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☆【TREK MADONE SLR】はなぜ「死神ロードバイク」と呼ばれるのか?

にゃんぱす~\(^o^)/

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あつい。
暑い。
いや、熱い。

そんなわけで土曜日が出勤だった私は週末ライドは昨日の日曜日だけでした。
楽しみにしていた当日の朝練は(累計)獲得標高600mの30kmコースをサクっと走るつもりで出発したのですが、早々にバテバテ状態になり「これは熱中症になりかけかも」と判断し、中途で切り上げて帰ってきました。
なので獲得標高は予定には達せず、383m止まりでございました。

原因はたぶん水分不足。
とはいえ自分ではそこそこ水分を摂取していたつもりだったんです。
でもバテバテになりつつようやくたどり着いた坂道の頂上で止まった時に比較すると、私は同居人の半分くらいしか水分を消費していないことが判明。
無意識のうちに「ご近所サイクリングだから」と油断していたようです。もっと意識的に水分とらないと、ですね。

特に私の場合、体質として心肺機能が普通の人より劣っているのですが、気温が高くなると心肺機能に対する負荷が大きくなることを忘れがちなのも敗因でした。
心拍系をにらみつつ、上りではもう少しペースを落とすべきでした。
まあ、それもこれもMADONE SLRだとちょっと楽ちんな感じなので、自分の心肺能力不足を考えずについつい踏んじゃうのが良くないのですよね。

本日の走行距離、20Kmなり。

◎死神系ロードバイク、MADONE SLR

本人はうっかりしてバテバテになりましたが、バイクのフィーリングは相変わらずすこぶる付きに快適です。
バイクの重量は重くなったのにペダルが軽くて、同じ勾配でもついつい踏んで行ってしまうんですよね。結果として心拍はずっとレッドゾーンで固定……悲鳴あげてるわけなんですけど。

そんな死神系ロードバイク??であるMADONE SLRはレース用の機材なのですが、その乗り心地に関して言えば、レースカーどころかスポーツカーとも思えない、たとえるならラグジュアリーサルーンのようなフィーリングなのです。

おかげで北摂山間のあのひび割れた路面の下り、それもそこそこのスピード(40km/h以上)で通過することに何のためらいもなくなってしまいました。


もちろん、カーブのトレースライン上にあのひび割れ路面があったとしても、気にすることなくそのまま突っ込んでいっちゃいます。
と書くと、北摂サイクリングをしている人なら「ほほう」と思ってくれるのではないかと。
MADONE SLRに乗り換えて完全にライドスタイルが変わっちゃいました。
このままだとスポイルされるというか路面に対する注意深さや慎重という部分が欠落してしまうのではないかとちょっと不安になっているところです。
やはり実は死神系ロードバイクか?
だって、MADONEって……実はDAEMON(デーモン)のアナグラムですしね……。

とはいえ乗り心地の良さは今までとは別世界なのでそれも無理からぬことかと。
多少の荒れた路面でも突き上げなどなく、まさに鼻歌交じりで通過。
「まるで絨毯を一枚敷いたような」みたいな形容がよくありますが、私に言わせると「絨毯を二枚敷いたような」感じです。

いやもう、本当に快適で、今まで私はどんだけ我慢していたのだろうかと、人生の損失について考えが及んでしまうような次第。

そんな感想を同居人に告げると「え、それがフツーでは?」ですと!
ええ、そうでしょうとも。なにしろ同居人のバイクははじめからISO Speed付きのTREK。つまりはそういうことなのです。
「あんた、どんだけ楽してたんだよ!」みたいな。

でも、この快適性の全てがTREKが誇る「マジかよ」な変態ギミック、Iso Speedによるものなのでしょうか?

今回はその辺をちょっと考えてみました。

◎要因その1「MADONE SLRの調整式Iso Speed」

細かい説明は省きますが、簡単に説明すると「サドル部分をフレームから独立させる」ギミックです。
うーん。
ちょっと簡単にしすぎたみたいなので、もう少し詳しく行きます。

まずサドルですが、通常の自転車と同様に、シートポストとはボルトでガッチリとくっついています。
そして通常の自転車の場合は、サドルがくっついたシートポストをフレームの一部であるシートチューブに差し込み、ネジで締めて固定します。つまりこの時点でサドルはフレームに固定された恰好になります。

MADONE SLRの場合はフレームに左右から貫通させたボルトに、シートポストを引っ掛けているだけなのです。
普通のバイクのようにシートチューブに固定してフレームと一体化させるのではなくシートチューブに引っ掛けるだけでフレームに固定はしません。

