もしくは「なぜTREK MADONE SLRなのか?」
前回の記事に書いたとおり、ずっとTREK専売店にお世話になっていたので、「そこはもう人としてTREKから選ぶでしょ?」から次の自転車選びが始まったのですが、実はTREKにこだわらなくても良かったのです。
前回の記事はこちら
購入相談していた時に店長からもらったアドバイスの中に「別にウチに気を遣って無理やりTREKから選ばなくてもいいんですよ」という言葉がありました。
もちろん「お前はめんどくさい客だから、どっちかと言うと迷惑。できたら他の店で買えや」という話ではありません(たぶん)。
そのショップ自体はTREKコンセプトショップというTREKの専売店なのですが、店の経営母体となっている会社はTREK専門店だけを展開しているわけではなく、会社という単位で見ると有名どころであればたいていのメーカーの取り寄せが可能のようなのです。
つまり、系列店から取り寄せていつものTREKのお店で納車が可能。
その後はもちろん顧客としてメンテその他はTREKと同様、手厚くちゃんと面倒見ますよ、という意味の提案でした。
つまるところ、私にTREKという「縛り」はなくなっていたのです。
その中で「惚れた! MADONEが欲しい」と思った時にふと頭をよぎったのが先の店長の言葉。
どういうことかというと「エアロバイクだったらマドンに限らずみんなカッコいいのかも? ここはひとつ念のために? 他社のバイクもみてみるか(=もっとビビっと来るバイクがあるかもよ?)」という流れでして、さっそく各社のフラグシップエアロロード物色の旅に出ることになりました。
とはいえ、実店舗に出かける前に、まずはwebでチェックするわけですけどね。
あー、いい時代になったなあ。^^;
そりゃあ「エアロロードのMADONEかっこいい。というか、万難を排してでも買いたい」とかいきなりトチ狂ったことを言ってるわけですから、もはや私が貧脚だろうが上り坂は歩行者(正しくはジョガー)に抜かされようが、フラグシップを買うことについてはもはや迷いなどありません。
むしろ購入候補がMADONEなのですから、それと比較されるのは……つまり同じ土俵に立つべきは、当然ながら各社ロードレーサーのフラグシップであるべきでしょう。
すなわちグランツールを走っているバイクからチョイス。
ということは現在ではそれは必然的にエアロロードというモデルになるでしょう? という単純な考え方です。
だってエアロロードじゃなければ、DOMANEかEMONDAで私は大納得できるわけですから。
というか、フラグシップモデル以外を選ぶなら、だんぜんTREKのバイクでしょ、と思っていますので。
そんなわけで今回検討するのはエアロロードと決めました。
では有力チームがグランツールで使っているモデルの中から選ぶのか? というとさにあらず。
それってただのミーハーじゃないですか。
まあ「かっこいいからエアロロードに乗ってみたい」と思っている時点でミーハーなんですけどね……。
要するに「グランツールを走るUCIワールドチームが使っているメーカー(バイク)から選ぶ」のではなく、「主力(と私が思っている)メーカーのエアロロードから選ぶ」のです。
そんなわけで(どんなわけ?)まずは「エアロロード」というバイクを私の独断と偏見に於いて定義づけることにします。
まあ、いろいろあるのですが、ここは当然独断と偏見です。
とはいえ私としては極めてシンプルな条件しか持っていません。
たった2つです。
1.シートポスト(マスト含む)が翼断面系のいわゆるカムテール)である
2.ケーブル類がすべて内蔵処理されていて外から見えない
この2つが必須項目だと考えます。
つまり、そのバイクの出自がエアロ的に設計されているかどうかなど、私にとってはどうでもいいと考えています。
「見た目」
これに尽きます。
「エアロロードだ、すっげー」と私自身で納得できる事が大事なのです。
