレじゃないですか、経済系のゴシップ紙です。
経済系ゴシップ紙のくせに「就活にはニッケイを読んでいる事が絶対」なんて言われてて、笑っちゃいます。
通勤電車でもニッケイを広げている人、多いですよね。
なんか「ニッケイを読んでるオレ、かっこいい」的な感じで、他紙を読んでる人より圧倒的にはた迷惑度(広げている面積が大きい)が高いのが特徴です。
一度チェックしてみて下さい。

で。
我が家はその経済系ゴシップ紙を購読している訳です。
ちなみに購読している新聞はニッケイだけです。アサヒもヨミウリも、マイニチもサンケイもとってません。
ニッケイオンリーです。
しかも夕刊付きで!
ご存じかも知れませんが、ニッケイは専用の販売店を持っていないようで(たぶん)、他紙の販売店に販売を委託しているようなパラノイアもとい、パラサイトな新聞なのです。
よって、新聞販売店お得意の「割引サービス」や、よく噂で耳にするチケットや洗剤、ティッシュなどのサービスなどとは無縁のようです。

閑話休題
その経済系ゴシップ紙のニッケイですが、土曜日に「プラス1」という別冊が付きます。
まあ、週末用の息抜き系分冊みたいなものなのですが、私はそのプラス1の為にニッケイを購読しているようなものだったり。
そのプラス1ですが、毎週トップの特集は決まっていて、それが「何でもランキング」というもの。
最近はネタも尽きてきて「おいおいおいおい」的なハリセン度の高いランキングが多いのですが、不定期に「デジカメのランキング」をやるわけです。
先週のプラス1のランキングがその「デジカメ特集」だったわけですよ。(今週は「活気溢れる総菜自慢の商店街」ランキング。ちなみに見るまでもなく一位は予想通り京都の錦市場でしたが)

その「デジカメランキング」とやらで、富士フイルム FINEPIX F600EXRがトップだったんです。
私、ちょっと勘違いしてまして、その一位を見た瞬間
「なんでこんなクソカメラ、しかも大昔のカメラが一位なんだ」とハリセンを取り出してしまいました。
「ちょ、ちょっと待って下さい、天ヶ瀬さん。F600EXRですから。絶対、f60fdと勘違いしてますから!」
と、紙面のF600EXRが言うので、
「あ……」
と。
だよね、見た目もなんか違うし。
と思ったら、記事に目を落として、その後「うーん、なるほど」とF600EXRに興味をもってメーカーサイトで詳細をチェックした後、ポチリ、と。
実はその「デジカメランキング」は、高倍率ズームレンズを積んだ、コンパクトタイプの「簡単に採れる機能付き」とか言う切り口でのランキングだったんですが、このF600EXRは「圧倒的」「ダントツ」「ぶっちぎり」の一位でした。
私の記憶で、ここまで二位との差が付いたランキングはありません。
つまり「それほどすごいカメラ」と審査員達は認定したわけです。
あ、要らぬ事を書いちゃいますが、デジカメの審査員の顔ぶれはいつも同じなのですが、正直言って私的には微妙です、はい。<(_ _)>

「そこまで圧倒的なぶっちぎりカメラを今までその存在自体を認識せずに生きていた私っていったい?」
そう思ったのでポチったわけです。
我が家の高倍率ズーム搭載コンパクトカメラ、CX-5はなんと五位。
CX-5が六位にしか位置できないランキングのダントツ一位ですから!
まさに
「見せてもらおうか、圧倒的なランキング一位の、その実力とやらを」
というセリフが口から飛び出した訳です。

ボディは全部プラかな、と思われます。
前面と背面パネルはプロテイン塗装で覆われていて、開封した瞬間に「しまった」と思った部分。
プロテイン塗装は手触りはいいのですがすぐにハゲはじめますし、はげるとみすぼらしい事この上ない。
長く使える相棒としては失敗だと思われます。
実物を見ていないので確かな事は言えませんが、黒以外はプロテイン塗装じゃないので、長く使うつもりなら黒以外の方がいいように思いました。
サイドまわりは見た目からして安っぽいプラスチック感丸出しです。
つまり、マテリアル的にイマイチな第一印象のF600EXRでした。

ただ、見た目よりはコンパクトで、丁度手持ちのNikon COOLPIX P300と並べると、ほぼ同じ。厳密に言うとP300よりもコンパクトです。
P300がやや角張った直線的デザインなのに対してF600EXRはヌルっと溶け出したような曲線的なデザインをとっている事もあって、見た目だけではP300の方がコンパクトに見えてしまいますが。

グリップ感、つまり構えたりもったりするのにはとてもいいです。
プロテイン塗装のおかげもありますが、エラストマーのグリップ(ゆびかかり)も効いていると思います。どちらにしろハンドストラップは付けた方がいいでしょう。ヌルっと落ちる可能性もあります。

メニュー周りは動きがややぎこちなくて、P300になれているとイラっとすることがあります。矢印キーを押しても次の画面に行ったりするのにちょっとウェイトがかかってしまうんです。

