「安いカメラがあったら買うのか?」と問われたら、私は即座にこう答えよう。
「イエス」と。
しかしこう付け加えるのは忘れない。
「そのカメラに興味があれば、だが」と。
破格値(個人の感想です)を提示された、もちろん新品のSH-1。
実は新型のSH-2が発表されたと聞いてちょっと興味を持っていたわけです。
何に使うのか?
と言うわけで感想文を書く前に語ろう。
「私がなぜ(今頃)SH-1を手に入れたのか」
その壮大なドラマを!(・∀・)
もちろん「通勤鞄カメラ」ですが、実は私、通勤カメラは通常2台持ち歩くことにしております。一台はミルクスで、もう一台がコンパクトタイプ。もちろん絶対にいつも2台体制か? というとそうではなく、たとえばNikon 1 V3を持ち出す場合はそれ一台のみ、ということもあります。
それは私のNikon 1 システムが全部ズームで、鞄に入れるということは70-300mmではなくて、その他の広角ズームと標準ズームのどちらかになり、これだと私の平日のお仕事デイタイムには充分過ぎる画角カバー率なのです。その他のシステムの場合、μ4/3とかαのEマウントとか、フジのXマウントなどのミルクスには基本的に単焦点しか付けません。
で、その単焦点の画角が135判フルフレーム換算で24mmから35mm相当ならまだツブシ? も効くのですが、50mm相当くらいになると私のライフワークの「喰ったモノは全部写す」という作業(作業?)には適当でない場合がおおいわけです。特にαのEマウントのSEL5518Zなんかは最低最悪です。
そう言うわけで文字通り「サブ」として相対的に画角が広く撮影倍率が高いコンパクトカメラを通勤鞄に放り込んで置くわけです。
その「サブ」の位置を最近不動にしているのが、OLYMPUSのTough TG-3です。
コイツは去年の発売と同時に購入してたちまち気に入ったカメラです。夫婦お揃いで色違いを買うほどの惚れようと書けばおわかりいただけるかと。
もちろんその魅力は画質ではなくて、ツールとしての多機能さと面白さです。基本的には海外リゾート、具体的にはビーチやプールなどに持ち込んでガシガシ使う為にTough機能を目当てに購入したものですが、Toughシリーズに受け継がれている接写機能の充実にガツンとやられちゃいました。顕微鏡モードとか被写界深度合成とか、本当に「遊べて楽しいカメラ」なんです。
そう言うわけでTG-3は便利で実際には丁寧に扱っているのですが、Toughっとしているので取り扱いにあまり気を遣わないという気分的な楽さはありがたくて、ついつい出番が多くなるのですが、ずっと使っていると「ちょっと画質がいいやつを使いたいな」なんて思う事があるわけですよ。
そんな時に登場するのがRICOHのGR。何しろ腐ってもAPS-CですからTG-3とはもはや同列で語れるレベルではありません。
若くてピチピチ? のマルチプレイヤーTG-3のおかげですっかり出番が少なくなっているいぶし銀の実力派ベテラン選手のようなGRは、やっぱりいいカメラです。地味だけどなんというか、語弊はあるかもしれませんが、アーティストではなくて職人みたいな良さを感じます。
で。
「やっぱりGRはいいなあ。もっと使ってやらなくちゃ」
なんて思って連日GRを鞄に入れるわけですが、数日使っているとなぜGRの出番が少なくなっているのかを思い出すんです。
「そっか、手振れ補正ないんだよね」
GRの最大の欠点と私が思っている手振れ補正の不搭載。GR Digital IVで手振れ補正を乗せてきたリコーですが、GRになったらまた無視。というかまあ、大判センサになってしまったのでそれ用の手振れ補正機能を搭載するとGRが大きくなってしまうから外したというストーリーは容易に理解できます。
私はありとあらゆるカメラに手振れ補正機能はあってしかるべきだという宗教に帰依しておりますので「GRのような広角単焦点カメラに手振れ補正なんて要らねえよ」という人とは会話が噛み合わいません。念のため。
預言しますが、何年か先には手振れ補正機能がないカメラは極めて特殊な存在になっていると思います。
「クルマってのはこうやって人間がクランクロッドを回してエンジンに火を入れてやるもんだ」
なんて言っていた人は現代のクルマを見て何というのやら、という感じになっていると思われます。
「50ccのスクーターにセルモーターなんて要らねえだろ? お前バカか?」なんて言っていた人も今では50ccのスクーターのセルモーターボタンでエンジンかけてますからね。
閑話休題