なのでシートポストがカムテール(後方をスパっと断ち切った翼形状のこと)で、かつケーブル類が全く見えないような処理をされているけど、空力最低! なバイクがあっても、それはワタシ的には「アリ」なのです。
ただし、上記2点を満たしたバイクが「空力最低」なわけはないとおもいますけどね。
エアロロードの要件は2つだけですが、今回はそれに加えてチョイスの条件をもう一つだけつけることにします。
それは
3.「ディスクブレーキ」仕様である
勝手に作ったお題は「コンテンポラリなエアロロード」なので。
「未来を向いた現在進行形のエアロロード」から見たリムブレーキなど、もはや「オワコン」と言い切っていいでしょう。
もちろん異論は認めまくります。^^;
以上、3つ条件を挙げたわけですが、それぞれの項目で楽しい飲み会を開けそうじゃないですか(私は飲めないので遠慮させてもらいますが)。
今回はあくまでも「私」が「MADONE SLRを買う覚悟があるのなら、他社のライバルもチェックしてみようじゃないの。いいバイクに出会えるかも?」という前提でのフィルタリングなのです。
つまり全権は私の手にあるのです。
これにはどんな異論も太刀打ち出来ないはず。
よってこれら3項目は普遍的な「エアロロードの定義」ではありません。念のため。
そういうわけなので「なに言ってんだ、このタコ!」的に目くじらを立てないでいただければ幸いです。
「ホント、バカなやつ。ふふふ」的に暖かい目でその愚行をながめくださいませ。
ということで、たとえメーカーが「これはわが社が誇るエアロロードですよ」的なことをうたい文句にしているモデルであっても、ケーブルが見えている以上は私としてはそれをエアロロードと認めず、もちろん選択肢に入れません。
まあ、物色しているうちに「うへぇ!かっちょえ~」みたいなバイクが見つかったとして、そのバイクにケーブルが見えていたら、それは「例外」とします。
これとかはエアロロードではないのです。
ええ、そういう感じで厳格な中にもゆるゆるな空気で見ていきたいと思います。
最初にご登場いただくのは……ここはやはり敬意を表して生産数世界一のGIANT。
ありました、私が認めるエアロロードモデルが。
GIANT PROPEL ADVANCED SL(以下、プロペル)
プロペルはGIANTのwebサイトには明確に「エアロ・レース」とカテゴライズされてますね。GIANTと私の意見は合致しているようです。
うん。なかなかカッコいいですね。
一言でいうと「これぞエアロロード」と膝をうちそうな感じの「ドはまり感」あるディテールが素晴らしいです。
そうそう、同じ台湾の会社でGIANTのライバルメーカー、あのS-WORKSを展開する「スペシャライズド」の親会社であるMERIDA(長い説明だな^^;)はというと……エアロロードは存在しませんでした。
MERIDAがエアロロードだと主張する「リアクト」は残念ながら私の定義にあてはまりませんでした。
二番目も敬意を表してBIANCHI。
敬意のわけは「現存する世界最古の自転車メーカー」だからです。
あー、でも、ビアンキというメーカーはすでにないのかな?
確か今はフランスの持ち株会社の一部門という扱いになっていると記憶していますが……。暇な人は調べて私に教えて下さい。
それはさておき「現存する最古のブランド」は、きちんと「コンテンポラリなエアロロード」をラインナップしていました。
さすがに長く「続く」ブランドだけあって、時代の変化に対しては鼻が利きフットワークも軽いのでしょう。でなければ生き残れませんよね。
BIANCHI OLTRE XR4(以下、オルトレ)
うん。
すげーカッコいい。
チェレステというビアンキカラーも私は大好きです。
ビアンキってオルトレに限らず、「クロモリ・ホリゾンタル Wレバーリア5速」な時代から、連綿とつづくかっこよさがありますね。
もはや歴史的かっこよさと言ってもいいでしょう。
