たかがサイクルボトル。だがしかし……
というわけで、少し前に発表されたにもかかわらず、なかなか入手できなかった便利なサイクルボトルをご紹介します。
◎最近のロードレーサーはシートチューブが短くなっている?
身長が低いサイクリストは自分にあったフレームが小さいのは当たり前ですが、現在は普通の身長であっても、実は昔に比べるとシートチューブは短くなっている傾向があります。
○スローピングフレーム
原因の一つは、スローピングという、トップチューブが弧を描くようなデザイン。
・エアロ効果
・軽量化
・高剛性
・足つき性の向上
・見た目の良さ
などなど。
最後のは「男ならクロモリ・ホリゾンタル」でを主張する一派も存在しますので絶対的なものではありませんが、それ以外の項目は物理の法則によるものなので議論の余地はないところでしょう。
つまりスローピングフレームには良いところがいっぱいなので、各社こぞって採用しているわけです。
特に足が短い人にとってスローピングフレームは願ったり叶ったりの形状と言えるでしょう。
○フレームマテリアルの変化
私がサイクリングを始めた頃は、フレームと言えばクロモリ・ホリゾンタルが当たり前でした。
一部、廉価なモデルはクロモリではなくてハイテンション鋼(いわゆるハイテン)でしたが、要するに鉄パイプを溶接してフレームを作っていたわけです。
それが、いまは主流がカーボンとアルミです。
そして各チューブはただのパイプじゃなくて、エアロ効果や剛性などを計算して、その断面は丸じゃなくなりました。
楕円だったり長円だったり三角だったり四角だったり、そもそもその形も部分部分で形が違ったりと、鉄パイプ時代に比べてなんだかいろいろ複雑です。
特にカーボン素材は形状の自由度が高く、もはや何でもありです。
そんなカーボン時代になって見た目が大きく変わったのがBB、つまりボトムブラケット部分。
ここも、クロモリ時代はただのパイプみたいなものでしたが、ここは応力が集中するところなので、カーボン時代になると剛性確保の為にものすごく太くというかごっつくなりました。
これにより、シートチューブの見た目的なチューブ部分の長さは短くなってしまいました。
◎シートチューブが短くなることの弊害とは?
ケージからボトルを出し入れしにくくなるんですよ。
○そのそも台座がない
モデルによってはシートチューブにボトル台座自体がない、なんていうのもあります。
つまりダウンチューブに一つあるだけ。
サイクルボトルを2本装着したければ、シートチューブ以外に取り付ける(あるいは身につける)方法を考えないといけないわけです。
翻って我が家にある二台のロードレーサーですが、一応、2ボトルで運用していますが、実はどちらもクリアランス不足です。
実のところ、フレームサイズが小さい同居人のTREKのほうが、むしろ私のORBEAより余裕があったりします。
それはORBEAのボトル取り付け台座(ネジ穴)が無駄に上側についているからです。
という感じで、我が家の場合、シートチューブに取り付けるボトルケージには、事情というかちょっとした構造上の問題を抱えているのでございました。
○回避方法
台座がないとちょっとアレですが、台座があっても出し入れがしにくい場合、回避方法は確かにあります。
それは、ボトルケージを選ぶことです。
具体的にはベーシックな「上方出し入れ方式」のケージではなく、「斜め上方向出し入れ方式」のケージにすることです。
はい、解決。
となればいいのですが、実際に数種類の「横(実際は斜め上方)出し入れ方式」のボトルケージを使ってみた経験で言わせていただけると「あまり使いたくない」んです。
◎私が横出し式ボトルケージを嫌うわけ
すべての横出し式ボトルケージをディスっているわけではないことを予めお断りしておきます。
その上で、私が使った3種類ほどのボトルケージに対する感想は「ホールド力が低い」です。
ガタガタ道でボトルがボトルケージから飛び出るんです。
少なくとも私が使っていた横出し式ケージはすべてダメでした。
もちろん大丈夫なものもあるのでしょうが、使ってみないとわからないものにもはや投資はしたくないのが人情です。
というか、私は今まで一体どんだけボトルケージを買っていることやら。
そんなわけで、我が家のバイクのシートチューブには、普通の上方出し入れ方式のボトルケージが取り付けられています。
出し入れできないわけではなく「しにくい」なので。
でも、物理的な制約もあります。
容量の大きなボトルは、長さで稼いでいます。それは出し入れの際トップチューブに引っかかってしまい使えないのです。無理やり出し入れするとケージが折れそうですし。
フレームのよってはそもそも上のクリアランスが足りずにケージに収まらない場合もあるでしょう。
というか、上方にある程度のクリアランスがないと上方出し入れ式のケージは使えないというお話です。
◎メインボトルと補給用ボトルという使い分け
そういうわけで、我が家は出し入れがしにくいシートチューブ側には600ccまでのボトルを、ダウンチューブ側には700ccクラスのやや大きめのボトルを装着して合計容量を稼いでいます。たった100ccの差ですけどね。
そうするとどうなるかというと、ボトルの入れ替えができません。700ccのボトルではシートチューブのケージにちゃんと入らないのです。
