最安、2500円の怪しい中華製イヤホンが一聴して完全にアウトオブバウンドな歪な高音偏重Soundで、つまりはダメだったので、今回のトップカテゴリーである3万円コースの「純正」イヤホンに行ったはいいが、こちらは音は良かったもののレギュレーション違反であえなく失格扱いに。
なんだよ、残ったのは1万円コースの1個だけかよ!
ここはなんというか、是非頑張ってもらいたいところです。
何しろ最も競争が激しいクラスですから、メーカーも価格以上に気合いをいれたイイモノを投入しているはず……という目論見なのですが……。
じゃあ、さっそく行ってみましょう、1万円コースに!
とまあ、普通はそういう流れになるわけですが、そうならないのが私のいいところ?
突然ですが、ここで敗者復活戦を行います。
復活するのはご存じ最安のMMCXリケーブル対応カナル型イヤホン、通称「2500円イヤホン」の「KINDEN イヤホン カナル型 HIFI 高音質/高遮音 マイク内蔵 ベリリウム銅 星空」さんです。
実はこんな私ですが、結構な数のイヤホンを使ってきたわけですよ。
でも、ここまで「エージングで音が変わった」イヤホンははじめてです。
「変わった」なんてレベルじゃありません。はっきり言って「別物」です。
そう。
言うなればこんな感じ。
ある夜の事です。
私はどうしようもない音しか出ないダメダメなイヤホンを前に悲しくて悲しくて涙に暮れておりました。
そして泣きつかれた私はダメダメなイヤホンをGRANBEATに繋いだまま眠りに落ちたのです。
朝日が顔を照らし、まぶしさで目を覚ました私は、どこかで微かな音楽が鳴っているのを耳にしました。
寝ぼけマナコであたりを見渡すと、昨晩放り出していたGRANBEATが音の出所だということがわかりました。
ダメダメなイヤホンが刺さったまま、一晩中GRANBEATは歌っていたのです。
夕べの悲しさが蘇った私は思わず涙ぐみましたが、あふれそうな涙をぐっとこらえて、最後にもう一度だけダメな音を聞いておこうと思ってGRANBEATを手にしました。
「え?」
カナル型のイヤホンを両耳にツッコんだ瞬間、まだ半分寝ていた私は完全に覚醒しました。
「いったいこれはどうしたことだ!」
そうです。ダメダメだったはずのイヤホンから流れてくるのは、なんとも艶やかでエロい女性ヴォーカル。そしてバックのバスドラムがズドン、と脳髄に響いてくるではありませんか。
それだけではありません。アコースティックギターの弦の上で、指を滑る音が生々しく迫ってくるではありませんか。
いつしか私は涙していました。
それは悲しみの涙ではなく、感謝の涙でした。
涙に暮れて眠りに就いた私をみて、哀れに思った我が家の妖精さんたちが、夜の間に中味だけ上等なイヤホンのものとすっかり入れ替えておいてくれたのです。
ありがとう、妖精さん。
愛しているよ、妖精さん。
私は世界一の幸せ者だよ。
fin.
みたいな?
「何言ってんだコイツ?」
と思われるかもしれませんが、本当なんですよ。
そう、妖精さんはいるんです。
だってホラ、この2500円のイヤホンの音聴いて下さいよ。
だって私、W4Rの代わりに今日からこれで聴けって言われても喜んで使いますよ?
