第一印象、それは最大の欠点でもあります。
もっともそれはP7800の欠点というよりも双子機ともいえるP7700の欠点と言った方がいいのかもしれませんが。
それは
「起動が遅い。それもかなり」
どれくらい遅いのかと言うと、遅いのをごまかす仕様(気を紛らわせる仕組みと言い換えてもいい)としてスタートアップ画面をカスタマイズできるようにしているほど遅いんです。
これはもう相当気の長い人や「COOLPIXのロゴってめっちゃカッコいいよなあ」なんて悦に入る事ができるNikon大好き人間や「カメラってのはいつも電源入れたまま持ち歩くもんだろ?」という猛者にとっては特に問題にならないかもしれませんが、私の様な普通の感覚のユーザーとしては「やってられない」レベルの起動時間です。少なくとも撮ろうとしたネコはもうその辺にいない可能性が高いですし、チラっと除いた朝日はもうかなり顔をだしているし、ギリギリだった夕陽はとっくに沈んでしまっている事でしょう。
そうそう、ガールフレンドの笑顔は引きつっているんじゃないでしょうかね。
P7700からP7800になった事で個人的にもっとも期待していたこの「起動時間」を含む全体のレスポンスについてはまったく変化が見られないと言っても過言ではないと思われます。EVFなどの一部の筐体をかえただけで、まさに中味はP7700そのものと言っていいのではないでしょうか。
というか、これはタイトルの通り、「もう一つのP7700」なんじゃないかと。
P7700の仕様を決める際に最終的に残った「案その1」がEVF付きで「案その2」がEVFなしではなかったのか。
で、「上」はEVFなしのP7700を出せと命じたのではないだろうか。
そう思うんです。
P7700から1年経ち、商売上後継機を出さないといけないタイミングのNikonにはもはやP7700の後継機などを開発する為のリソースがないというお家事情がありました。そんなにバカスカ出せる体力があるわけない。でもライバルが出すなら対抗機を出さないわけにはいかない。
悩むNikon。
でも、実はNikonには秘策がありました。
「そうだ、あれがあるじゃないか」
「アレ?」
「あれだよ、あれ、P7700だよ。ホラ、EVF付きの案があっただろ? 今回はあれを新型として出しとけ」ということになったのですよ、きっと。
だとすれば近接センサすらない時代遅れとも言えるEVFの仕様にも納得がいきます(要するに設計が古いから)し、基幹部分にまったく手が入れられていない「EVF以外はまったくもってP7700」である事の説明にもなります。
だからP7800はダメ、と言っているのではありません。
F2.8-F4.0と比較的明るく、カリカリと解像感の高い高倍率のズームレンズは個人的にコンパクトカメラ史に残る銘玉だと素直に思ってますし、内蔵NDフィルターやブラケット撮影が可能など、ハイエンドコンパクトカメラらしく、撮影に関する機能は豊富です。なによりCanonの同クラスのカメラと比較してもボディの質感が高く、Nikonのロゴに恥じない佇まいがありますから、その点だけでもNikonのファンにとって充分に所有欲を満たしてくれるカメラには違いありません。
でもざっくりと「買いか?」と問われると答えは微妙なところでして、要するに私が既に述べたP7800のネガ(起動が遅い、EVFは自動で切り替わらないしクオリティは低い、あと広角端以外は全前よれないし、暗いところではAFがダメダメ)がたいしたネガでないと感じるならP7800というカメラは決して悪いチョイスではないと思います。
とはいえ個人的には、P7800のネガはクリティカルなもので、故に手元に残しておこうという気持はこれっぽっちも起きません。
一眼レフやミルクス(MILCS=Mirrorless Interchangeable Lens Camera System)に高倍率ズームレンズをつけて持ち歩きたくないので、その辺はコンパクトカメラに任せたい私として、P7800のような明るい高倍率ズームレンズがついたコンパクトカメラはスペックとしては理想の一台なのですが、実際に使ってみるとまずは開始数秒で起動時間の遅さに眉間の皺が深くなり、5分も経たないうちAFの遅さやそもそも合焦しないというAFの能力不足に対して(P7800を)破壊(したい)衝動を押さえる事に必死になってしまいます。
Nikonに限らず一眼レフを使っている人には特にそのレスポンスがカメラの評価に直結するように思います。というか、Nikonはせっかくのいいレンズを活かせないまま、P7000系を鬼籍にいれるつもりなのでしょうかね。
なのでP7700を持っている人は、いくら使いにくかろうが、EVFがどうしても欲しいという人を除き、P7800を買う必要はないと断言してしまいましょう。お手持ちのP7700を可愛がってあげましょう。
まあ、もっともP7800が最後のNikonハイエンドコンパクトカメラになる可能性は高いので記念に購入するのはアリかもしれません。レンズはいいんです、レンズは。(・∀・)
ということで、その個人的にリスペクトしているP7000シリーズのこのズームレンズのチェックをいつもの場所で。
まずは歪曲チェック。
今回は趣向を変えて設定でオン・オフができる歪曲補正の違いを28mm相当の広角端と200mm相当の望遠端で。
次に解像感。
これは遠景の等倍切り出しです。
28mm相当の開放(F2.0)とF5.0
開放で充分、というか開放で既にピークが出ている気もします。
お次は200mm相当の開放(F4.0)とF5.0
望遠はさすがに少し絞らないと甘い秒やですね。ちなみにF5.0がピークだと思われます。
最後は色。
撮って出しのNikonの青空はいつも思うんですが、シアンが強くて個人的に好きじゃないんですよね。
ただし、ビネッティングが効いていてほぼ均一な光量で見ていてすっきりします。
一方こちらはPhotoshopのCamera RAWでRAWファイルを現像したもの。こちらはPhotoshopデフォルトでパラメータは一切弄らない状態です。
青空は断然こちらの方が好みですが、ご覧の通り周辺減光は顕著です。
因みにここは川端通り。知っている人は知っている稲森記念会館を背にして鴨川側を臨む、という感じ。
という事でCOOLPIX P7800。
これ一台でじっくり付き合うつもりなら買ってもいいかも。
でも私はやっぱりダメだわ。
そもそもバリアングル液晶がもうダメ。せめてチルト液晶だったらしばらく使ってみようかなという気になるかも知れなかったんですが。