我が家の場合、主に安全上の理由から、あまり走行中にボトルから水分補給などという行為はしませんが、取り出しやすいのはダウンチューブ側なので、飲むのはそちらのボトルと決めています。
で、メインのボトルが減ったら、シートチューブ側のボトルの中身をなくなった容量の多いボトルの方へ注いで対処しています。
面倒ですよね。
100ccの差だったら、同じ容量のボトル二本にしたらいい話じゃん。ですよね。
まあ、そのへんはせっかく買ったボトルを無駄にしたくないという貧乏性を拗らせているとお考えください。
◎救世主登場
そんな折。
というか、今年の春頃に「出し入れが超簡単で」かつ「ガタガタ道でも飛び出さない」という「横出し入れ方式」のボトルケージ(ケージ?)発売のニュースを見つけたのです。
記事を読んだ私はこう思いました。
「ほう、こりゃあいい。今すぐに必要じゃないけど、ホノルル・センチュリー・ライド本番にはこれを使おう」
で、夏に入ったので買おうと思ったんですが、流通量が少ないようで在庫のある店が探せない状態。
結局あがくのをやめて「予約」しました。
◎マグネット式脱着ボトル 【Fidlock BOTTLE TWISTボトルセット】
それが、これ。
そして外見ではわかりにくいかもしれませんが、これはボトルとボトルケージではありません。
フレーム側とボトル側の両方にあるアタッチメント同士で装着される方式。
そしてその装着方法はマグネットを使ったロック方式です。
単純に磁力だけで保持しているわけではありませんので、ちょっとやそっとじゃ外れません、というかこれが外れるようならすでにバイク側が壊れてるにちがいない、と思える堅牢さ。
これなら「北の地獄」パリ~ルーベもへっちゃらでしょう。
脱着方法がちょっとイケてます。
外すのは名前にもあるように「ひねる」だけ。
具体的には向かって時計回りにひねるとサクっと外れます。
そして装着が異様に簡単。
こちらはひねる必要などなく、アタッチメント同士を適当に近づけさえすれば、磁力で引き合ってカチャッと装着されちゃうんです。
画期的!\(^o^)/
というわけで、このボトル、そもそもの目的は走行中にできるだけ安全にボトルを脱着するために開発された仕組みです。
「よそ見をしなくても、適当に手を伸ばせばあら不思議、誰でも確実・簡単にケージに収まるマジックアイテム」ですから、つまり基本的にダウンチューブ用です。
パッケージの写真なんかも全部ダウンチューブに取り付けられていますしね。
しかし我が家の場合、こいつはシートチューブ用。
「便利な横出し方式ボトルケージ」として運用されるのでした。
開発者の意図とは違う用途ですが、便利なものは便利。
◎デメリット
2つあります。
一つ目は「ボトルが専用品」であること。ボトル側にアタッチメントを装着する関係で、アタッチメントの形状に合わせて凹ませた専用品が必要なのです。
二つ目は「値段が高い」ことです。セットでざっと5000円。
もっとも、二つ目はあながち「値段が高い」とも言い切れない部分もあります。
この製品並の超軽量カーボンボトルケージは安くありません。物によっては平気で5000円とか1万円とかしちゃいます。
ボトルも保冷系など機能が付加されているものは3000円とか4000円とかしますから、それを考えるとセットで5000円は単純に高いとは言い切れないのかもしれません。
でもボトルケージとボトルはバイクを買ったときにおまけで付いていたものしか使ってない、みたいなパターンだと追加で5000円というのはちょっとした金額なのは確かです。
◎使ってみて
○軽量化した
購入するまでは、勝手に「重くなるだろうな」なんて思っていました。
だって、今使っているカーボン製のボトルケージはたったの15g程度しかないんです。
これ以上軽いボトルケージもありますが、値段が現実的じゃなくなってきます。
しかし、ボトルケージに当たる台座側のアタッチメントを計ると、たった2g弱しか違いませんでした。
更に、意外なことにボトルが軽い。
アタッチメント込みなのに、今使っている簡易保冷機能付きのボトルより断然軽いんです。
理由はかなり軽量化されたボトルを使っているから。
なので、触ってみてもペラっとしていて、なんというか耐久性が大いに不安なんですけどね。
今使っているボトルは簡易保冷機能付きなので二重構造。しかも飲み口がフルカバーされる特殊な構造の蓋がついていますので、ボトルとして重いのは仕方がないところです。
ボトルのクオリティが大幅にダウンすることになるわけですが、実際問題としてこのボトルに口をつけることはもはやなくなっているので、飲み口がフルカバーされているメリットを享受することはありませんし、「簡易保冷機能に夢を見ていた時期がありました」的な悟りをひらいていますので、耐久性だけは不安ながらも、ボトルを変えることに問題はありません。容量もほぼ同じですしね。
○実際に使ってみて
使い勝手は予想以上。
かなり快適です。
取り外しは本当に簡単。くいっとひねればOKで、横出しの概念を根底から覆す構造です。
そして装着に関しては、その数倍快適です。
だって近くに持っていくだけで文字通り吸い付くように装着が完了しちゃうんですから。
これはもう、火薬、活版印刷、羅針盤に次ぐ人類4番目の大発明ではないでしょうか?