これによりシートポストは左右方向には動きませんが、前後にはグラグラ動くようになっているんです(というか、ボルトを中心とした回転運動をする)。
それがTREKのIso Speedというギミックのあらましです。

自動車と違って自転車の振動に関しては左右を考える必要はありません。上下を含めて縦方向がほとんどです。
そこに目をつけたのがMADONE SLRのシートポストの懸架方式です。
ボルトを通すことで左右的には動きません。ボルトは位置決め用。
上下を含む縦方向の振動は、ボルトを中心として回転する事で吸収させているのです。

もっとも実際にグラグラに動かせるわけではなく、自転車を運転していて違和感がないくらいには固定されていますので、ニブい人には動いていることはわからないかもしれません。
ちなみに私は「最も動く設定」にしているんですが、今のところほとんど動きを感知してません。
どうやら私のおしりは鈍感のようです。^^;

「動く」というと「グラグラ動くサドル」を想像して気持ち悪いので「しなる」と言い方を変えます。

Iso Speedとはつまり、シートポストをしならせることで、縦方向の振動を吸収しているのです。
MADONEが採用している第三世代のIso Speedは、ただ振動を吸収するのではなく、大きな入力を受けた際に働くダンパー機能を新たにもたせてありますから、だらしなくグラグラ動き続けるなんていう想像は不要です。

これにより「フレームが受ける振動は、サドルに到達するまでの間にしっかり減衰される」のです。
このIso Speedのおかげで「角が取れた乗り心地」になるわけなのです。つまり絨毯です。

このIso Speedが良く考えられているのは、何度も書いているように強度メンバーであるフレーム部分とは完全に独立して動くという点です。

MADONE SLRのインプレ記事を読んでいると、たまにIso Speedの事を誤解しているのでは? と思われるような記述を目にします。

MADONE SLRが採用しているのは第三世代のIso Speedですが、先代のDOMANEが採用した第二世代のIso Speedからは「調整式」になっています。
フローティング状態のサドル(シートポストやシートチューブなど)を固定する位置により、しなりの量を変化させることができるようになっているのです。

大事なのは調整できるのは「浮いている」サドルの可動範囲だけだってことです。
フレームの調整など一切行ってません。つまりIso Speedはフレームの剛性とは全く関係ありません。
それなのに「しなりを調整することによりフレームの剛性が変化する」「フレームの剛性を変化させる」なんて書いてある記事があるんです。

何度も言いますがフレームは一切いじりませんから剛性は不変です。
変わるのはあくまでもシート部分のしなりの量だけなのです。
「剛性が変わったように感じるだけ」です。

嘘だと思うなら、しなり量を「最高」時と「最弱」時にそれぞれダンシング(立ち漕ぎ)して比較してみればいいのではないでしょうか。
構造的にIso Speedが有効なのはシッティングの時だけなのですから、ダンシング時には何の変化もありません。
言いかえるとダンシング時の比較で「フレーム剛性が~」なんて書いている人の文章はアテにしてはいけないということです。

でも、フィーリングがかなり変わるのは間違いありません。なので剛性が変わったみたいな錯覚にとらわれるのでしょうね。
「剛性」ではなく「剛性感」と書くのが正しいかと。

MADONE SLRのIso Speedに興味がある人は是非こちらを御覧ください。

路面を滑らかに感じさせるIsoSpeed - Trek Bikes (JP)
IsoSpeedは、舗装路やトレイルの凹凸を吸収し、よりパワフルかつ快適に走れるようにする。それでいて、バイク本来の効率性は損わない。詳しく見てみよう!

動画はこちら

◎要因その2「タイヤ」

でも私は、MADONE SLRの乗り心地が快適なのはそのIso Speedのせい「だけ」ではないと思っています。

おそらくですが、カタログモデルのMADONE SLRより、「私のMADONE SLR」の方が快適性は高いと思っています。
乗り比べたことがないので勝手な想像なのは確かですが、まず間違いありません。

この自信の根拠はズバリ、私のMADONE SLRは「チューブレス(レディ)タイヤ」だからです。
カタログモデルは普通のチューブド・クリンチャー仕様なので、私のMADONE SLRよりも幾分乗り心地は硬いはずです。
一般的に同じサイズのタイヤ同士で比べた場合、チューブレスタイヤの方がエアボリューム(空間の大きさ)が大きいのです。
なぜならチューブがないから。
単純計算でチューブ分、容積が大きいということです。
もう、これだけで乗り心地に差がつくのですが、実はチューブレスタイヤはチューブドに比べて要求空気圧が低いんです。
空気圧が高いほうが固くなります。つまり、空気圧を低く設定できるチューブレスタイヤのほうが乗り心地が向上することになります。

