大物。
それはレンズ。
このX100Fの一連のレビューのタイトルとしている「X100FのFはFinalのF」ですが、レンズはまさに「その心」的な部分になってますのできわめて重要な項目と言えるでしょう。 X100系のレンズについて、私が言いたいことは大きく分けると2つです。
一つはレンズの描写力について。
もう一つは「レンズ」とは言い切れませんが、手振れ補正がない事について。
最初はこちらから。
「X100Fに手振れ補正など必要無し」
そう本気で思っている人が多いかも知れませんが、個人的には理解に苦しみます。
だってあった方がいいに決まっているじゃありませんか。
「コンピュータ操作にマウスなど必要ない。コンソール出してコマンドラインで処理すればOK」って言っているようなものじゃないですかね。
手振れするよりしない方がいいに決まってます。
「オレは手振れなどしない」という人外の方は論外として、
「なんでも機械だよりはイカン。スキルを挙げれば手振れしにくくなるのじゃ」という「パソコンを使う人間はすべてプログラミングができる必要がある」的なファシズム思考の方の意見がまかり通っている為にX100はFになっても手振れ補正機能が付かないままなのではないでしょうか。
あと「手振れ補正のないカメラ使っている俺、かっけー」的な勘違い系ナルシスト君?
FUJIFILMもこれ幸いとばかり「X100Fの伝統に則って」などという呪文を搭載しない理由にしているのでしょう。
でも、それでいいのでしょうか。
X100はいつまでもこのままでいいのでしょうか?
そろそろ限界を迎えているのではないでしょうか。いやマジで。
平成も終わろうというこの時代に「手振れ補正は画質が~」とか「手振れ補正に頼っていると写真が上達しないぞ~」なんて正気で言っている人が居るとは思えません。
見かけたらそれは「正気ではない」人なので。(・∀・)
シラフで正気ではない人もいますし、あとは酔っ払いとかラリっている人なんかもそう言うことを言いそうです。
「反手振れ補正機能主義者」や手振れ補正に親兄弟を殺された人なども少数いるかもしれませんが、それら全て含めて「正気ではない」人にカテゴライズさせていただきます。
ということで、ここからは正気の人に向けての話ということになりますね、ハイ。
X100FのFがFinalのFである、と私が提言している理由の一つがこの手振れ補正機能未搭載である事です。
つまりX100Fは手振れ補正機能が搭載されていない「前時代カメラの最終モデル」であるというFUJIFILMの決意に違いないと考えているからです。
ええ、私は性善説を採っているわけです。FUJIFILMの中の人達は次は頑張ってくれるだろうと。本当は実装したいに違いないんだと。X100シリーズを「さらなる高みに」導きたいのだと。
X100Fに搭載されていない理由、それは要するに技術的な問題なのでしょう。
すでにX-E3の方がX100系より小型化している現在、現状維持であればともかくこれ以上ボディが肥大化するのは私を含めたユーザーだけでなくFUJIFILM自身も望んでいないでしょう。
なので「搭載できるけどでっかくなるよ」という理由でコレまで(FUJIFILMの中の人は)逃げてきたわけですが、それこそそろそろ技術力で何とか克服して欲しいタームに入っていると思うのです。
レンズ一体型なのだから、レンズエレメント駆動式でもセンサ駆動式でもユーザーとしてはどうでもいいですから(できれば要らぬ光学系を付加するエレメント式よりセンサ方式の方が望ましいですが。そもそもこのカメラ、動画メインじゃないし)。
手振れ補正機能は「必要のない機能」などではなくて、表現の幅、撮影の自由度を飛躍的に向上する機能なんですから。
フィルムシミューレションのアクロスより(私は)1024倍も重要だと思います。
X100Fを文字通り最後のX100ボディとすべく、次期モデルの開発を頑張って下さい、FUJIFILM様。
X100からこっち、まったく同じレンズなのでアタリマエですがX100Fでもびっくりするほど変わりばえしませんね。
近接域、開放付近における「収差」の大きさ。
これをして「味がある」「温かい(やわらかい)描写が素晴らしい」とか……
私に言わせれば「一生言っとけ!」でございますよ。
基本的にもはや設計が古いと思います。時代遅れのレンズと言ってもいいでしょう。
そういうのが好きな人はオールドレンズを買って、アダプタでX-E3にでも取り付けて勝手に悦に入ってれば良いんです。
「文句がある人はX-E3とXF23mmF2 R WRを別に買って、X100Fと両方で楽しんでね」とかメーカーが考えているとしたら「寝言は寝て言え」としか言いようがないレベルに来て居るのではないかと思います。
放置しすぎです、レンズ。
「絞ればカリっとするので一粒で二度おいしい名レンズ」とか、もはや鼻が出ます。
だって今時「絞ってカリっとしないレンズ」ってあるんでしょうかね?