なんというか「がたがた言わずにとにかく試してみろ。笑っちゃうから」的な?
こうなるともう少しボトル容量がほしいところ。
現在は600ccのみですが、750ccとかがあると私のような用途では助かります。
もし750ccボトルが出たら、大して効果のない保冷効果ボトルととかもうどうでもかな、と考えて、ダウンチューブ用にも導入してしまうかもしれません。
贅沢を言いますと、飲み口が単純なものしかない……いや、はっきり言うと専用ボトルがチープすぎなんです。なのでメーカーにはそのへんにもっと気を(コストを?)使ったものを出してほしいところ。
◎本音を言うと……
専用ボトルじゃなくて、汎用ボトル用のアタッチメントが出るとベストです。
なんだかんだでボトルは気に入ったものを使いたいですからね。
まあ、専用ボトルから無理やりアタッチメントを取り外して無理やり取り付けることは可能でしょうけど、見た目や安全上から、やめたほうが無難です。
◎追記(2018/09/05)
Google+コミュニティの方より情報の提供をいただきました。
同じマグネット式のボトル&ケージシステムに「コアラボトル」というものがあるそうです。
○コアラボトル
調べてみると、こちらはフィドロックよりかなり古くから存在するシステムです。
確か私の用途としてはにこちらでも良さそうです。
○コアラボトルのメリット
・ボトル選択にある程度の自由度がある
というのも、コアラボトルのボトルはスペシャライズドのボトルを使用している為、同社の「ピュリスト」というボトルが転用可能です。
「ピュリスト」というボトルは、フィドロックの専用ボトルと比較しても吸口などの工夫やボトル自体のクオリティが高いので、ボトル重視で選ぶ場合はこちらのほうが良さそうです。
ちなみにボトルは22オンス、つまり約600mlで、こちらはフィドロックと同じ
・パーツの別売りが確立されている
更にコアラボトルの場合、ボトル、ケージ、ボトル用アタッチメント(ステンレスの輪っか)それぞれが別売りとなっている事。ボトルを落としてなくしたからといってセットを買わなくてもいいのはメリットですね。
・装着が無指向性である
コアラボトルの場合、ボトルの首の部分につけた輪っかがボトルケージの磁石にくっつくという方式なので、上下を間違えない限り、何も考えずにケージに近づければ装着可能です。
これは走行時に使う事を考えるとメリットは限りなく大きいと思います。
一方で、フィドロックはアタッチメント同士を近づける必要があり、コアラボトルの自由度に一歩譲ります。
○コアラボトルのデメリット
これはあら捜しレベルかもしれませんが、個人的には
1.ボトルケージがゴツくてダサい
2.ボトルケージが重い(といっても57g程度ですが)
という感じで、ボトルケージ側を重視するとフィドロックに軍配が上がりそう。
○現時点での感想
コアラボトル、名称と見た目はアレですが、ボトルの選択肢があるという点で個人的には気になる存在です。
ただし、現時点でもダウンチューブ側のボトルの出し入れに不満が全く無いので、必要性はありません。
今回は、あくまでもシートチューブのボトルケージにボトルを出し入れする際に超イライラする、という問題を解決する方法だったので、どちらでも良かったかもしれませんね。
コアラボトルの存在を知っていたら、悩むところ。
フィドロックとはセット価格もほぼ同じですし、あとはケージの見た目と重さを比べて、ボトルの自由度とのトレードオフでどう結論をつけるか、ですが、多分見た目重視でフィドロックにしたかなあ、という感じ。
走行中に出し入れをする事を考えると断然コアラボトルだと思いますが、停車中にしか出し入れしない我が家の場合はコアラボトルのメリットの一つがメリットと感じない点がちょっと弱かったかな、という感じです。
が、コアラボトルも結構おすすめです。