加えて!
MADONE SLRの場合、Project Oneでチューブレス仕様をオーダーすると、ワンサイズ(?)太いタイヤになります。
具体的には、デフォルトだと25mmのところ、チューブレス仕様にすると26mmのタイヤになるのです。
太いタイヤのほうがエアボリュームが大きくなるわけで、エアボリュームがまします。

整理しましょう。
第一段階:チューブレスによるエアボリュームのアップ
第二段階:要求空気圧が低い
第三段階:タイヤ幅増加によるさらなるエアボリュームのアップ

という感じで、私のMADONE SLRはカタログモデルのMADONE SLRより「けっこう」乗り心地が良くなる仕様になっているのです。

そう、私のMADONE SLRの乗り心地の良さはIso Speed+チューブレスタイヤの複合的な恩恵ということになります。
言い換えると「名ばかりのMADONE SLRは道を開ける」……じゃなくて、「チューブレス仕様のMADONE SLRは、ノーマルのMADONE SLRより乗り心地がいい」ということです。

◎要因その3「スポーク組」

だがしかし。
それだけでは説明がつかないことが一つあります。
それは「ハンドルから伝わる振動も(ORBEA AVANT OMPより)かなりマイルド」であることです。

ご覧のようにMADONE SLRのフロントフォークはドストレート。


同様にORBEA AVANT SLRもドストレートでした。


ORBEAのばあい、ハンドルから伝わる振動がひどいのは、まあ、フロントフォークの形状からして理解できました。
「これで乗り心地がいいわけない」と思えるデザインというか設計です。
MADONE SLRもORBEA AVANT OMPも、なぜこういう同じようなぶっとい「ドストレート」なフロントフォークになっているのかと言うと、それは「ディスクブレーキレディのフレーム」だからです。

私のORBEA AVANT OMPはリムブレーキ仕様だったのですが、実はディスクブレーキ仕様もラインナップされていました。
当時も欲しかったのですが、なにしろリムブレーキと比べると価格差がおおきくて予算オーバーで手が出ませんでした。

フレームとフロントフォークはリムブレーキモデル、ディスクブレーキモデルで共通でしたので、要するにディスクブレーキ用に強化されたフレームを、そのままリムブレーキで使っていたということなのです。
ま、そう考えるとORBEA AVANT OMPって乗り心地がよくなる要素は皆無ってかんじですよね。

翻って多くのリムブレーキ仕様のロードバイクのフロントフォークってMADONEのようにはなっていません。
程度の差はありますが大抵は「ベンド」と呼ばれるカーブを描いています。
コレの意図するところは「フロントフォークをしならせる」ことにあります。
つまりフロントフォークをしならせることにより、フロントホイールに入力される振動を吸収させるわけです。そしてハンドルに伝わる振動や突き上げを軽減する、と。

MADONE SLRのフロントフォークを見た時から、私はハンドルに伝わる振動については最初から諦めていました。
ORBEA AVANT OMPと同じ固くて太いツッパリ棒仕様ですからね。
でも、実際に乗ってみると、お話にならないくらい、MADONE SLRの方が振動が小さかったんです。
フロントフォークの剛性なんて、多分ORBEAよりMADONE SLRの方が上のはず。
謎ですよね?

そこで私は腕組みをして考えました。
MADONEのフロントフォーク周りを眺めながら。

で、なぞに対する答えの一部を見つけました。
それは、ORBEAとMADONE SLRのフロントホイールの違いです。
もっと言うと、リムブレーキバイクのフロントホイールとディスクブレーキバイクのフロントホイールの違いです。

厳密にはホイールそのものではなく、ハブとリムをつなぐ棒、すなわちスポーク……の組み方の違いです。

リムブレーキバイクのフロントホイールは、ほぼ「ラジアル組」と呼ばれる、ハブからスポークがまっすぐ放射状に伸びるスポーク組がされています。
対してディスクブレーキバイクの場合、ハブから伸びたスポークは別のスポークと交差した後でリムにたどり着く「タンジェント組」と呼ばれるスポーク組なのです。

