やったことは、実に単純です。
充電池式空気入れ、ベルクート スペシャリスト VL-1000の口金(ポンプヘッド)を交換しただけですから。
ベルクート スペシャリスト VL-1000については、別記事をご参照ください。
じゃあ、なぜ口金を交換するのか?
ベルクート スペシャリスト VL-1000に付属するチューブの口金はねじ込み式で、この手の携行タイプの空気入れとしてはまあ、極めて普通です。
普通なのですがが、その普通というのがとってもめんどくさいんです。
だってねじ込み式だから。
話が一向に見えませんね。
説明しましょう。
というか、想像力を働かせて私の拙い説明をお読みください。
周りになにもなく、ただそこにあるバルブにねじ込むだけならまだマシです。
ご想像どおり的(バルブ)に口金を合わせてねじ込むだけですから。
ですが、実際にはそうはいきません。
ご想像どおり、自転車のホイールっていうのはバルブ周りにスポークがあったりして、口金をバルブに真っ直ぐにねじ込めません。
だって口金にはチューブがついてますし、チューブの先には空気入れ本体がありますから。
そう、本来なら自転車に空気など入れられないはずなのです。
でもご安心あれ。
チューブはゴム製なので、ぐいっと曲げれば横合いから空気を入れられます。
つまり横合いにチューブを逃しながら、バルブに口金をねじ込んで固定するわけです。
この作業が実に鬱陶しいんです。
この方式しか知らなければ「空気入れ作業とはそういうものだ」と、あきらめもつくのでしょうが、普段このバルブと口金の脱着作業をワンタッチでサクッとやっている身からするとこれはもはや「拷問」といっていいレベルの無駄作業。人生の損失を実感して苛立ちが募る瞬間と申しましょうか。
ということで、「こんなことやってられるか」状態になった私は、充電池式携帯空気入れ、ベルクート スペシャリスト VL-1000を入手した翌日には、口金をKUWAHARAのヒラメ・ポンプヘッドにすげ替えるという魔改造(もうええって)を決心したのでした。
※ちなみにKUWAHARAは自転車メーカーで、BMXバイクを製造しています。そしてあまり知られていませんが、おそらく世界で最も有名な自転車を作っていました。有名ということでは世界最古のメーカー、ビアンキもツール常勝メーカー、ピナレロも敵ではありません。嘘じゃありませんぞ。みなさんは変な宇宙人をかごに乗せて満月をバックに空を飛んでいる自転車を見たことがあるんじゃないですか? 見たことない人なんているんかいな、と思えるほど有名なあの自転車、そう、あのBMXこそ、KUWAHARA製なんです……という事実を知って意味もなく驚愕した私。なのでみなさんもこの事実と素直に向き合い、意味もなく驚愕するがいい!^_^ そう、つまりヒラメ化とは、すなわち空気入れの先っちょにE.T.を載せるようなものなのです。
世界一有名な自転車を作ったKUWAHARAがプロデュースするパーツ類は多岐にわたりますが、その中でもかなり地味な部類に属する製品が、このワンタッチ脱着型口金、通称「ヒラメ」です。
ヒラメヒラメと一口にいいますが、実は二種類あります。違いは脱着レバーの可動方向にあります。
タイトルの通り、バルブに対して垂直、つまり縦方向にレバーを動かすタイプ(縦カム)と、同じく水平方向に動かすタイプ(横カム)です。
なぜ二種類用意されているかというと、もちろんユーザーの好みもあるでしょうが、実際は作業スペースの違いによるものでしょう。
縦型は普通のロードレーサーのような、径が大きなホイールで作業がしやすいようにデザインされています。つまり、バルブに対して垂直方向にスペースが有るホイール向けです。
対して横型はバルブの垂直方向にレバーを伸ばせるスペースがない、例えば小径車のホイールなどに適したデザインになっています。
大きめのホイールを履いた自転車であっても、例えば最近増えてきたディスクロードや泥除けやチェーンカバーなどがあって作業空間の確保が難しいシティーサイクルなどは、必要最小限のパーツ構成の言ってみれば骨組的で各パーツへのアクセスがイージーなロードレーサーとは違い、縦型ではなく横型向きと言えるでしょう。
「だったら横型だけ存在していればいいのでは?」
そう思うでしょ?