なんと申しますか「自分がカッコいいことを熟知しているイケメン」的な匂いがしつつも、そこが特にハナにつかないというきわどい部分をうまくついてくるような、そんな感じがします。
「オルトレ」という名前もなんとなく自分に自信があるイケメン風じゃないですか(個人の感想です)。
プロペルを見た後だと、GIANTには本当にもうしわけありませんが「おしゃれ度」の差が違ったね、というしかありません。
台湾、イタリアという流れで来たので、次もイタリア車を見ていくことにしましょう。
イタ車、一度は乗ってみたいと思いつつ縁がないんですよね。アルファロメオ・ブレラとかキュンキュンしたんですけどね。
なお、痛車も嫌いではありません。
さて、ビアンキの次はピナレロです。
ピナレロにも敬意です。
なにしろここのところ何年もツール・ド・フランスを制覇しているバイクですからね。
〇PINARELLO DOGMA F12(以下、ドグマ)
そのツールを何度も制した前出のドグマF10はエアロロードではありませんでしたが、今年デビューしたF12は文句なくエアロロードです。
もっともグランツールで走る元チームSKY、現チームINEOSがレースで使うのは「リムブレーキ」モデル。
なのでチームレプリカではなく、コンシューマー向けに展開されたディスクモデルのみがが私の候補となります。
ピナレロといえば、こんなデザインですよね。パッと見てわかります。
色でわかるビアンキ、足(脚?)でわかるピナレロといったところでしょうか。
グニグニっと曲がったフロントフォークとシートステーがお茶目なアイコンです。
以前はもっとグニグニと曲がっていたような記憶がありますが、最近は何というか「物足りない」感が漂います。
ピナレロなんだから、もっとグニャグニャしていてほしい、とか勝手なことを思ってしまうほど。
で、ぐにゃぐにゃばかりに目が行きがちですが、イタ車らしくフレーム自体もイタ車らしく実にカッコいいデザインです。
そんなドグマですが、F12になってちょっと停滞?
「角のコンビニにパックの弁当を買いに行くだけなのに、服選びに30分もかけるようなおしゃれさん」的なちょっと外れたツーマッチ感がトップチューブの「へ」の時の曲がり具合に見受けられます(個人の感想です)。
※イタ車最大手と言われるウィリエールや、ブランド力の高いコルナゴ、性能よりハートマークの方が有名かもしれないデローザにはエアロロードはありませんでした。残念。
次はフランスに行きましょう。
仏車ですね。
ホトケぐるまではありません。念のため。
まずはラピエール。今乗っているORBEAを買うときに一度候補に挙がったブランドです。
フレームの色がかっこよかったんですよね。
って思ったんですが、エアロロードはありませんね。
LOOKにもTIMEにもありません。
シトロエンに代表されるフランス車のイメージって、個人的にはアヴァンギャルドというか最先端を行っているというか、ぶっ飛んでいるというイメージがありますが、こと自転車については現時点ではコンサバというか、ちと遅れてますね(個人の感想です)。
ドイツメーカーは数あれど、エアロロードを展開するのはフォーカスのみ。
あ、CANNYONは通販のみの時点で没というか選択肢から外れます。悪しからず。
メンテは丸投げする気まんまんな私にとって通販会社はありえませんから。
FOCUS IZALCO MAX Disc(以下、イザルコ)
なんというか、カチっとした「エアロロードでござい」なデザインですね。
機能美という言葉は当てはまるかもしれませんが、なんというか、カッコいいのはカッコいいものの、そこにはサイボーグが乗ったらカッコいい、みたいな名状しがたい乖離感を覚えます。
自分が乗っているところをイメージできないと申しますか、そんな感じ?
さて、スイスです。
BMC TIMEMACHINE ROAD 01(以下、タイムマシン)
専用のボトルケージ(ケージかなあ)が素晴らしい……のかな?