ちなみにカスタマイズ性はほぼゼロ。ボタンのアサイン変更などは出来ません。
お約束のいいところにある動画ボタンはあくまでも動画ボタンでアリ続けるわけで、動画なんてどうでもいい私にとっては見るたびに「クソォ」と思わせるヤなボタンになりつづけますね、ハイ。

モードボタンがナナメになっているのがこの機種の特徴でしょうか。
好き嫌いはあるでしょうが、これも初心者向けの「気遣い」だと思えば腹も立たないと言うものです。
液晶画面側と常に正対する万年初心者にとって、モードボタンというのは「何それ?」的な存在だと言う話をよくききます。
それはもちろん「モードボタンを見た事がない」からです。ええ、極論ですが。
でもこうやってナナメにしておけば常に目に入りますから、使い方を覚える可能性大です。

とは言え、このカメラはEXRモード固定でもいいように思いました。
画質や表現力をアイリス優先だとかシャッター速度優先なんていうモードで語るカメラじゃない(焦点距離のチョイスで語るカメラ)ので、EXR AUTO固定で充分だと思います。
EXRモードがよく出来ているから、とも言い換えられます。
どっちみにこの手のカメラでボケ味が云々だからアイリス優先モードで……とかあんまり関係ないように思います。
ここまで小さな撮像素子を使っているわけですから、もともと暗い高倍率ズーム。絞ったらすぐ回折現象ですし、アイリス優先オートとかちゃんちゃらおかしい気分になってきます。
いえいえ、いい悪いじゃなくて、ちゃんチャラおかしいだけです、ハイ。
おかしくない人は使えばいいわけで、その為に使えるようになっているわけですから。

EXR AUTOは実によく出来ていて、なんかここまできたかと思わせるものがあります。勝手に色々パラメータを変えちゃうので(解像度とかも)最初はイラっとしましたが、α900を使っている時と同じ気持ちで見る私がおかしいのであって、このカメラはEXRで撮影を楽しむべきなんじゃないかとおもってからはもう、EXR AUTOの大ファンになりました。

問題は……
等倍鑑賞には全く向かないレンズの性能と画像エンジン処理……要するに画質でしょうか。
それでもKG版程度にプリントするのであれば何の不満もありませんし、富士フイルムももともと等倍鑑賞をするようなユーザーをターゲットにしてはいないと思われます。L版プリンター(L版にプリントする人。L版専用のプリンターではない)には充分な画質ですし、色は正直にいってP300より五十六億七千万倍いいと思います。
「色だけでP300を捨ててF600EXRを買った」と言われても「納得するしかありませんな」と答えるしかありませんな。

実際問題、私の気を引いたのは、GPSの存在でした。
測位に時間がかかるなど、初期のGPS搭載カメラ(たとえばP6000とか)はほとんど冗談というか「ただ積んでみただけ」的などうしようもない代物だったのですが、私の使い方にもそろそろ合致したものが出始めているような雰囲気を感じていたので、そのうち一台を試してみようという気があったからこそ「ポチ」ったわけです。
他にもGPSを積んだ機種はいくつかありますが、言ってみればまあ「縁」というヤツでしょうか。

で、早速そのGPS機能ですが、geotag機能よりもむしろF600EXRの場合、「ランドマークナビ」を初めとする「お遊び」機能の方が面白いです。
レンズを向けた方向にあるランドマークをエアタグよろしく映し出してくれたり、そのままカメラを水平にすると、今度はコンパス画面に早変わりしてレーダーのような感じで複数のlandmarkがどの方向にあるのかを映し出してくれたりします。
これは旅行先などで楽しめる機能じゃないかと思います。
海外に対応しているかどうかは不明ですが、とりあえずちょっと使って、私にはどうでもいい機能である事は認識しましたが。

GPSの測位能力ですが、思っていたよりは悪いです。
ガーミンの高性能GPSと比べちゃうからでしょうけど、あれくらいガシっと掴んで欲しいものです。
電源をOFFっていても常時GPS測位をするモードがあって、コレでしばらく試してみたのですが、屋外に出ないと役に立ちませんし、そもそもビル街でも辛そうです。
ジオタグ機能付きのカメラは別途もっているのですが、そっちはもうほぼリアルタイムに測位しちゃってますから差がありすぎて戦いにもなりませんでした。
ええ、iPhone4Sというカメラですが……。

電源ONの時だけ測位する、なんてやってた日にはもう全くダメダメで、GPS機能に過大な期待はしない方がいいと思いました。

ただ、これは私の日常のメモカメラ的なポジションにおいての評価です。
観光地を巡るツアーなどのような使い方だとたぶん大丈夫じゃないかと思いますが、そう言うシチュエーションでは私はこのカメラは使わないので要するに私にはダメなカメラだと言う事になります。
ジオタグの欲しいメモ撮影にはiPhone4Sが最適だと言う事を思い知った対決?でした。
iOSが5になってから、ボタン二度押しでカメラをすぐ呼び出せるようになったし、カメラのように?構えて音量+ボタンでシャッターが切れるようになったので、鞄にしまったカメラを出すよりもササっと撮影できるiPhone4Sはバカに出来ない存在です、ハイ。