収差が大きい事を美点のように礼賛するのは日本人の美徳ではなく、これはもう悪い癖の方じゃないかと思います。
こういう、贔屓の引き倒し的なヨイショはいい加減止めて欲しいものです。
収差のせいでキッチリ解像していないだけなのに「芯が細くて繊細な描写」とか表現する人はアタマがお花畑なのではないでしょうか。
考えてもみて下さいな。収差が少ないレンズを収差が大きいようにする事はエフェクトやフィルターなどの後処理でいくらでも可能ですが、その逆は物理的に不可能なんですから。
焦点距離35mmのレンズを50mm(の画角)にする事はできても28mm(の画角)にする事が物理的にできないのと同じ理屈です。
どちらがより表現の幅が広いかは冷静に考えればわかる事ではないでしょうかね。
初代のX100からずっとキャリーオーバーしているこのレンズ、センサの画素数も上がってきてますし、マジでそろそろ限界を迎えているんじゃないかと思います。
X100FのFがファイナルのFな理由はこのレンズもこれで終わり。次からは新設計のレンズを搭載、という意味でござます。
撮影した日も違えば、露出補正が片方に入っていたりで比較対象としてはアレですが、遠景であっても開放では明らかにX100Fの方が収差が大きいことだけはわかりますよね。
あ。
誤解の無いように書いておきますが、X100(F)にフィクスされている23mmF2.0というこのレンズ、私は大好きです。
ボディフィクス型のレンズというメリットを充分活かしてると思いますし、その恩恵を享受していますから、そりゃあ好きにもなろうってものですよ。
別のエントリでまったく同じ23mm、F2というスペックを持つXマウント用交換レンズのレビューをしていますが、「XF23mmF2 R WRとX-E3があれば、もはやX100など過去のカメラだぜ」なんてこれっぽっちも思っていないのです。
XF23mmF2 R WRについては発表された時から大いに興味があったレンズですが、スペックを見て「X100に置き換わるものではないな」とわかっていました。
ボディと一体にになっているX100系のフルオーダー・スペシャルレンズと、しょせんは汎用交換レンズのXF23mmF2とではその出自が違うのですから。
いや、出自は同じFUJIFILMでしたね。
チューニングのレベルが違う、と言った方がいいのかもしれません。
その辺の違いを事細かに説明するだけの知識も見識も持ち合わせていない私ですが、そんな私でも見れば(X100のレンズのスペシャル度)がわかる部分があります。
なので今回のメインイベント? として、その違いを見ていただくことにしたいと思います。
(ボディを含めると)異様にコンパクト
まあ、見たとおりです。
そりゃそうだろ、ズルい、と言ってしまえばそれで終わりですが、違う事実は事実として認めましょう。
レンズ交換式のXマウントボディの場合、いろいろな理由(笑)でセンサ面はこの位置にあります。
というよりもセンサ面をこの位置にして、補機類はその後ろ側に持ってきている感じですね。
比べてX100Fのセンサ面はここ。
沈胴式ではないX100系は、レンズを含めてできるだけコンパクトにしたいと考えたわけです。
するとレンズがボディから飛び出す部分をできるだけ短かくするためにはご覧のようにセンサ面をギリギリまで後ろ側に持ってくる設計になっています。本当はもっと後方に持って行けるのでしょうが、そこは背面ディスプレイの存在があるのでこの辺が限界ですかね。
で、レンズ交換式では不可能な「ボディ側に思いっきりレンズを押し込んだレンズ」として設計したわけです。
言い換えると「センサ面ギリギリまでレンズを置ける」仕組みです。
なのでX100Fのレンズを「パンケーキレンズ(薄いレンズ)」と呼ぶのは正しくはないですね。
ボディから出ているのはレンズの一部。
言ってみれば氷山の一角的な?