BMCのシンプルな赤と黒の潔いスタンダールカラーも以前から好みなんですよね。
だいたい、名前からしていいじゃないですか、タイムマシンっていう。思わず「お願い」しちゃいそうです(←分かる人がいるのか不明ナリ)
なんというか、時間軸にアクセスして未来に飛んだかのような速さ、みたいなぶっ飛んだ速さなんですよ、というメーカーの主張がわかりやすい(過去に戻って遅くなるんじゃねーの、という考え方もできますが)。
BMCは他社と全く違う手法でバイクを設計というか作り上げていくそうなので、エンドユーザーとして非常に好奇心をくすぐられるメーカーなのですが……。
「カッコいい!」って素直に思うのですが「欲しい!」という気持ちが全くわいてこない、そんな感じです。
スイスのもう一つの雄、SCOTTには残念ながらエアロロードはありませんでした。
スペインのORBEAにはエアロロードはなかったので、この辺でヨーロッパは切り上げて西に進路を取り、新大陸に上陸しましょう。
新大陸はまず北のUSAから。
(カナダより北にアラスカがあるので、USAの方が北)
USAといえば今回の本命であるTREKから。
TREK MADONE SLR Disc(以下、マドン)
※MADONE SLDiscは実質的に旧モデルなのでここでは割愛します
んー。
改めて眺めてみると、なんというか、やっぱり他社のエアロロードとは明らかに一線を画したデザイン文法をとってますね。シロウト目にはこのあと出てくるcerveloのS5とは対極にあると感じます。
MADONEの方が見ていて落ち着くというか、そわそわしないというか、腑に落ちるというか、私の美意識との相性がいいデザインというか。
うん。これはMADONEについて語るよりほかのバイクを語るほうがわかりやすい気がしますので次に行きましょう。
USA御三家の二つ目は「スペシャ」ことスペシャライズドです。
SPECIALIZED S-WORKS VENGE DISC(以下、ヴェンジ)
上のMADONE SLRと同じようなカラーリングがあったのでこちらに。
ちなみにS-WORKSじゃないただのSUPECIALIZED VENGEというモデルもwebではありますが、たぶん旧モデル? どちらにしろそっちはエアロロードではありませんでしたので、候補はS-WORKSモデルのみということになります。
こうやって似た色のMADONEと比較すると両者の違いがよくわかります。
VENGEもカッコいいですよね。
私はサガンのファンですし。
しかし、私がS-WORKS VENGEを買うことはありません。
主に値段の問題で。(^-^;
さて、USA御三家の最後はカンノンダレことCANNONDALE。
ここには今年話題のエアロバイクがあります。
CANNONDALE SYSTEMSIX Hi-MOD(以下、システム6)
フツーにカッコいいですね。
中身は知りませんが、見た目は実に手堅くエアロロードしている感じがします。
続いてカナダ。
カナダといえばcervelo。
なぜか小文字で始まるcervelo。
トライアスロンと言えばcervelo。
UCI規定とか関係ないぜ、なcervelo。
「でも、お高いんでしょう?」なcervelo。
ワタシ的にはざっくりそんなイメージのcervelo。
「ここは絶対あるでしょ」と確信してましたが、ありました。
しかも2モデル。
「2モデルも? あー、素材変えて普及タイプ作ったのかー」と最初は思ったのですが、フレームデザインがあからさまに違いますので上から目線で恐縮ですが、れっきとした別モデルと認定させていただきます。
これはもう、2つ並べるとそれぞれのポジションがよくわかりますね。
「禁断破り?」なS5 Disc。
「エアロロードってのはこういうのを言うんだぜ」なS3 Disc。
もちろん最先端なのはS5で、S3は普及モデルだというポジショニングはその通りではありますね。
両者にある決定的な違い、わかります?
それは「シートチューブにとどまらず、ついにダウンチューブまでタイヤに侵食されてしまった」点です。
S5はある意味でMADONE SLRと対極にあると言ってもいいデザインですね。フラッシュサーフェス化にかける情熱というか執念が他社とは次元が違うように思います。
エアロロードの話ではありませんが、TT用とは別にトライアスロン用のバイクを独立して展開している点で、空力やエアロと言った性能に関しては一家言があるメーカーなのは視覚的に理解出来てしまう、そんなcerveloです。
他社は「トライアスロン? TTバイクでいいじゃん」というスタンスですからね。
いや、実際「TTバイクでいいじゃん」で正解、むしろ「ロードレーサーでいいんじゃね?エアロロードならモアベターよ」なのかもしれません。
まあ、私はTTもトライアスロンもやったことがないのでわかりませんけど、別に1秒でも削らないと死んじゃう、なんて感じじゃない普通のホビーレーサーなら、操りにくいTTバイクとかより普通のロードレーサーの方が安全じゃないかと思いますけどね。
「安全とかじゃないんだよ、気分なんだよ」と言われると全くもってそのとおりですね、としか言いようがないんですけどね。
私が「お前の用途でエアロロードかよ?」って言われてるのと一緒ですからね。
「好きなの買え」でございます。
で、その「好き」を具現化しているのがトライアスロン用のバイク。
UCIのせいで進化を留められたと思った自転車だけど、どっこいここで生き残って密かに(?)進化を続けていました、みたいな?