GPSの受信部がこれ見よがしに取って付けてありますが、ここまで開き直ったデザインは◎だと思いました。かっこいいとは思いませんが。

電源のON/OFFは見ての通りボタン式。私の嫌いな方式です。
シャッターボタンは普通の感触。最近のソニーの一部モデルひどさを考えるとリーズナブルだと思います。

ストロボはボタンプッシュで飛び出す形式です。
富士フイルムのデジカメの調光能力には一目置いているのですが、このF600EXRも素晴らしいものがあります。
リコーのCX-5に爪の垢を煎じて飲ませたいところです。

まあそう言うわけで結論的なものを書いてしまうと、

「EXR AUTOをメインにカメラ任せで超オッケー」なカメラだと思いました。
加えてGPSによるジオタグも新しいし、ジオタグを使った楽しみ方が出来るのはいい事だと思います。
GPSの測位が間違ってexifに埋め込まれた場合でも、カメラ内で修正できるのも面倒だけど親切。出来ないよりよっぽどいいです。(正しい位置の別ファイルから情報をコピーできる)
GPS測位のタイムラグはイマイチですがP6000を知っている身としては許せます。
ちなみにGPSの測位は「電源ONの時に測位」にしておかないとバッテリがすぐなくなります。

コンパスとGPSを使ったlandmarkのエアタグ機能もこのカメラをメインに使う人にとってはとっても有用なものだし、プラボディなのでEye-Fiの電波もよく飛びます。二日使った間にエラーらしきものも出ませんでしたので、Eye-Fiセーフティなカメラだと言っていいでしょう。

手振れ補正機能は充分使えると思います。
S95やP300の手振れ補正を知ってしまうとやや物足りないものはありますが、CX-5よりマシです。

特に嬉しい性能が、ストロボ調光でしょう。
こいつは本当にストロボを使っても他機種のような正面一発ポン焚き感の無い素晴らしい絵が撮れます。
シーンモードの高感度二枚撮りなんかも有効でしょう。

画質もケータイよりはいいですし、多くの人に好まれる色を出してくれるという点でも素晴らしいと思います。

加えてここまで多機能なカメラのストリートプライスが2万円台前半ですから、お買い得カメラと言っていいと思います。

翻って私的な評価はどうかというと……。
写真よりもカメラを趣味とする私のような人間にとって、プラボディというだけで、もう除外決定です。
ただし、F600EXRのプロテイン塗装の黒は結構質感がいい感じに見えます。
ハゲるまでは満足感は高いのではないでしょうか。

GPSはメモカメラ的な使い方では実質機能しませんし、出っ張りの不格好さが萎えます。
全体にデザインは好き嫌いが分かれるものだと思いますが、私はダメです。
P300の汗臭いデザインの方がいいと思えてきます。

何より動作の緩慢さが我慢なりません。
撮影後、アフタービュウをホールドできないのは最近のカメラの常ですが、こいつも三秒までです。
で、画像確認をしようと再生ボタンを押すと二秒以上待たされるんです。
いや、2012年のカメラとしては個人的にこの遅さは許せません。
イライラっとする時間がずっと続くと思うと目眩がします。

そもそも私、十五倍ズームとか使わないので。
その分暗いので。
ただ、24mm(相当)始まりで十五倍ズームでこのサイズは脅威だと思いました。
さらに超解像技術でデジタルズームが上乗せされます。
以前のクロップ式デジタルズーム時代に比べると、最近のデジタルズーム、デジタルテレコンは私的には使い途は充分アリだと思いますので、望遠重視で色も良くて、コンパクトで多機能、面白い、という事ならこれはおすすめ。
多くの人はカメラより写真重視でしょうから、カメラのマテリアル云々なんて言ってる私は変な人なので、変な人の意見はスルーして、このカメラの機能をまっとうに評価すると、とてもいいカメラじゃないかと思えます。

ま、画質は……
画質は好みですから。
私はダメでしたけど。

という事でショートレビューは終了。
F600EXRは誰かに里子に出す事に決定でした。

プラス1のランキングの評価って、画質には一切触れられていないのです。
好みもあるし、色々大人の事情があるのでしょう。
なのであれってほとんどスペック比較のようなところもあるので、当てにしない方がいいんです。
ま、ニッケイのプラス1の特集はいってみればきっかけで、GPS付きのカメラを一台使ってみようと思っていた時にたまたまその記事を見つけたというお話でした。

期待してなかっただけに結構面白くていいカメラだと思いました。
こういうカメラもアリだな、と納得はしたしだい。

でも、こんなすごいカメラが2万円台前半で買えちゃうのって、どうよ? って思ってしまいました。

で、F600EXRの1/100位の機能しかないGRD IVはまだ6万円とかですか、そうですか。