なぜ例えるのかと言うと、135版フルフレーム(以下、FF)クラスのミラーレス・システムカメラ(以下、ミルクス=MILCS(Mirrorless Interchangeable Lens Camera System))のマーケットは戦国時代に突入するから。
ということで、勝手な好みと思い込みで、各陣営をとりあえず戦国武将に例えると……まあこんな感じじゃないかと妄想。
SONY=織田信長
Nikon=北条氏政
Canon=武田信玄
Panasonic/Leica/SIGMA=毛利元就
追補(参戦の期待を込めて)
OLYMPUS=今川義元
いずれもメジャーどころばかりですが、豊臣秀吉も徳川家康もいません。
どうも、その両名のイメージにどこも合わない気がしただけですけどね。
どちらにしろ本格的な戦いは2019年にはいってからになるでしょうが、5年後に誰が天下を取っているのか、はたまた群雄割拠時代が続くのか、今後の戦況に注目です。
個人的には安定した群雄割拠時代が続くのがベターだと思っておりますが、さて。
織田信長っぽいと思った理由は、もちろんその革新性と先鋭ぶり。
いち早く鉄砲(FFのミルクス)の優位性に気づき、次々と工夫を重ねて実戦に大量投入。
それが功を奏し、またたく間に誰ももう無視などできないほどの存在となりました。その時代を先読みする力と、古き因習(レフカメラ)を変革しようとする姿勢はまさに「天下布武」を旗印とした織田信長にかさなると言っていいでしょう。
「Eマウントも開発は続けるよ」なんて言ってるのはウソ、というか本音でないことは確か。
「一揆を防ぐための方便としてそういうふうに言っておきましょう」と、穏健派の家臣の提言を受け入れたのでしょう。
この陣営の強みは、所有する過料つまり鉄砲(ボディ)と弾薬(レンズやアクセサリ類)を腐るほど所持しているばかりか、どちらも自力供給ができるだけの補給路(プロサポート)もそれなりに構築済みであることでしょう。
そんな織田陣営の弱点をしいてあげるとすれば、早期の大量導入を急いだあまりにその自慢の鉄砲の基本設計(ここではマウントのこと)がやや強引であることでしょうか。
戦闘スタイルや戦術はモダンなのに、その戦術に肝心の鉄砲が時代遅れになった時がこらえどころになるかの牛があります。
具体的には、ボディは小型軽量なのに、肝心のレンズの方は高性能なものは巨大化せざるを得ず、一般ユーザーにはそれがどう映るのか。
同じ大きさであれば、より設計の自由度が高い他のマウントのほうが光学性能を高められるし、同じ光学性能であれば、より小型に設計できる「可能性」があるのはEマウントではなく他陣営のマウントでしょう。
いつまでもFマウント。
いつまでも一眼「レフ」。
そしてこれからも「プロ機としては一眼レフ」などというのは
「小田原城があるし、伊達政宗も味方につくだろうし、徳川家康も寝返ってくれるだろうし、ウチには勝てんよ」
的なミルクスをなめている近未来を想像できず、現状すら俯瞰できていない、ようするに知見のなさっぷりがまさに北条氏政っぽい。
などと書くとNikon信者の皆さんや北条氏政ファンの皆さんに袋叩きにされそうですが、そこは大人になって広い心で「バカ言ってやがる」と流していただければ幸いです。
とはいえ自力が高いのは誰の目にも確かですから、時代の趨勢を俯瞰し、かつ徳川や伊達、引いては長宗我部などに対する外交手腕を有した腹黒い智将さえいれば、日本はどうなったかわかりません。
この智将が「まだしばらくは一眼レフだよ」などという幕僚を内政的に始末できるかどうかが、お家の興亡の鍵になる気がします。
その内憂さえ消え去れば、新しいZマウントの将来性の高さと家柄の良さ(カメラメーカーとしてのブランド力)で、領土拡大は間違いないところ。
恐ろしいのはそういう内憂を抱えながらも、極めて手堅いZ7・Z6という戦力を整えてきたのは評価に値します。
惜しむらくはメモリカードスロットが1つだけ、しかもこともあろうかXQDカードのみという「先走り」がどう戦いに影響するのかでしょう。