使った事がある人は実感しているのでは無いかと思いますが、GRは実の所手振れしにくいいいカメラなんです。シャッター押す時にあまりぶれずに押せるのかな? とか色々考えますが、まあよくわかりません。結果が全てです。翻ってGR Digital IVに搭載されていた手振れ補正機能は思わず鼻水が出てしまうほど効きませんでしたっけ。私が知っている限り、もっとも効かない手振れ補正機能を搭載したカメラです。ギネスブックに申請して欲しいもんです、まったく。
いやまあ、そういうわけで贔屓にしているランチのお店のいくつかが建物の地下にあって結構薄暗かったりするので手振れ補正は欲しいんですよ。GRだとブレにくいんですが、ぶれる時はぶれますしね。
で、「やっぱり手振れ補正欲しいよね」という感じでTG-3にもどしたり。
本当に実際問題の手振れ度を考えると、ISOをそれなりに挙げても劣化が少ないGRでもTG-3と勝負は出来ますが、被写界深度を稼いだ絵を撮ろうと思うととたんに馬脚を現す、というか構造的に不利になります。私はボケを表現した写真は結構どうでもいい派で、むしろパンフォーカス大好きなので絞りたい時に手振れ補正のせいで絞れないGRをどうしてもベンチウォーマーにしちゃうんですよね。
で。
季節はまさに桜・三月・散歩道。
いえ、まだソメイヨシノは京都でも咲いてませんが、梅はいい感じですし、そろそろ桜も蕾が膨らんでいるわけです。
ここからがSH-2に興味を持ったいきさつですが、要するに桜撮るのにちょっと長めのレンズが欲しいけど、ミルクス系でそれを付けるとさすがにそこそこデカイし、平日通勤時に真剣に時間かけて撮るわけでもないので、たとえばM5-2に40-150mmとかV3に70-300mmとかGX7に85mmf/1.8とかはなんかツーマッチなんです、通勤鞄には。
そこで脳裏に浮かび上がってきたのが「高倍率ズームレンズ付きコンパクト」カメラです。
とは言え、以前使用していたようないわゆる一眼レフスタイルの「マジ入ってます」的な高倍率ズームは通勤鞄のお供としてこれもツーマッチ。
なので狙いは「コンパクトカメラっぽい面(ツラ)をした高倍率ズーム」です。
それを物色していた時にSH-2が発表されたわけです。
SH-2の発表を受け、「ああ、これでいいかな。勝手知ったるオリンパスだしアートフィルター使えるしね」ということで取りあえずオリンパス・オンライン・ショップ(以下、OOS)でカートに入れて30653円で予約。
SH-2をチョイスした理由は135判換算28mmスタートではなく25mmスタートのレンズを評価したことと、Google+でいつも薫陶をいただいているyoyoさんの書き込みを覚えていたからです。
曰く「このカメラの5軸手振れ補正はすごい」
曰く「気に入ってずっと使っている」
なるほど、おすすめなのだな、ということで、私のメモリにSH-1が保存されていた事が大きいわけです。
実際問題、この手の高倍率ズームに画質はあまり求めていませんので、決め手は画質以外のスペックになります。一番は手振れ補正の有無。次にデザインを含むサイズと重さ、三番目にカバーする画角。そして値段と言った感じでしょうか。
実際のユーザー、しかも同じカメラをいくつかお持ちの人の名前の声として、プライオリティの最上位にある手振れ補正がいいという事になれば、ネットに数多ある「店頭チェックレビューブロガー」「提灯ブロガー」などという昨今ネットの海でドヤ顔をしているゴミのような連中(いい意味で!(・∀・))の書き込みとはわけが違います。
そう言うわけで、SH-1の手振れ補正について、信憑性と信頼性が得られていると判断した私はそのマイナーチェンジ判とも言えるSH-2に白羽の矢を立てたわけです。
そして全く別件で立ち寄った馴染みのカメラ屋でSH-2の評判などを聞こうと思った時に目に付いたのがSH-1だった、と。
それまで真面目にSH-1とSH-2の比較すらしていなかった私ですが、ブラウザでwebサイトのスペックを表示しながら、店長の説明を聞き、「しばらくしないと手に入らないSH-2より、今そこにあるSH-1」の方が断然魅力的に見えたというわけなんです。
というか、SH-2ってよく考えたら桜に間に合わないんじゃね? と気がついたという点も大きな要因ですが。
個人的には1/2.3のセンサのコンパクトカメラのRAWファイルなんていりませんし。TG-3にもありませんし。V3も通常はコンパクトカメラ的に使う際はJpegオンリーですし。
他にも微妙な違いはありますが、どう考えてもSH-2って、メーカーの都合でムリやり出した、新モデルということにして価格の維持をしたいご都合モデルにしか見えません。
言い換えるとSH-1はオリンパスとしても完成度が高いカメラだったという事です。
「今ならホレ、税込みでこの値段でどうです?」