LOTUSの子孫とでも申しましょうか。
個人的にトライアスロン用バイクが我々エンドユーザーが楽しめる汎用性を身に着けてくれれば嬉しいなと思います。
あと、その時は是非財布に優しいお値段で提供願いします。
カナダと言えばもう一つ、ARGON 18があるのですが……残念ながらエアロロードはありませんでした。
cerveloまでチェックしたところで、私はある法則に気づきました。
具体的にはS5とS3の違いを見つけた時に「ああ、そうだったんだ」と納得したといいますか……。
……。
えーっと……。
結論からいいますと、「別の他のメーカーで特に欲しいバイクはないなー」という感じ。
要するにMADONE以外のバイクを見ても気分は上がりませんでした。
もちろん、Webに載っている範囲でカラーリングにバリエーションがあるやつはみんなチェックしてみたんですけどね。
いや、どれもそれなりにかっこいいとは思うんですよ。
カラーリングだけ取り上げるとむしろTREKより地味なメーカーを探すほうが難しいくらいですし。
でもちっともハートにビビッとは来ないんです。
それはなぜなのか?
MADONEと他社のバイクを見比べているうちに、そのあたりをなんとなく言語化できるようになってきました。
そしてcerveloを見て「ああ、そうか」と納得したというストーリーです。
それは「カラーリングだけじゃなくて、MADONEのフレームデザイン自体もカッコいいと思っているから」なのです。
変な話ですが、「カッコいいバイクだな」と思ったのはそのグラフィックというかカラーリングだと思っていたのですが、実はそれは違っていて、どうやらカッコいいバイクだと思ったのは、カラーリングが好みだった為に、その流れで無意識にフレームデザインに注目したところ、逆にMADONEのフレームデザインの良さに気づいた」という具合だったのです。
もちろん最初からMADONEはそれなりにカッコいいとは思っていましたが、なんというかきちんとみていたわけではなくて、それはもう他社のフラグシップを見るときと同じ見方、つまりサラッと上辺だけ見ていたのです。
人間に例えるなら、パーティ会場などで着飾った人を見るのに服とかアクセサリーだけ、あとはせいぜい髪型くらいしか見ていなかった、みたいな感じです。
では他社のフラグシップとMADONEとはデザイン的な面で具体的にはどこが違うのか?
既に述べたように主要メーカー、あるいは有名メーカーの現在のトップモデルはMADONEと同様のいわゆる「エアロロード」と呼ばれるモデルになっています。
具体的にはジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスなどのグランツールでチームが主に使用するモデルということになります。
それらの多くは文字通り「エアロ」的な造形をデザイン手法として取り入れています。
言い換えると空気抵抗を削ることを第一義としているTT(タイムトライアル)バイク的なデザイン手法を取り入れているということです。
MADONE以外は。
言い方は悪いかもしれませんが、多くのエアロロードは、TTバイクという特殊なディメンションのバイクと、従来のレース用バイクのキメラ的なデザインのバイクが多いのです。
それらは見た瞬間に「TTっぽい=エアロロードか」という、わかりやすさがあります。「他の(今までの)バイクとは一味違う=特別」みたいな意識を持つデザインとでもいいましょうか。あるいは「いかにもレース用っぽい」というか。
ところが、MADONEのフレームはそのあたりが抑えられているというか「かなり普通寄り」なのです。
横から見たダウンチューブの面積の大きさからエアロロードっぽいということはすぐにわかるものの、実はあからさまなエアロっぽさはそれだけです(他社のいくつかのエアロに比べると、です)。
言い換えると「あんまりTTバイクっぽくない」んです。
もう一度MADONEとcervelo S5を並べてみましょう。
注目する部分は2つ。
トップチューブからシートステーへ続く「線」がぶっちぎれてずいぶん下から出ているS5、連続しているMADONE。
タイヤとチューブの「ツライチ」狙い、フレームに切り込みを入れているS5、ンなことはしていないフツーのMADONE。
MADONEのフレームデザインがカッコいいと思うのはここだと思います。
ええ。私の美意識はTTバイクの造形を機能的だとは評価するものの、美しいとは認めていないのです。
なので他社のエアロバイクはTTバイクに似ている=美しくないという無意識のレッテルが貼られてしまうということになっているようなのです。
誤解しないでいただきたいのですが、TTバイクはあれはあれで「かっこいい」とは思います。なんというか目的の為の研ぎ澄まされた造形という点ですごみのある「カッコよさ」です。
でもそれは、私が勝手に作り上げている「自転車」という乗り物が持つ「美」とはまったく別のベクトル上にあるものなのです。
強いて言えば、乗用車とフォーミュラカーの違いみたいなものでしょうか?