これは双方とも、採用される理由があります。
ラジアル組のメリットは、ハブからリムまでの距離が最も短い、つまりスポークを短くできる=もっとも軽量に組み上げられるから。
また、スポークの本数も減らせますので空力的にもメリットがあります。
あとは、これは好みにもよりますがスッキリしたシンプルな見た目の良さ、でしょうか。
デメリットの一つ目は振動吸収性能が低いことです。
だって、リムからハブへ最短距離の一直線でつながっているわけですから、ようするに「突っ張った状態」なんです。
2つ目のデメリットは「横方向への剛性がない」です。
だって、必要ないでしょ? リムブレーキの場合は縦方向にしか力がかからないのですから。

対してタンジェント組のメリットはラジアル組のデメリットの逆、つまりスポークを交差させることにより生じる「横方向の剛性の高さ」です。
タンジェント組がディスクブレーキバイクに採用される一番の理由はこちらです。
ディスクブレーキはホイールのどちらか片側(通常は左)にしかありません。
オートバイのハイパワーモデルのように左右両方にディスクが付く、なんてことはこの先もないでしょう。重くなりますからね。
片側にしかないディスクをキャリパーで挟むと、その力はハブを通して伝わるわけですが、ディスクとハブの位置は横……というか斜め方向になります。
ラジアル組だと片側から引っ張られるとリム自体が動いてしまうので使い物になりません。
もちろん何があってもびくともしないような無茶苦茶頑丈なスポークとかリムを使えば問題ありませんが、そんな重いホイールは誰も使いたがらないでしょう。
なので斜め方向の入力に対応できるような剛性を持たせるためにホイールの組み方で対処しているわけです。

もともとリアホイールは片側に駆動力、つまりスプロケットがついていますので、ラジアル組じゃなくてタンジェント組で左右方向の剛性バランスをとっていました。
つまりディスクブレーキはリアホイールと同じような考え方のスポーク組で対処しているというわけです。

タンジェント組のメリットはもう一つあります。これもラジアル組のデメリットの裏返し、すなわち「乗り心地の良さ」です。
タンジェント組はラジアル組よりスポークが長くなります。また、他のスポークと交差します。これらの要素が振動吸収を高めることになるわけです。

ではタンジェント組のデメリットは?
これもラジアル組の反対。
・スポークが長くなる=重くなる
・剛性確保のためにスポークが多く必要=重くなる+空力的に不利

◎要因その4「マテリアル」

MADONE SLRのフロント部分は、その入力順番的にリム、フロントフォーク、コラム(フロントフォークの上の方)、ステム、ハンドルバーの全てがカーボン素材です。
スポークはアルミで、これは一般的には硬いとされていますが、タンジェント組なのでそのあたりは相殺ということでしょうか。

一方で乗り心地改善の為に一時はカーボンステムとカーボンハンドルに換装していたORBEAですが、色々あって結局アルミステム、アルミハンドルの組み合わせに戻していました。

ホイール自体はアルミリムにラジアル組のステンレススポーク。
実際問題としてホイール単体での比較はわかりませんね。

ただ、結果としてのフロントの振動吸収力はMADONE SLRの圧勝なのです。

さらに私のMADONE SLRは、カタログモデルのMADONE SLR 7と比較しても乗り心地がややいい仕様になっています。
というのも、カタログモデルのSLR 7ははアイオロス PRO5がデフォルトです。
私が履いているのは同じアイオロスPROですが、3の方なのです。
こちらはリムハイトが低い分剛性が低めで、リムハイトの差だけスポークが長くなるわけですから相対的に乗り心地が良くなる理屈ですね。

とまあ、そんなこんなで私のMADONE SLRはORBEA AVANT OMPと比べても、また同じMADONE SLR 7のカタログモデルと比べても仕様として乗り心地がいい状態になっている、というお話でした。

長くなったのでいちおう簡単にまとめておきます。

私のMADONE SLR 7(Project Oneでカスタマイズ)の乗り心地がいい理由
1.調整式Iso Speed(もっともしなる位置)
2.26cのチューブレス(レディ)タイヤ装着
3.フロントホイールのスポークがタンジェント組み
4.ステム、ハンドルがカーボン製
5.ホイールのリムはハイトが低めカーボン

以上、「MADONE SLRはエアロロードで重いけど、乗り心地がいいから許す」というお話でした。

Natsumi Amagase

【文書作成の以来、歓迎です】 口は悪いが愛はある? モノ好き(「物好き」ではない)のフツーのサラリーマン。 主にデジタルガジェット、時たま家電ネタが中心です。最近はややもすると自転車ネタに流れる場合も。 お問合せ先:natsumi%mono-ludens.com ※%を@に変えて送付してください

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