こちらはレンズを見てもわかりませんが、撮影すれば一目瞭然というヤツ。
何しろアホな私でもわかるような違いですから。
というか、撮影しなくてもスペックをチェックすれば「ある程度」は予想ができます。
それは「最短撮影距離がX100Fは短い」という事。
具体的に書きますと、XF23mmF2 R WRのカタログデータは「最短撮影距離 22cm。最大撮影倍率 0.13倍」
X100Fのカタログデータは「最短撮影距離 10cm。最大撮影倍率 0.25倍」
ここで注目すべきは最短撮影距離じゃありません。
「10cmと22cmじゃ2倍以上違うじゃん、X100Fすげー」と喜んではいけません。
まあ「X100Fスゲー」なのは確かなのですが、表記方法が違うのでそのまま比較できません。
XF23mmの方は「センサ面からの距離」で、X100Fの数値は「レンズ中央部先端からの距離」です。
日本ではコンパクトカメラとレンズ交換式カメラとでは最短撮影距離の測り方が違うので騙されないようにしましょう。
それでも実際にX100Fの方がかなり寄れるのですが、それよりも最大撮影倍率を比べるべきでしょう。
こちらは表記方法が違うなどということはなく、純粋に比較可能です。
で、ほぼ2倍。
といっても実際どのくらいどうなの? という話ですよね。
以下はそれぞれの最短撮影距離(正しくはAFで合焦した最短距離)で撮影したものです。
ピントはTOYOTAの文字面。
X100Fのレンズの万能さに感服する作例と言っていいでしょう。
因みにこのエンブレムは実車から引っぺがして盗んできた……わけではありません、念の為。昔はこういうのって本物の七宝焼きだったんですよね。
いかがでしょうか。
収差は別にして、X100Fってけっこうスゲーって思いませんか?
しかもX100Tまではこういう近接撮影をする場合は「マクロボタン」を押してモードを切り替える必要がありましたが、X100Fからは10cmから無限遠までシームレスにAFが働くようになりました(マクロボタンがなくなった、という言い方も出来ます)。これもX100Fで実現した地味な、でも重要な改善点ですね。
さらに。
X-E3にはできない芸当をX100はFから搭載しました。
それはデジタルテレコン。
要するにさらなる倍率が欲しいならデジタルテレコンを使えばご覧のように近づける、というもの。
撮影後にクロップすればいいじゃない、という意見は甘んじて受けますが、その手間を省くのがテクノロジー、技術、便利機能なのであって、困る機能ではありません。
「掃除機なんか使わず手で掃除すればいいじゃない」なんていうのは文明停止しろと言っているようなモノですが、それと同じです。
またX100Fのデジタルテレコンは単なるクロップではなくて画素補完するので撮影画像は35mm状態で撮影した画像と同じサイズに仕上がってますのでいろいろと使いやすいのではないでしょうか。
このデジタルテレコン機能、X-E3には搭載されませんでしたが、たぶん商売上の理由からでしょうね。
レンズ固定式のX100Fでは文字通り武器となりますが、X-E3のようなレンズ交換式カメラでそれを搭載すると「交換レンズが売れなくなるのでは?」と考えたのではないでしょうか。
もしそうならケチ臭い話ですね。
デジタルテレコン機能を大昔から搭載しているオリンパスをはじめとしたメーカーを見習って欲しいところです。
余談になりますが、RICOHのGR2というカメラがスナップカメラとして優秀な理由の一つが、このデジタルテレコンを搭載している事だと私は思っております。
X100Fのデジタルテレコン機能をこよなく愛している私ですが、使う度にこう思います。
「ああ、デジタルワイコンがあったらいいのに!」(・∀・)