むしろ低音とかはE800MBより量感ありますから。
さすがに高音の解像度は劣りますけど、分析的に聴かないとわからないレベル。
音場も広くて、上下なんかW4Rより広いくらい。
少なくともW800BTよりは断然いい音なんですから。
いやあ、参りました。
心から参りました。
「これが2500円か!」
W800BTって1万円クラスの音は鳴っているんじゃね? とか言ってた私ですから、それ以上の音がなるこの2500円のイヤホンは、たぶん20000円クラスくらいなんじゃないかと。
fhanaの「青空のラプソディ」では歌詞を知っていれば何を言っているのか(歌っているのか)ちゃんとわかります。
※いや、どんないいイヤホン使ってもこの歌は歌詞を知らないと何を言っているのかわからないと思います。
KOTOKOの「Leaf Ticket」なんて、冒頭のピアノが強く、ビシっと前から鳴っているのに感動しました。これはW4RはおろかE900MBよりいい鳴りっぷりです。KOTOKOのブレスもちゃんと拾えますし、ギターの弦の音がまたゾクっとするほど生々しい。
もともとさほど高音質な録音じゃないCDなのでハイファイ系の聴き比べなんかには適さない音源なのですが、それだけに好みの音に鳴らしてくれるイヤホンは個人的に素晴らしいとしか思えません。
「うーむ」
私は悩みました。
音は充分。というかハッキリ「いい音」だと言い切ってしまうことについてはやぶさかではありません。
ケーブルもE900MBのものと違ってしなやかで取り回しは楽。むしろシルキーで気持ちがいいし、タッチノイズはこちらも皆無です。
いわゆるSHURE掛けが基本のようで、ハウジングつまり根元の部分は堅めになっていて耳掛けしやすいように加工されています。
軸は太目ですが素直な○型で、手持ちのコンプライ500で賄えました。
あ、因みに音の評価はコンプライの500を装着した上での感想です。
というか、標準のイヤーチップはクソと言っておきましょう。遮音性ゼロ、とまではいいませんが全然密閉感がなく低音が全部逃げちゃうようなシロモノです。この辺は2500円なりの装備品ってところでしょうか。
チップは好みのモノにして評価する事をおすすめします。
で、W4Rとの比較です。
これが難しい。
10点、つまり同点にしてもいいと思う私もいるし、いや、低音は明らかに勝っていて曲に迫力がでるので11点を上げよう、と思う私もいます。でも解像度という点においてはやっぱりW4Rには敵わないので9点か? とか……。
つまり好みで選んでおっけーなんじゃない? という感じ。
ややスローな感じになるW4Rに対し、コンベンショナルなダイナミックドライバーを使った2500円イヤホンはちょっとした疾走感を伴う感じに演奏してくれます。
どちらも好みですし、似合う曲が違うかもしれません。
ということで、2500円のイヤホンはこれからも一線で使う事にしました。
理由は別途説明するかもしれませんが、たぶんW4Rより出番が増えそうです。
ということで、まさかの敗者復活戦は見事に2500円が両手を天に突き出した格好になりました。
そして私の耳は、3000円の耳から「2500円の耳」へと値下がりする事が確定しました。
そう、私の耳は2500円で満足できちゃう耳だったのです。
すごい時代になったものだと思います。2500円でこの音が手に入るなんて、今イヤホン選びをしている人は幸せな時代にいる事を感謝すべきでしょう。
ただし。
と、敢えて但し書きを書かせていただきます。
このイヤホン、個体差が大きいのかも知れません。
少なくともたった一晩程度のエージングでここまで劇的に音が変わるイヤホンはどこかおかしいと思います。
それからもともとスペック表に「±15%」とかありえない大きな誤差を臆面もなくズケズケと書いちゃうような品質管理ですからね。
ランニングチェンジというか、ロットによって使っているパーツが全然違う事も考えられます。
それだったら誤差が大きいのもドライバの種類の記載がないのも納得できますし。
そういうわけで2500円のイヤホン、期待せずに「ダメモト」くらいで試して見るのはいかがでしょう。
ということで、次はちょっとハードルが上がった、というか上がりすぎた状態で登場する1万円コースのイヤホンについてです。何しろ相手はノーマルレゾリューションなのに1万円のヤツはハイレゾを謳ってますしね。負けると立場がありませんやね。
が、どうやら時間が来たようです。
これについてはまた後ほどということで。