店主が電卓で提示した金額に我が目を疑う私。私の動揺を見抜いた店主は続いて私の耳元でこうささやきました。
「シルバーの在庫はあと一台です」
その後の事はよく覚えていません。
家に帰るとテーブルの上にSH-1があり、開いたiPhoneにはOOSからの「キャンセルを承りました」というメールのヘッドラインが見えたのです。
というわけで前振りはここまで。
ようやくレビューですな。(・∀・)
◆いい点
・TG-3とバッテリが共用出来てうれしい(地味ですが、これは結構重要なポイントです)
・思っていたよりコンパクトで軽い。これで135判換算で600mm、拡張1200mm? の画角までカバーしているって、なんか21世紀というか未来っぽくて今さらながら驚いている
・スーパーマクロモードもいいけど、全域で取りあえず充分寄れるのはうれしい
・望遠側が長いので、工夫次第でボケも得られないわけではない
・この手のカメラだと当たりまえですが、ストロボが内蔵されている
・手振れ補正機能はマジで強力。コンパクトカメラはそれほど使っているわけではないけど、過去最高なのは間違いない
・ズーミングが充分速い
・このサイズのセンサとこのレンズの組み合わせでは殆ど意味はないと思えるアイリス優先オート敢えて廃した潔さとその心意気
・タッチシャッター対応はありがたい
・両吊り対応であることに加え、ちゃんとしたアイレットもついていてびっくりした
・基本的にシンプル&プレーンで嫌味の無いデザイン
◆悪い点(いい意味で? 上から目線(・∀・))
・液晶が可変型でなく固定されている
・600mm換算だとさすがに背面液晶で構図取りは厳しい。簡易なドットサイトを取り付けられるアクセサリシューが欲しかった(けど、こんなカメラにそんなものをつ買う人はいないだろうという斬り捨ての論理はわかる)
・あのにっくき? 動画ボタンをプログラマブルボタンにして欲しかった
・タッチシャッターと顔認識AFが排他なのが気に入らない
・ArtFilterの数の少なさはまあ、このカメラの立ち位置を考えると仕方ないと思うけど、ブラケット機能は欲しい(このクラスには搭載しないというポリシーだろうけど)
・バッテリ充電器が欲しい。USB充電対応はいいが、専用ケーブル使わないとダメな点でアウト。もっともTG-3用に購入したバッテリチャージャーがそのまま使えるので個人的には「今回は許してやるか」的な気分
・バッグの中で間違って電源入ると高倍率ズームだけに伸びるレンズにダメージがある可能性が拭えず、簡単に入りにくくした~という妄想があながちハズレではないというか要するに意図的だと思うけど電源ボタンがちょっと押しにくい。というか手袋してると超イラっとする。TG-3は防水カメラなのでまあ許すとして、普通のカメラはレバー式にしろ!(・д・)
・AWBがプア。屋外では目立たないけど屋内のミックス光や白熱光は全滅。OLYMPUSは歴史的にカスタムWBが取りやすいのでそちらで対処するしかないけど面倒。「雰囲気残す・残さない」というミルクス系の選択肢を付けて精度を上げて欲しいんだぜ?
今のところはこんな感じですが、私の個体に限った点を一つ。
★エラーファイルをバカスカ生成しやがる!!!ヽ(*`Д´)ノ
わずか50ショットのうちに添付されているようなものを合計3つ生成しちゃうんだもんね。
Eye-Fiカードとの相性の可能性もあるのでこの後普通のSDHCカードでチェックしてみますが、生成ファイルがここまでエラーだらけだったのはスイスアルプスでエラーファイル出しまくって使い物にならなかった某変態カメラのSD-1以来ですな。
総じてエラーファイルの件を除くと「面白そう」なカメラです。
手振れ補正は本当に強力で、EVFがないのでちゃんと構えられないコンパクトカメラの600mm相当がビタっと止まって撮れちゃうのはびっくりです。
なのでチープでいいからEVFが内蔵されていたらよりしっかり撮れるのにな、という感じです。
でもまあ、そういうものを内蔵して長大重厚になるよりは、このカメラはこのスタンスでいいのかもしれません。
取りあえずしばらくの間、そうですねえ、桜が散るまでは毎日お供に連れて行って、じっくり付き合ってみようかなと考え中。もっとも「じっくり」付き合える程の厚味のあるカメラではないとは思いますが。
そんなわけで、RAWとかちょっとした付加機能が必要ない人は値段が倍ほど違うSH-2じゃなくてSH-1買う方がいいんじゃね? と無責任に思う今日この頃です。
朝焼けにいい感じの太陽が出てきたので。
最大倍率で当然手持ち撮影。ゴースト出てるし、画質はそれなりですが、一応黒点らしきものも映っているのでコンパクトカメラとしては充分かな、と思います。(・∀・)