フォーミュラカーのデザイン手法を取り入れた乗用車をカッコいいとは思いつつも、自分の足にしようとは思わない、みたいな感じです。
あんまり理解してもらえないかもしれませんが……。
そうですね、もう少しわかりやすく説明しましょう。
バイクを横から見て比較します。
私がエアロバイクの造形手法として主に違和感を覚えるのは、シートチューブとシートステイです。
タイヤに沿ってシートチューブをえぐっている造形。
シートチューブとタイヤの間に乱気流を作らないように、つまり隙間を埋めるべく丸くえぐられているのがTTバイクの特徴ですが、そのコンセプトを借りています。もっともTTバイクほど攻めているわけではないですが。
これがなんというか、機能第一はいいのですが、モノとしては「虫食い感」があって自分のバイクとしては認めたくない造形手法なのです。
次にシートステイですが、もはやシートステイとは呼べないくらい、シートのはるか下から伸びてますよね。
チェーンステー(上)と呼びたいくらいです。
これもたぶんエアロ効果を狙ってます。
だってチェーンステーの太さが同一の場合、角度を寝かせた方が前影投影面積が小さくなりますからね。面積が小さいほど風の影響も小さくなるというのは物理の法則でしょう。
加えて、角度を小さくすると、いわゆる「後ろ三角(シートチューブ・チェーンステー・シートステーで作る三角形のこと)」が小さくなる=後輪側の剛性を上げられる、という意味合いもあるのでしょう。
あと、細かいことですがシートステーが短くなりますので、軽くなるかもしれませんね。
翻ってMADONE。
なんというか、普通ですよね?
優しい弧を描きながらトップチューブがシートチューブに向かい、シートステーに連続して降りていくという、昔ながらのロードレーサーフレームが持つ造形に似せつつモダンな処理をしています。
私は自転車が鉄パイプで作られていた時代の、いわゆる「クロモリ・ホリゾンタルフレーム」も嫌いではありません。
が、スローピングも嫌いではありません。
単純な直線的なスローピングではなく、MADONEのような弧を描くスローピングにはむしろホリゾンタルフレームにはない有機性や造形美を感じます。
今まで乗っていたORBEA AVANT OMPはMADONEと同じくスローピング手法のフレームでしたが、直線的なスローピングでした。
なのでたいして美しい処理だとは思わなかったのですが、チェーンステーまで連続するMADONEのそれは文句なく「美しい」と思います。
両者のそんな造形の違いは、それぞれについて私に勝手なイメージを抱かせます。
すなわち、TTバイク系エアロロード=剛、MADONE=柔という感じです。
見方を変えるとMADONEは古臭いデザイン手法の延長で、TTバイクの手法を取り入れたエアロロードの方が新しく進んだデザインだと言うこともできるかもしれません。
このあたりはデザインに対する感想なので、まったくもって「好み」の問題ですし、硬いだの柔らかいだのは載ったこともない私の勝手なイメージです。どちらもバイクの本質ではないかもしれません。
だがしかし。
今回は理詰めで選ぶわけではないのです。パッションで買うのです。エモーションが後押しするのです。つまり私が気に入らないものは気に入らないのです。
だって別にレースをして1分1秒を切り詰めたいわけではありませんから。
気に入った自転車でぷかぷかと気分良く走りたいだけですから。
そういうわけで、MADONE以外の選択肢はないな、と自分自身でなっとくしてしまったのでした。
続く