とりあえずシェア争いに勝つことが社是、みたいななりふり構わぬ猛烈な商品開発力を持っていながら、目先の戦いにリソースを割きすぎて(割かざるを得ない立場であったからですが)、上洛が遅れた、的な立場を考えると、「天下を取るために」川中島の戦いに明け暮れた武田信玄の悲哀をCanonに感じます。
ここで言う川中島の戦いの相手とは上杉謙信という名前の特定の的ではなく、コンパクトカメラであったり、一眼レフであったりと、「全方位的にトップじゃないと嫌」的な数多くの戦い(商品展開)を意味しています。
気がついたら川中島で戦っている相手じゃなくて、いつのまにか織田信長が天下をとっていて「しまったあああ」的な立場にあるCanonが投入したのはEOS R。
RFマウントはNikonのZマウントに並んで将来性は充分感じるスペックなのですが、結構重要だと思われる最初の戦いの場に先陣を切る武将がちょっとどうなの? と感じる中途半端な強さ、という状況ではないでしょうか。
増援部隊(交換レンズ群)では北条家(Nikon)を上回っているようですが、武将同士で比べると、見劣りがするよね、という感じ。
このご時世にボディ内手ぶれ補正すらないカメラを最前線に持ってくるというのは個人的には「正気の沙汰とは思えない」んですが……。
人材の育成(戦える機能を持ったボディ)が間に合わなかった、というところでしょうか。
もっとも兵糧に余裕がありそうなCanonだけに、軸足を本格的にミルクスに移せば、Nikonを上回るシェアを取りにいけるのではないかと思いますが、さて。
Lマウント・アライアンス陣営というべきかもしれませんが、まあ便宜上ここではPanasonic陣営ということで。
ミルクスの創始者であるPanasonic。
先見の明と、計画を具現化するだけの技術力。組織としての粘り強さと企業体の結束。更にはその外構の手腕などなどを考えると、Panasonicはまさに毛利元就と言わずになんと言いましょうや?
ミルクスのパイオニアであるだけでなく、手ぶれ補正機能の搭載、空間認識AF、背面ディスプレイを使ったタッチフォーカスやシャッター、ファインダーを覗きながらのAF測距点の移動ができるタッチパッドAF、タッチ動体追尾AF、4K動画から写真を切り出す4Kフォト、超解像、etc.etc.。
背面液晶のタッチパネル・コントロールなんてPanasonicでは大昔から当たり前でしたが、FFミルクスではシェアNo.1のSONYですら、タッチパネルを搭載できたのはごくごく最近の話。
(確認していませんが、NikonのZ7とZ6でもタッチパッドAFは多分ダメだと思う)
斯様にミルクスという「新しいカメラシステム」の最先端を走り続けるPanasonicですから、天下分け目になるやもしれない最初の戦いには猛将・智将が出向くことになっています。
用いる兵器も他陣営を寄せ付けません。
一例としては、
・メモリカードの2スロット化、しかも将来を見越して1つは最新のXQDを搭載しつつ、今を見据えてもう一つはSDカードスロットである点
・Z7/Z6はチルト液晶。EOS Rはバリアングル液晶。しかし、S1R/S1はそれらをあざ笑うかのように「3軸チルト方式」を投入し、自撮りマニアすらカバー
・圧倒的な布陣(レンズのこと。既にLEICAのレンズが6本ほどある。値段はさておき。さらに2年以内に10本まで自社レンズを出すというロードマップも)
・後詰めの存在(金持ちにはLEICAが、庶民にはSIGMAがいる、と考えれば、わくわくする人は多いはず)
・最初の戦いにおいて最大画素数を誇る(S1R)
などなど。
動画機としてのライバルはSONYでしょうが、既にμ4/3で定評があるだけに、SONYは戦々恐々としているはず。
「じゃあ、Panasonic最強じゃん」
と考えるところですが、戦いは水物。
だって愚かな政治家を選挙で選ぶのは多くの愚かな国民でしょ?