実は私も最初はそう思いました。
でも実際はKUWAHARA的には両方を製造して売っている。
つまり縦型には横型にはない縦型独自の良さがあるはず。
そう考えるのが合理的ではないでしょうか?
ちなみに縦型のほうが横型より値段は安いのです。
理由は構造がシンプルだから(部品点数や工程が少ない)。
かくいう私は「同じ効果が得られるならよりシンプルな方がクールだと思う」派でございます。
つまり縦型を応援したいんです。
横型とは別に存在する意義があると認めることができれば、ですが。
ということで、縦型のレゾンデートルを確認すべく、横型と縦型の両方を買って試してみたのですよ。
ここまで書くと懸命な読者の皆さんはもうおわかりでしょう。
そうです、今回、ベルクート スペシャリスト VL-1000の口金の代わりを務めるのは、その時の対決で敗れたほう、すなわち使用されずに余っていた方を活用しようという術式?なのです。
まあ、廃物利用とでもいいましょうか(廃物ではないですが)。
世間では圧倒的に横型ユーザーが多いそうです。
まあ、記述の通りツブシがきくのは横型ですからね。
でも実のところ、私が両方を買って実際に使い勝手を試した限りでは、どう贔屓目に見ても圧倒的に縦型の方が使いやすいと感じました。
そう、勝利したのは縦型なのです。
理由はいくつかありますが重要なのは二点。
1.両方とも装着は片手でできるが、取り外しが片手でできるのは縦型のみ
2.横型は、レバーリリースの際にぼーっとしているとスポークに当てる(事がある)。
もちろん、手がでっかいとか親指の可動域が常人より広いとか、なんかちょっと器用な人などは横型でも片手でレバーのリリースができるのでしょうが、一般的には両手を使うことになるはずです。
また、レバーリリースを慎重にやればスポークに当たることなどない、と豪語される方もいらっしゃるでしょう。でも適当に、つまり片手でレバーを跳ね上げてもスポークには絶対当たらない縦型のほうがストレスがないに決まってませんかね?
ということで、物理的に縦型がダメなバイクを持っているという「縦型が使えない事情」がない限り、つまりロードレーサー用なら縦型のほうがよりイージーだと結論付けたいと思います。
なのに実際には横型のほうが売れているのは、ヒラメを買う人の多くがBROMPTONなどの小径車も所有しているから……ではなく、これは多分に想像ですが、単純に横型の方がメカニカルでかっこいい、という外観重視での選択でしょう。
そう、見た目重視。イケメンなら誰でもオッケーというミーハー女子みたいなマインドで選んでいるに違いありません(個人の感想です)。
いや、誤解なきように付記いたしますと、そういうの、全然嫌いじゃありません。むしろ私もそっち側の人間(面食い)であることを自覚しております故。
とはいえ質実剛健派、使い勝手重視派、あるいはシンプルであればあるほど進んでいる派の方なら縦型を選ぶべき、というやつです。
だって使い比べたら普通は縦型を選ぶはずですもん。
ええ、これはあくまでも穏健派……じゃなくて縦型派の一個人の意見。なのでもちろん封印派……じゃなくて横型派の反論は認めますぞ。(^_^;)
これはたとえ話ですが、もし私が予備のヒラメを持っていなかった場合。つまりベルクート スペシャリスト VL-1000用に新たにヒラメを用意する場合、ですね。
もしそうならどっちをチョイスしたか?