つまりスペックがいいから売れる、という単純な話ではないということです。
とはいえ、今までPanasonicが鳴かず飛ばずだったのは、μ4/3というフォーマットだったから、という言い訳も成り立ちます。
言い換えると「言い訳」が聞かないFFミルクスの戦いにおいて、その真価が問われることになるのです。
カメラメーカーとしてはSONY以上に「家電屋」呼ばわりされているPanasonicですが、LEICAとSIGMAという、生粋のカメラ(とレンズ)メーカーとタッグを組んで、一体どこまでのし上がれるのか?
興味はつきません。
いや、むしろ一番の懸念材料は発売時期かもしれません。
他の三陣営は2018年10月末には戦いの準備が終了します。
Panasonicはそれに遅れること約半年弱。
それはあまりにも長い空白期間になるかもしれません。
準備が整った時には、既によの趨勢は決し、けっきょくPanasonicはニッチを狙うしか生きる道がない、という状況に陥っていないとは言い切れないのです。
まあ、今からそんな心配をしても仕方ないですね。
でも、あんまり待たせるなよ、とは思います。
S1R、S1の価格がどうなるのかわかりませんが、私に手が届く範囲であれば、ぜひ使ってみたいです。
というか、4社出揃ったFFミルクスの中で、私がぜひ買いたいと思うのはS1RとS1です。
私の使用用とでは高画素機の必要性がまったくないので、他に機能的ディスアドバンテージがないなら私はS1狙いです。
最初はもちろん、24-105mm F4のキット。
それから、マクロが欲しくなったら、SIGMAのSAマウントのマクロレンズと、SA-Lマウントアダプタなど買って楽しもうかな、と。
今後の事を考えるなら、OLYMPUSが(も?)μ4/3だけでなく、FFミルクス分野に進出するべきではないかと素人的には考えるのですが……。
参入するとしたら、現状は迷わずLマウントでしょう。
同じマウントでパイを奪い合うのではなく、それこそシナジー効果でユーザーは個性を求めていくつかのボディを買っちゃう気がします。
言い換えると個性のあるボディさえ作れれば、OLYMPUSのレンズは魅力的なものになるのは間違いないところですから、Lマウント・アライアンスの総合力は更にアップするように思えます。
今回、おそらくPanasonicから話はあったに違いありません。
でもOLYMPUSは会社的な都合でFFフォーマット参入の決断はできなかったのでしょう。そして多分、早期に「今はムリ」と断ったのではないかと思われますが……。
でも、レンズの硝材の進化、電子部品の小型化等による小型化は進んでくるでしょうし、そうなるとFFフォーマットの市場が今より拡大するのは間違いないところ。むしろμ4/3の市場より拡大していくのは間違いないところでしょう。
その戦場に出向くのか、あくまでも違う地平で戦うのか……。
それはわかりませんが、FFミルクスの平原に出向いてくれることを願っております。
そうなった場合にどうしても考えてしまうのは、OM-1(M-1)の再来。
μ4/3でE-M1というモデルを出していますが、OM-1と同じFFフォーマットで、あのサイズ感のカメラを出して欲しいな、と夢見ないわけには行きません。
乾坤一擲ではなく、自信に裏打ちをされた「一点突破」を、OLYMPUSには期待します。
「実は天下取りに一番近いメーカーだったのかもしれないのに、SONYの相手とかしちゃって、気づいたらやられてた」みたいな、要するにまともな軍師がいなかった不運な名君、今川義元のパターンにはまらないことを願っております。