まずはヒラメ化することについてはなんの迷いもなかったと思います。
むしろヒラメに交換することは「当たり前」の行動です。
で、その時に選ぶヒラメは値段も安くてシンプルで使いやすい縦型か? というとさにあらずです。
実はこちらも迷うことなく横型をチョイスしたでしょう。
簡単です。
なぜなら、小径車であるBROMPTONにも使いたいからです。
ホイールサイズがたったの16インチしかないBROMPTONですからね、そりゃもうハブ方向にスペースなんて極少です。縦型なんては物理的に使えないのです。実際に試してみたのですから間違いありません。
更にBROMPTONの場合、泥除けとかタイヤの周りにいろいろと付属物があって後輪なんかはそもそも作業スペースがない。
普通のねじ込み式ヘッドですら、そのねじ込み作業に苦労するくらいですからね。
まあ、BROMPTONでベルクート スペシャリスト VL-1000を使う話にはもう少しいろいろとあるので、その話は別記事にしたいと思います。
改造にあたって注意すべきはここです。
不可逆なんです。
そう、jpegみたいなものです。
単純に、もともとついている口金を引き抜いて代わりにヒラメを挿せばいいというものではないのです。
もちろん、そういう作りの空気入れもあります。ですが、最近の空気入れは口金部分が空気圧などで不用意に外れないように一体式というかがっしりと「かしめ」てあって基本的に口金部分だけを外すことはできない構造になっています。
すなわち口金を交換する場合は、もともとついている口金部分をカシメているゴム部分まで含めて切断する必要があるんです。
というわけでいったん切断しちゃうと「やっぱりもとに戻したい」と思ってもそれはムリ、ということになります。タイムマシンとか超能力を使わない限り当たり前ですね。
超能力のない私のような人間は、妙な特訓などはせず、素直にチューブごと購入する必要があります。
ここで問題になるのが、ベルクート スペシャリスト VL-1000。
これ、チューブだけ別売りとかしてくれるのかしらん。
というわけなので「決心」が必要なのですよ。
ちなみに今現在使っているフロアタイプの空気入れの口金部分も同じく脱着不可能な作りでしたので、カットして取り付けました。
厳密にはポンプヘッド部分を分解し、必要なパーツだけ外せば別途用意したゴムホースをジョイントしてそのさきにヒラメを取り付ける、という具合に、チューブをカットせずに取り付けられた(可逆式術式)のですが、10bar超えとかもある、つまり非常に高圧になるロードレーサー用の空気入れにジョイント部を複数作りたくない、というのが本音です。
安全面に懸念が生じますし、何より不格好ですから。
もちろんヒラメに交換してからは空気入れ作業が天国的にイージーになったので後悔などは全くしておりません。
後悔しないのがわかっているのなら、別に「決心」の必要はないじゃないか、とこれまた思われるかもしれませんが、フロアタイプの空気入れと今回購入した充電池式携帯空気入れ、ベルクート スペシャリスト VL-1000では事情がちょっと違います。
それは「自転車に取り付けるタイプなのか、取り付けないタイプなのかどうか」の違いで、これが決心に関係してくるんです。
ヒラメは機能優先の工業製品です。もともと携行性、つまり軽量化とかコンパクトネスとか、そういった部分には全く配慮されていないんです。
つまり携行タイプの空気入れの口金を金属製のヒラメに替えると重量がかさむことになります。
また、コンパクトネスとは無縁ですから、当然ながらじゃまにならずにスッキリと装着、というわけにはいきません。
サイズも変わります。今回の場合はまさにポンプヘッド部分だけ長さが伸びた感じです。
さらにヒラメはレバーも本体も金属製ですから、走行時の振動などでフレームにこすったり当たったりして傷をつける可能性も容易に想像できます。
つまり「覚悟」がいるのです。
とはいえ、実際に空気を入れる時の簡便さと重さなどのネガとを天秤にかけると……私は迷わず簡便さを取りますね。
それほど「ヒラメ」は楽ちんなんです。
いやホンマ。
実際にホノルル・センチュリー・ライドを走る際はシリコンバンドなどで口金部分をガードしようと考え中ですが、さて。